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◆第2話◆王立魔法アカデミー

 あぁ。とうとう今日はアカデミーの入学式である。私はカインにズルズルと引きずられながら、馬車に乗せられ拉致られて、馬車に揺られる事3時間程して今ようやく魔法アカデミーの門をくぐった。


「ぅ・・・わぁぁぁ!凄い!大きい!」


 歴代の私の中で、100番目にして初めて魔法アカデミーに入学したのだ。初めて見るアカデミーはとても立派な建物で制服を来た同年代の少年少女が沢山居る。

 現金なもので、その光景を見たらテンションがぐーんと上がった。


「シェリー、友達沢山出来るといいね」

「そうね!カインも将来のお嫁さん見つけるのよ!」

「えっ!?気が早いよシェリー・・・」

「そんなこと無いわよ。私だって素敵な方との出会いを期待してるもの♪」

「・・・そう。まぁ、どんなのが来ても僕が阻止するけどね」

「んー?カイン何か言った?」


 いけないいけない。テンションが上がりすぎていつもよりカインと会話をしちゃったわ。浮かれて話半分も聞いていないのだけど。


「ううん、何にも。あ、男子寮反対側だから。また後でね」

「私の事は気にしないで先に講堂に行っていいからねー!」


 私は去り行くカインの背中に向かって叫んだ。さて、私も女子寮に向かわなくちゃ。

 さっきはあぁ言ったけどカインの嫁探しは私が心配した事じゃなかったわね。私が心配しなくても、カインは眉目秀麗だもの、すぐにお相手が見つかるだろう。


 そしたら私の事など構ってる場合ではなくなるだろう。ふふっ。カイン一筋99人の私が知ったら卒倒するだろうな。


 かくいう私も時折カインを見ると、心がキュウッとなる時があるけどこれは私にしてみたらカインに対する愛情などではなく、呪いの一種でしかない。

 甘くて苦い私を縛る鎖。いつになったら私はこの鎖を断ち切ることが出来るのだろうか。


 女子寮は門から見ると校舎を挟んで左側が女子寮で右側が男子寮である。男子寮と離れてて良かったわ。


「アカデミー女子寮へようこそ。私は寮母のロッテ・フォウ・ヘルゼンです。入寮届けをお預かりしますね。・・・シェリー・メアリー・ミュレーさんですね、はい、照合が取れました。こちら寮の部屋の鍵です。荷物を置いたら講堂に向かってください。詳しい事は入学式が終わりましたら説明しますので、ロビーで待機していてくださいね」

「はい。これから3年間宜しくお願いします!」


 わー!新生活ってなんだかドキドキするわね。ロッテさんも優しそうだし、寮生活楽しみだわ♪寮の廊下を歩きながら思わずスキップをしそうになったが、人目があったので思い留まった。


 渡された鍵についているプレートには“110号室”と書かれていた。先ほど確認した案内板によると一番奥の角部屋であった。玄関から遠いけど、騒音問題は隣1部屋だけなので気は楽ね。

 歩きがてら他の部屋のプレートを確認する限りでは2人で1部屋らしい事が分かった。どうか同居人が変な人ではありません様に・・・。


 着いたわ。ネームプレートには私の名前と“ソフィア・シュカ・グリューンヴェルデ”と書かれていた。へぇ、どんな子かしら?もう来てるのかしら。

 私は思い切ってドアを開けた。


ブゥワァァァァァァァァァ!!!


「きゃっ!!!」


 ドアを開けた瞬間、突風が吹いた。なっ、何事!?今日は穏やかな陽気で風はそこまで強くなかったはずだ。


「ごっ・・・ごめんなさい!!」

「へ?」


 部屋の中を見ると、カーテンは破れて絨毯は捲くれ上がり、ベッドの上の布団はぐちゃぐちゃ、書類は散らかりまくりで部屋の中が大惨事であった。


「こっ・・・これは・・・!?」


 入寮初日・・・今日は入寮初日よね!?何故こんなにも散らかっているの!?部屋の真ん中には泣きべそをかいた気弱そうな女の子が立ち尽くしていた。この子がソフィアさん?


「はっ!空き巣!?空き巣なのね!?」


 こりゃ事件だわ!と寮母さんに報告するべく私が部屋から出て行こうとしたら、後ろからとてもか細い声が聞こえた。


「ちっ・・・ちがいます・・・私のせいです・・・ごめんなさい・・・!!」

「えっ?どういう事?」


 事件じゃなくてこの子のせいって事?えぇぇぇ。この子、もしかして片付けられない子なのかしら・・・。綺麗な部屋だと落ち着かない系?

 とりあえず、事件じゃないならば大事になったらまずいので私は部屋の中に入ってドアを閉めた。


「・・・なるほど。部屋に着いた途端に絨毯のへりに躓いて転びそうになって、よろけた弾みに咄嗟に持っていた書類を手放してカーテンを掴んだと。でカーテンが破れたから再びよろけて今度はベッドにダイブしたって事なのね」

「はい・・・。部屋の惨状を見て途方に暮れてる所でした」

「えっ、じゃぁあの突風はなんなの?」


 先ほど確認したが窓は全て閉まっていた。


「その、私魔力が安定していなくて、ビックリすると魔法が暴発しちゃうんです・・・」

「へぇぇぇ・・・・・・」


 あれ、魔法だったのね。突風って事は風使いかしら。ビックリすると魔法が暴発って・・・ヤバイわ!この子とんだ地雷物件じゃないの。極力驚かせないようにしなくちゃ危険だわ。


「あっ!もうこんな時間。とりあえず部屋の片付けは後回しにして講堂に向かいましょ」

「は・・・はい」

「あぁ、そうだ。私シェリーよ。これから宜しくね!」

「わ、私はソフィアです。こちらこそ、宜しくお願いします」


 ソフィアは、マッシュルームみたいな髪型の小柄な気弱そうな女の子だった。驚きの初対面だったが、ルームメイト同士仲良くやっていけたらいいな。 ・・・少々いやめちゃくちゃ不安ではあるが。


 講堂に着くと椅子が並べられており、クラス毎に椅子が並べられている。なんだろ、他のクラスは20人位なのに最前列のクラスの椅子は10脚しかなかった。


「ねぇ、知ってる?あそこの椅子に座るのは魔力が最も高い10人だけなんだって」

「へぇー、どんな人が座るんだろうね」


 疑問に思っていたら、近くに居た生徒が正にそのクラスについて話していた。ほーほー。そういう事か。

 私が納得していると、先に来ていたであろうカインが颯爽と人ごみの間を縫ってその話題のクラスの席に座った。はっ!?カインがその10人の内の一人って事!?

 ・・・ふ・・・ふふふ。ならばクラスは別々ね!私の魔法属性は地。その中でも私は“花の魔法”という平和な魔法しか使えないのだから。

 花の魔法はどんなに枯れた土からでも花や植物を生やす事が出来るというものだ。・・・こんなショボい魔法しか使えないんじゃ、私の魔力も最下位の方であろう。あ、後手品みたいに手から花を出せるわよ!

 ・・・って、なんか虚しくなったわ。こんなんで良く受かったな、とすら思えてきた。


 ん?カインのやつは何で後ろ向いてキョロキョロしてんの?気になって見ていると、ふと、カインと目が合ってしまった。


「あっ、シェリー!遅かったねー」


 カインは席を立ち、こちらに向かって手を振りながら近付いて来た。

 やめろー!!声をかけるな、近づくな!こちとらお前と知り合いだと思われたくないんじゃーい!! 


 私はその場を離れ、他人のふりをして逃げようとしたが時既に遅し。カインに手を掴まれ、周りに居た人達が一斉にこちらに注目した。


「シェリー、僕達同じクラスだよ♪」

「は、はぁっ!?まさか!そんな訳が無いでしょう!・・・ひっ、ひぃぃーっ!!!」


 すぐ側の壁に張り出されているクラス分けの紙を見ると、何故かカインと同じAクラスに私の名前が書いてあった。さらに、ルームメイトのソフィアの名前も書いてあった。こ、これは何かの間違いではなかろうか?

 サァッと体中の血の気が引いていくのがわかった。


 これからカインとソフィアと共に送る学園生活・・・ただただ不安しかない。

ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました(^^)

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