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決闘開始します。

 フレイヤとの決闘は明日の昼ということになり、今夜は新たに指定された寮の一室で迎えることになったわけだが――


 ペタペタ


 ペタペタペタ


 ペタペタ、フニフニ、ペタペタ


 ――おい、お前さん、さっきから鏡の前で自分の体をまさぐってどうした?


『うるさい。まさぐるとか気持ち悪いこと言うな』


 ――いや、気持ち悪いのはお前さんだって。いったいなんだってんだ。


『いや、その、顔は自分の顔なんだが、その下にくっついてるのが男の体ってなんか違和感が……』


 ――何をいまさら。まぁ、さっきの自分の身体に戦々恐々しながら制服に着替える様は、見てて面白かったけどな。初心なやつめ。


『う、うるさい! 思い出させるな! 男の体に女である自分の顔が付いているんだぞ? 違和感を感じない方が変だろ』


 ――何言ってんだ。指輪は世界観に合わせて顔も変えるのに、お前さんは顔は変わらなかったんだ。つまり、それだけ伝説の剣士様ってのに並ぶぐらいかっこいい顔なんだぜ? よ、色男!


『色男って、嬉しくない。それに、体に、その……“ある”ものがなくて、“ない”ものがあるのは、どうもなぁ』


 ――あるものって、お前さん本の外でも“ある”ってほどあったのかい?


『この指輪、物語から出たら絶対に溶鉱炉に捨てる』


 ――じょ、冗談だって。まぁ、男の体であるのは物語上しょうがないぜ。慣れるしかない。男の体に慣れるしかない。


『言い方! まったく』




 ――コンコン



 部屋の入口をノックする音がした。 

 いったい誰だろう。


「メリット こんばんは~」


 扉を開けた先に立っていたのは、レベッカだった。

 こころなしか、上機嫌にみえる。


「こんばんは」

「入っていいですか?」

「どうぞ。おもてなし出来るようなものは何もないんですが」


 彼女は「おかまいなく~」と軽い足取りで、下手の中に足を踏み入れた。 

 上機嫌というよりなんだか彼女の言動がふわふわしているように感じる。


「あれ~? 学生服着たんですね~前の格好の方がよかったのにぃ」

「いや、さすがに500年前の恰好じゃ浮いてて恥ずかしいですよ。あ、でも明日の決闘は、剣士の装いでいきます。なんせ、実戦ですからね」

「…………うん、いいと思います。それがいい! あ、座っても?」

「どうぞ」


 一瞬、妙な間があったが、そこは気にせず彼女にベットに座るようすすめる。

 レベッカは腰かけると、「はい、差し入れ」と言って手に持っていた袋から、瓶に入った飲み物を取り出し、1本私にくれた。


「ありがとうございま……す……」


 渡された瓶を見ると『猫まっしぐらマッハ・スーパーストロング、マタタビエキス配合!』とラベルに書いてある。隅にはアルコール度数もだ。


「ああ! そっちは私の!! メリットのはこっちね。にゃはは」

「あ、ありがとうございます。シュミット先生」

「そ、そんな、朝はレベッカって呼んでくれてたのに……」


 レベッカが、くりっとした大きな瞳を涙で潤ませた。


「いや、私もうここの生徒ですから、さすがに」

「にゃ~やだぁ~レベッカって呼んでくれにゃきゃやだぁ~」


 あれ、既に先生の顔がかすかに赤いぞ。そういえばさっきの瓶、既に封が切ってあったような。


「ええ……」

「やだ~やだ~……メリット様が冷たいぃ~……」


 ダダこねながら、時折、ちら、ちらっとこちらを伺ってくる。


「えっとじゃあ、レベッカ」

「ふにゃ~はい、メリットさまぁ~」

「さまって……それで、何か御用でこられたのですか?」

「ぶぅ~敬語もいや~壁を感じるぅ」

「はぁ……何で来たの?」

「え~私が遊びに来ちゃいけないんですか?」

「いや、教師が生徒の部屋にっていうのは」

「……明日の激励に来たんですよ。相手があの“灼熱姫”ですから、ちょっと心配で」


 拗ねただけなのかもしれないが、レベッカの口調に冷静さが戻ったように感じた。

 また、子供みたいに駄々をこねられても困るので、私は部屋に来るうんぬんの話は切り上げて、ほかの話題に替えた。


「そ、それはありがとう。しかし、“灼熱姫”とは」

「えっとですねぇ、ラグーンさんは、あの魔王に仕えた四天王の一角、火竜王の直系の子孫なんですぅ。竜族の中でもエリート中のエリート。戦闘能力も魔力も学園屈指の生徒にゃのです」


 なるほど、言われてみれば、フレイヤの頭には2本の角が生えてたし、尻尾もあった。あれは、ドラゴンの特徴というわけか。


「強敵というわけか」

「はい、それで彼女の戦い方なんですけど――」

「あ、いや、そういうのは聞かないでおくよ」

「え?」

「決闘なのにフェアーではない」




 ――はぇ~真面目だね~お前さん


『だから性分なんだ』




「話を戻して申し訳ないが、魔人以外に竜族って残っているの?」


 魔人しかいなくなった世界で、竜族という個別の種族が残っているのだろうか。私はふと疑問に思ったのである。


「いいえ。ちょっと違いますにゃ~。魔人どうしが交配すると、魔族の特徴は基本、どちらかの親のものしか引き継がれません。しかも選べるわけじゃない。だけど種族の血にこだわる竜族みたいな種は、同じ種族の特徴をもつ者でのみ婚姻を繰り返して、魔人になっても自分たちのドラゴンの血と特徴を守ったのです。そういう魔人たちを純血種族っていいますぅ」

「なるほど、その純潔種族の魔人、その一つに竜族がいるってわけか」

「そういうことですね~」

「竜族か……いろいろ教えていただき、ありがと……え、と」


 無言のレベッカが、頭のてっぺんをこちらに向けつつ、なにか期待するような上目づかいで私を見つめていた。

 頭頂部では“猫耳”が立ち上がり、ピコピコを動いている。



挿絵(By みてみん)




 ――おい、なにぼさっとしてんだよ。ご褒美を期待してんじゃねぇか。


『ご褒美? 撫でろというのか?』


 ――へたれかよ。いいか、この手の物語の主人公は、息を吐くように自然に女の子の頭を撫でるんだ。


『自然もくそもないだろ、もうレベッカ期待してるし』


 ――いいからいけ。撫でろ! 撫でまわせ! それと、爽やかにな! 間違っても「デヘヘへ」とか気持ち悪い笑いをするなよ!


『するか!』




 私はレベッカの猫耳の付け根あたりを撫でててあげた。


「あ、ありがとう、レベッカ」

「ふ、ふにゃ~どういたしまして~えへへ、さ、さいこうですぅ~メリットさま~もっとなでてぇ~もっとぉ、にゃあぁ~ん」



 ◇  ◇  ◇



 翌日の正午、特別推薦の試験で使った室内練習場で、私はフレイヤと向き合っていた。お互い手には剣が握られている。


「あなた、昨日の服のままですのね。どれだけそのコスプレが好きなんですの?」

「いや、昨日の夜はちゃんと制服を着たさ。でも決闘なんだから、この格好にしたんだ」

「勝負服とでも言いたいのかしら?」

「まぁそうだが。それより君は戦闘用の格好に着替えないのか?」


 フレイヤの格好は、女生徒が着るブレザーにスカートと制服のままである。これから決闘だというのに、なんのつもりなのだろう。


「はあ? あなた何言ってますの? 普通、この格好のままでしょうに」

「え? 百歩譲ってブレザーはいいとして、そんな短いスカートで戦うのか?」

「そうですけど?」

「武器を見たところ、君は前衛アタッカータイプだろ。そんな激しい動きをする人間が、ひらひらしたスカートなんて下着が見えるぞ。うら若い乙女がはしたない」

「ちょ、ちょっとなんです! 精神攻撃ですの!? この変態! スケベ!」

「うぐっ、ちがう! そ、それに脚には太い血管が通っているんだ、スカートじゃ致命傷から守れないぞ」




 ――お前さんよ。気持ちは分かるが、この手の物語のスカートってのにはな『鉄のスカートの法則』ってが働くんだ。


『なんだよそれ。というか、“この手の物語”多いな』


 ――戦闘中は、破けず、(めく)れず、(ひるがえ)らず、ってな。どうやっても戦ってる最中は下着は見えないわけ。まぁ、逆に見せに行くことを売りとする物語もあるけども。


『だが、防御力の面は――』


 ――それは審判から説明してくれるさ。




 すると、審判として立ち会ってくれるケイルズ先生が咳払いをした。


「ああ、グレンザール、決闘でも武器は試験と同じ、刃落とし処理――魔法で切れないようにしたものを使うから、怪我の面は大丈夫だと思うぞ」


 知らなかったとはいえ、スカートうんぬんと騒ぎ立ててしまったことが一気に恥ずかしくなった。


「ただ、お前の武器はまだ刃落とし処理してないからな、腰の剣は私が預かろう。代わりに、今日もこれを使いなさい」


 そういってケイルズ先生は武器の入った木箱を出現させた。

 私がその中から武器を選んでいる間、先生はフレイヤの武器がしっかり刃落とし処理がされているかチェックしていた。

 どうやら自前の武器も処理をすれば学園ここで使えるらしい。


「切れないとは言えダメージはある。それに、魔法による攻撃は制限を設けていない。危険と判断した場合は、こちらで止めるからな」


 再び私とフレイヤの間の位置に戻ったケイルズ先生が、決闘について説明してくれる。


「それと、決闘の形式はダメージポイント形式とする」

「先生それは?」

「ああ、グレンザールには説明せんといかんか……お前たちには特殊な魔法をかけてある。その魔法の効果で、ダメージの大きさをポイントに変換し、攻撃を受けた側は自分のポイント、つまりライフポイントがダメージのポイント分だけ減っていくんだ。そして、ライフポイントが0になったら負けだ」

「す、凄い! 魔法でそんなことが出来るのか!」

「……あなたいったいどこの世界の人ですの?」

「おほん、あーでは、決闘を始めるぞ。両者、構えて」


 剣を握る手に力が入り、一気に場の空気に緊張する。


「始めっ!!」


 ケイルズ先生の声が静かな練習場に響き渡り、私とフレイヤの決闘は開始された。


今回、メリットが言ったことはいつも「何でだよ」って思うこと。


キャラのデザインの幅を広げるため、魔術師やヒーラーとか、後衛タイプのキャラがスカートなのはいいだろう。丈が短くてもだ。


前衛タイプも、ガチガチの鎧で固めろとも言わない。軽装でもいいよ。


でも……


短いスカートはダメだろ!!


さも「ふふん、わたし剣の腕には自信があるの」みたいな顔して、フリフリのミニスカートって、戦闘舐めすぎだろ!

男だと上半身防具着けて下半身トランクス、みたいなのだぞ?

脚に太い血管通ってるんだぞ!?


それに下着みえるし!

「女など捨てた」ってことか!?

でも、そんなのに限ってパンツ見えようもんなら「キャー変態!」とか恥じらう初心(うぶ)な設定。訳わからんわ!

あれか! パンチラに視線誘導させて隙を作るのか?

女アサシンの技かよ!!


いかん……取り乱した(-_-;)

でも、前衛のスカートはいつ見ても解せない。


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