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ゆかりさんとわたし  作者: ユエ
3話 ゆかりさんとわたしと、校舎裏にて
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さあ、行きましょう

 

 翌日の放課後。

わたしは相原さんを通して峰岸さんを呼び出し、ことの真相全てを伝えました。



「ですから、もしこれ以上何かあるようなら、そのラブレターを書いた女の子を探して彼女を説得するしかありません。筆跡ならわたしが覚えていますし、女子相手なら相原さんも」



 隣の彼女に視線を向けると、力強く頷いてくれました。



「ええ、もちろん協力するわ。そういうことなら喜んで」

「ありがとうございます。以上が事件の真相と今後の対応策です。真犯人をどうするのかは峰岸さんにお任せします」

「あ、ああ……わかった……」



 峰岸さんは、無理もありませんが、わたしの話に、ゆかりさんの推理に戸惑いを隠せない様子でした。



「正直いまだに信じられないが……。あいつらが俺を……。だが、ちゃんと考えておく。ちゃんと自分で答えを出すから」



 迷いながらも決心を固めた瞳。

 もう大丈夫そうです。



「それではわたしはこれで」

「あ、ちょっと待ってくれないか?」

「はい?」



 背中を向けたわたしに、初めて出会った時のように引き止める声がかかります。



「どうして俺のためにここまでしてくれたんだ? ひょとして……俺のこと好きなのか?」



 突然の問いかけに、



「いいえ、違います」



 驚くほどすんなりと答えが返せました。

 自分でもどうかと思うほど酷く冷たい物言いでしたが、不思議と後悔も反省も湧き上がってきませんでした。


 相原さんが一瞬峰岸さんに驚愕の表情を向けて、それからわたしを見て、わたしの答えを聞いて、



「ぷっ! あっはっはっは!」



 そして堪らず吹き出しました。



「くっ……。おい、笑うなよ相原……っ」

「馬鹿だ! 馬鹿がいる! 信じられない! 助けてもらった後輩の子になんて妄言伝えているの?」



 相原さんは人目もはばからずひとしきり峰岸さんを笑い者にして、それからわたしを向き直り、にっこり笑顔。



「ああ、いいわ。あなたすごくいい。前の時にそう思ったけれど、今はもっと気に入ったわ」



 ぐっと立てた親指を向けられて、きれいにウィンクされます。



「えっと、ありがとうございます」



 わたしはお辞儀を残して、その場から逃げるように走っていきました。


 峰岸さんにとっては勇気をふり絞った告白だったのでしょう。けれど、応えてあげることはできません。


 だって、わたしが好きなのは、


 本当に大切なのは、ひとりだけ。



「……ふふ」



 ふと彼女の笑顔を思い浮かべます。これで用事は終わりました。心置きなくゆかりさんのお家へ向かえます。


 さあ、行きましょう。わたしを待ってくれている彼女のところへ。

 

 

 

 

読了ありがとうございます。第三話、これにて完結です。

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