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ゆかりさんとわたし  作者: ユエ
3話 ゆかりさんとわたしと、校舎裏にて
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窓ガラス破損事件


 

 翌日のこと。



「ふう……」



 高校へ向かう道すがら、朝から何度目になるかわからないため息をつきます。

 今日が休日であったらどれほどよかったことか。ゆかりさんのお家に朝から行くことができたのに……。そう思わずにはいられません。


 無性にゆかりさんの笑顔を見たい気分です。


 肩を落としたまま高校へ到着し、三階まで階段を上がります。一年生の教室は三階にあります。二階に二年生、一階に三年生です。

 後輩なんだから先輩より苦労しろ、ということでしょうか。部活に入っていないわたしには良い運動です。


 三階分の階段を登り、教室の前にやって来ると、そこには人だかりができていました。なんだろうと思いつつ、人の間を縫って教室へ入ります。


 教室の扉付近にもたくさんの同級生が張りついていました。みんなの視線は一様に廊下の窓へ向けられています。


 廊下に沿ってきれいに並ぶ窓ガラスの中に一枚、割れているものがありました。破片などは既に片づけられ、開けられた穴は段ボールで塞がれています。



「何かあったのかな?」

「誰かが石を投げて割ったそうよ」

「相原さん? お久しぶりです」

「はーい、どうもね」



  わたしの呟きに答えてくれたのは、少し前におかしなことから知り合った、二年生の図書委員の相原さんでした。

 挨拶もそこそこに、相原さんはわたしの疑問に答えてくれます。



「昨日の放課後、野球部の三人が『ガシャーン!』っていう大きな音を聞きつけて見に来たの。そしたら、外から石を投げられて窓ガラスが割られていたそうよ」

「誰がやったんですか?」

「さあ。ただ、その野球部の三人はうちのクラスの奴でね。話を聞いてちょっと見に来てみたわけ。人が多くて教室の中へ押し込まれちゃったけど。あ、お邪魔しているわよ」

「はあ。どうぞ」



 相原さんはにこっと微笑んだ後、呆れるような表情を見せて窓ガラスに視線を向けます。



「それにしても、わざわざ三階の窓ガラスなんてよく割ったものね。相当むしゃくしゃしていたのかしら?」

「そうですね……」



 わたしも何気なく割れた窓の方へ視線を向けます。


 野球部と聞いて、ふと校舎裏で人を待っていた主将さんのことを思い出しました。ちょうど、割れた窓ガラスの向こうが校舎の裏側です。


 チャイムが鳴って人だかりが捌け、相原さんも自分の教室へ急ぎ戻ります。教室内のクラスメイト達も全員席に着きます。

 担任の先生が入ってきて、朝の挨拶の後窓ガラスの件に話が移ります。ほとんどさっき聞いた話と同じでした。


 つまり、犯人はまだ分かっていないということです。昨日の今日では仕方ないのかもしれませんけれど。


 先生の話を聞き流していたわたしの耳にとある単語が引っかかります。なんと、わたしの名前が呼ばれました。

 先生がこちらを向いています。



「はい」

「今日の放課後、ちょっと職員室まで来てくれ」

「……はい?」



 教室内は騒めきます。

 当然でしょう、つい今しがた窓ガラスを割った犯人を捜しているという話をしていて、その直後に職員室への呼び出しとくれば嫌な予感しかしません。



「あー、みんな静かに。すまん。言い方が悪かったな。疑っているわけじゃなくてだな、少し聞きたいことがあるだけだ。いいか?」

「はあ、えっと、分かりました……」



 断れるわけがないので、曖昧に承諾の返事を返すしかありません。


 先生が出て行ってから多くのクラスメイトに詰め寄られ、質問されました。一体何をやったのか、と。

 わたしが聞きたいくらいでした。

 

 

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