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ゆかりさんとわたし  作者: ユエ
2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて
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第二の事件 解答編



〝二つ目の事件。ポイント何だと思う?〟



 今度はいきなりの質問でした。わたしは、先程のゆかりさんからの講義を踏まえて必死に考えて見ます。



「えっと、ポイント……つまり怪しい点よね。真っ暗闇の中でどうやってミカと双子のお母さんを狙撃したのかっていう」


 

 無造作に暗闇に向けて撃った、とするには乱暴です。少なくとも、犯人は二人を的確に狙って撃っているのですから。 


 ゆかりさんはペンを走らせます。また何やら想定外の言葉をわたしが口走ったようです。



〝ミカは気にしなくていいわ。一旦置いておいて、双子の母親への狙撃に絞ってみましょう〟

「ミカは気にしないの? 先に撃たれたのに?」

〝先に撃たれたからこそよ〟

「ううーん……」



 唸ってみますが、良さそうな答えは見つかりません。


 そもそも、どうやって真っ暗な部屋の中にいる二人の位置を特定したのでしょうか。幽霊のゆかりさんなら夜の闇なんて関係なく、自由に動き回れそうですが。


 考えを詰まらせたわたしを見かねて、ゆかりさんがさらなるヒントを出します。



〝ミカはね、ある行動をとったせいで間違って撃たれてしまったの。犯人の狙いは最初から双子の母親だったの〟

「え、そうなの?」



 ゆかりさんは頷いて、言葉を続けて書いていきます。



〝二人に共通した行動は何だったかしら。暗闇の中で特定の物に狙いをつけるには、どうしたらいいかしら?〟



 わたしは腕を組んで考えます。二人の共通点、それは……。



「直前に携帯電話を使っていた……? ああっ! 携帯電話! 光!」



 暗闇の中で特定の物を見つけるために必要なもの、それは光。携帯電話を手に取らせれば、特有の白光を頼りにそこを狙い撃つことができます。



「携帯電話を操作するときは顔が近くにあるから、スコープで覗きながら狙いを少しずらせばそこがちょうど頭になる……。そういうことね」



 ゆかりさんはスケッチブックに大きく、〝正解〟と書いてくれました。


 そしてゆかりさんのターンです。



〝犯人は暗闇の中ターゲットへ狙いをつけるために携帯電話の光を利用したの。双子を攫ったのはこのため。行方知れずの我が子から着信が入ったとなれば、母親なら必ず電話に出るわ〟

「なるほど。双子がいなくなったのにもちゃんと意味があったのね」

〝ひとつ犯人にとって誤算だったのは、双子の母親への着信後、双子の母親が出るよりも早くミカが携帯を操作してしまったこと。すぐに間違いに気づいた犯人は、急いで次弾を装填し、今度こそ双子の母親を撃った。そして樹の上から逃げた。そいうことよ〟

「そうだったのね。あ、でも待って。確か、樹の枝が高い位置にあって登れないという描写があったよね。あれは?」



 樹を調べた直後にサヤカが見つけた四角い四つの跡。あれについてもまだ分かっていません。

 殺害トリックは解き明かされたのだからゆかりさんはそこまで答える必要はありませんが、わたしはつい気になって訊ねてしまいます。


 ゆかりさんは、これも予想していました。



〝どうやって樹の上に登ったのかだけど、樹の根元にあった四つの四角い跡がポイントよ。あれはね、脚立を使った跡なのよ〟

「ああ、そうか。脚立ね。高い所へ登るんだもの、普通使うよね」



 とか言いつつ、わたしはまったく気づけませんでした。


 続きの文字を目で追います。



〝犯人はたぶん、脚立を木の根元へ運び、ライフルを背負って枝の上へ登った。奪っておいた双子の携帯電話を使って双子の母親の位置を特定し、そして撃った〟



 ゆかりさんが右手で拳銃の形を作って、わたしをバンと撃つ真似をします。

 

 そして、〝どうかしら?〟と得意顔。


 わたしは、その圧倒的な推理力に感心するしかありません。まるで、ゆかりさんが教えてくれたその場面が、映像として頭の中へ流れ込んでくるようでした。



「ゆかりさん、すごいよ。こういうのって分かると、こう、テンション上がっちゃう!」



 気持ちに抑えが利かず、ゆかりさんの手を握ってそう言うと、ゆかりさんは若干戸惑いながらも同意してくれます。

 この後、慌てて手を放して謝ることになります。


 若干気恥ずかしい雰囲気の中、ひとつ咳払い。空気を変えようとします。



「こほん。ええと、ゆかりさん。三つ目の事件に移りましょうか……」



 一気にテンションがいつもよりやや下の位置まで落ちたわたしが促すと、ゆかりさんはこくりと頷き、スケッチブックを手に取ります。

 

 

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