表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆかりさんとわたし  作者: ユエ
2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて
43/79

第三の事件 後編


 

 やがて夜が明け、外が薄っすらと明るくなり始める頃。

 

 朝食を作るために食堂へ向かった執事のサキモリさんと家政婦のミタさん。


 ユウトとサヤカとミカの三人は、二つの現場を見て回ることにします。


 裏口までやってきた三人。現場を荒らさないよう注意を払いながら、ユウトが見張り役に立ち、サヤカが下の地面を調べます。ミカは一応建物の中に残してきました。


 ぬかるんだ土と草地の境に、ちょうど覆いかぶさる形で記者のシンさんが倒れています。昨夜親族の誰かがかけたのか、死体には防水性のシートがかけられていました。


 仕掛けが施された可能性のあるライターは爆発のショックでどこかへ吹き飛び、見つけることはできません。


 調べを終えて立ち上がったサヤカの目に気になる点がひとつ。青々と茂っていた草地の広い範囲が炎で焼かれ、黒炭と化していました。


 続いて、双子の母親のヨシカさんが狙撃された部屋へ。

 部屋の真ん中で倒れているヨシカさんの上には、やはりタオルケットがかけられ、真っ赤な染みを作っています。


 死体はほぼ正面から頭を撃ち抜かれていて、手には携帯電話が握られていました。携帯は着信の画面が開いていて、既に相手からの着信は切られていましたが、着信相手は双子の片割れでした。


 次にユウトとサヤカとミカは、ユウトが見たという狙撃者がいた樹の所へやってきます。ミカは洋館へ置いて来ようとしましたが、無理矢理ついてきてしまいました。


 樹の根元まで来ると、それがとても高い樹で、足を引っ掛ける場所がないことが分かります。ユウトたちの部屋があった三階に相当する高さの枝までは、とうてい登ることができません。



 「少なくとも親族会に集まった人の中に犯行が可能な人間はいないじゃ……」



 そんな結論がユウトの口から漏れます。


 その時、ふと何かに気づいたサヤカがしゃがみ込みます。


 ぬかるんだ地面に小さな四角い跡が残っていました。近くに同じ物が三つ。四点を結ぶと、細長い長方形の形になりました。

 ぬかるみには屋敷へと向かう靴の跡も残されていて、辿ると外の蛇口の所で途切れていました。


 蛇口の流しが泥で汚れている様子を見た後、サヤカはすっと立ち上がり、ユウトとミカの顔を見て言います。



「犯人が分かったわ」



 急いで大広間へと戻ると、朝食のサンドウィッチが用意されていました。

 親族の人たちは疲れた様子で、サンドウィッチを食べています。どうやら一晩中言い争いをしていたようです。


 そこへ執事のサキモリさんと家政婦のミタさんが、紅茶を持ってやってきました。


 ひとまず大人しくしているように、とサヤカはユウトとミカに耳打ちします。犯人は分かりましたが、証拠がありません。


 注意を払いつつサンドウィッチを口に運び、紅茶を飲もうと持ち上げた時でした。隣で自分の紅茶を飲んだサキモリさんが小さく咳き込んだ後、血を吹き出して倒れました。

 何度か痙攣を繰り返した後、まったく動かなくなりました。


 医者であるタダクニさんの必死の救命措置虚しく、執事のサキモリさんは帰らぬ人となりました。


 死因は毒殺。これが第三の事件です。

 




★   ★   ★

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読了、ありがとうございました。
感想・評価いただけると嬉しいです! 最新話下部にあります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ