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ゆかりさんとわたし  作者: ユエ
2話 ゆかりさんとわたしと、洋館にて
33/79

第一の事件 後編


 

 翌朝。


 ユウトとサヤカはほとんど同時に目覚め、朝食のために大広間へと向かいます。

 そこでミカと合流し、三人は近くの湖へ遊びに行くことにしました。


 この親族会の目的は、老い先短いミカの祖父の遺産分配のための話合いであり、第一相続人であるミカの父親は親族同士の醜い話し合いに巻き込まれたくはないと辞退を申し出ていました。


 そこで出てきたのが残りの兄弟姉妹たちとその家族と親戚たちで、この親族会で遺産の相続についてのあれこれを話し合って決めるのだと、ミカはユウトとサヤカに語りました。


 親族たちの浅ましい一面を垣間見てどこか悲しげだったその背中に、サヤカが「あなたはいいの?」と訊ねます。


 するとミカは、



「わたしにはよくわかりませんから」



 そう言って寂しい笑顔を見せました。


 辞退したとはいえ親族会に出席しないわけにはいかず、浮かない顔の父親に自分が代わりにいくと提案したそうです。

 その時に話し合いには参加しないよう、きつく言いつけられていました。


 湖の景色を楽しんで三人が洋館へと帰ってくると、ちょうど相続の話し合いが一旦お開きになったところでした。 

 決着は明日に持ち越しとのことです。


 夕食まで適当に時間を潰そうかと、気の抜けた空気が漂う中、



「子供たちがいないの!」



 双子の母親のヨシカさんが悲痛に叫びました。


 そのひと言から大捜索が始まります。


 ユウト、サヤカ、ミカの三人と女性たち、そして洋館の管理をしている執事さんのサキモリさんは、洋館の中の十数部屋をくまなく探し、男たちは外に広がる森の中を、双子の名を呼びながら走り回りました。


 やがて完全に日が暮れ、雨が降り出し、捜索は断念。


 外に出ていた男たちが次々と洋館へと帰還し、双子の母親のヨシカさんへ申し訳なさそうな顔で見つからなかったと報告していきます。


 まだ捜索中の最後のひとり、記者のシンさんが双子を連れて帰って来ることを期待し、双子の母親のヨシカさんは雨の中、正面玄関先で待ち続けていました。


 一方その頃。


 ユウトとミカとともに双子を捜索していたサヤカは、いい加減埒が明かないと、洋館に残っていた人から証言を集めて双子の居場所を推理しようとします。


 一応の仮説を立てて、その報告をするため正面玄関へ向かおうとした時でした。

 裏口の戸が開いて、外からずぶ濡れの記者のシンさんが入ってきます。


 ユウトたちと一緒にいた家政婦のミタさんは慌ててタオルを持ちに行き、ユウトたちはシンさんと双子がまだ見つからないことを話します。



「すぐに知らせてやらないとな」



 残念そうに言ったシンさんの言葉に従って、三人はその場をあとにします。


 その後ろで落胆と疲労を落ち着けるため一服つこうと思ったシンさんは、上着のポケットから幸いにも湿っていなかったタバコを取り出して口に咥え、火をつけようとライターの着火部を押し込み、


 そして―――。


 突然の爆発。炎上。


 身体が瞬く間に炎に包まれたシンさんは驚きと熱さで混乱してのたうち回り、堪らず洋館の外へ、豪雨の中へと飛び出します。


 地面にできた水たまりへ飛び込みましたが火はまったく消えず、むしろ勢いが増すばかり。


 絶叫を聞いて駆けつけたユウトとサヤカとミカ、それに火を消そうと頑張っていた家政婦のミタさんの目の前でシンさんは焼死しました。


 これが第一の事件です。

 

 


★   ★   ★

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