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パイロット版 《ガーディマン》 学生とヒーローの両立は大変です 〜怪盗宇宙人ジュパエル星人登場〜   作者: 竜馬光児
パイロット版 《ガーディマン》 学生とヒーローの両立は大変です 〜怪盗宇宙人ジュパエル星人登場〜
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希望を守る者 #4

  路地裏からビルに飛び上がった人影は屋上に片膝をつき、まるで見えないクッションの上に降りたみたいに着地した。衝撃は全く感じさせず屋上にも傷一つ付いていない。


 立ち上がって背筋を伸ばしたその姿は、身長百八十センチ程度で、鎧を着た騎士のように全身隙間なく金属に包まれ、無駄な肉一つない引き締まった身体つきをしている。


 ただ鎧と違うのは、身体に金属がぴったりと、まるでタイツかウエットスーツのように密着しているのだ。


 無駄な装飾も見当たらず、そのお陰で西洋の甲冑のような動きにくさは感じさせない。


  言うなれば、鋼鉄の皮膚を持つ金属生命体だった。


「誰にも見られてないよな?」


 二等辺三角形をひっくり返したような、黄色の鋭い二つの眼からはとても想像できない優しげな声音が発せられる。


 理由はまだ声変わりしてないからだ。


  金属生命体は、少し腰を落として両手を外に向け、しきりに辺りを見回して人目がないことを確認。その姿は百八十センチの長身からは想像もできないほど、子供っぽい印象を抱かせる。


 頭部はフルフェイスヘルメットを被っているようにのっぺりとしていて、鼻や口は見当たらず、耳があるところには、ヘッドフォンのような円形のパーツになっている。


  大丈夫そうだな。じゃあジュパーを探しますか。早く終わらせて学校行かないと。


 父譲りの勇気と母譲りの優しさを受け継いだ証である白銀のボディにエメラルドのラインが血管のように縦横無尽に走る姿。


 これが星空ユウタのもう一つの姿である。


 その名は――


「ガーディマン!」


「はい……えっ?」


 名前を呼ばれて、反射的に振り向くと、そこには青いツナギを着て掃除道具を持った太っちょの男性清掃員が口を大きく開いたまま、こっちを指差していた。


 その紅潮した表情からは、目の前に立つ金属生命体に対して恐れを感じているわけではなく、むしろ女優やアイドルのような憧れの存在を生で見れて激しく興奮しているようだ。


「その緑のラインが走る金属のボディ、あんたガーディマンだろ? まさか実際に会えるとは思えなかったよ!」


 ちょび髭を生やした男性はお腹を揺らしながらこっちに近づいてくる。その姿は世界一有名な配管工にどこか似ていた。


  ガーディマンは男性清掃員の様子を見て、心の中で胸をなでおろす。


 良かった。変身前の姿は見られてないみたいだ。


 ガーディマンがユウタだと知る者はサヤトを含めた極一部しかいない。ユウタが変身した時に誰も見られないように注意していたのは、敵に正体を知られて自分の大切な人に危害が及ばない為だ。


「はい。そうですよ。じゃあ僕は――」


 ユウタことガーディマンは車を追う為すぐにこの場を離れようとしたのだが……。


「待ってくれ! うちの息子が大ファンなんだよ! それで、一緒に写真撮ってくれないかな?」


 そう言って尻ポケットからオーバスを取り出し、ガーディマンに見せてきた。


 待受に映るのは幼稚園の制服を着た男の子だ。ちょび髭の男性本人と、母親と思しき女性の三人で写っていて、写真からも幸せに満ち足りていることが分かる。


「可愛い子ですね」


「だろ? 俺たちの宝なんだよ」


 息子を褒められた男性は今にも待ち受けに頬ずりしそうな勢いだ。


「そ、そうですね……あれ?」


  写真を見ていたユウタはある物に気づきそれを指差した。


「すいません。この子が手に持ってるの……僕の人形?」


 眩しい笑顔の男の子の右手に握られているのはフェルト人形だ。よく見ると白いボディに緑のラインが走っていて、ガーディマンによく似ていた。


「ああ、これはウチの女房が作ったんですよ。息子がどうしても貴方のおもちゃが欲しいっていうんで、でも売ってないじゃないですか。だから作ったんですが、もしかして駄目だったでしょうか?」


「いえいえ、全然、そんな事ないですよ」


 人形を持つ男の子の嬉しそうな表情からも、ガーディマンのことが大好きなのは、待受画面からでも伝わって来た。


  こうやって応援してくれる人がいると分かって、心の中が幸福な温泉に満たされていくような気持ちだ。


  男性清掃員は腰を低くして申し訳なさそうにお願いする。


「そりゃ良かった……で、一枚だけでいいんで写真撮ってもいいでしょうか?」


「ええ。いいですよ。ただ、すいません。僕急いでいるので一枚だけでお願いします」


「い、いいんですか⁈」


 了承されるとは思ってなかったのか、男性は跳び上がり、オーパスを持つ手も、強く握りしめてか小刻みに震えていた。


「ああ、そんなに握ったら壊れちゃいますよ!」


「おっと、そんな事になったら写真撮れなくなっちまうところだった。じゃあお言葉に甘えて一枚だけ」


「はい。ただしこの事は秘密でお願いします」


 ガーディマンが口元に指を添えた。


  二人は肩を組み、男性がオーパスを操作してカメラのシャッターを切ろうとするのだが、緊張のせいか震えてしまい中々上手くいかない。


「ちょっと待ってください。これじゃブレちゃって……よしこれで行きますよ……」


 何とか震えを制御し、早朝の屋上にシャッターが切られた音が響き渡った。


「ありがとうございます。これで息子も喜びますよ」


 そういう男性の顔も新たな宝物を手に入れたような満足感に満ち溢れていた。


「いえいえ。大した事してませんから。それじゃ僕はこれで」


 大きく手を振って送られる声援を背中に受けて、ガーディマンは隣のビルの屋上に苦もなく飛び移った。

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