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7話 狩り時々お買い物


「ゆきちゃん!」

「任せて! いっけぇー!」


 先端に溜めてた魔力をラパン目掛けて飛ばすが、魔力の塊が明後日の方角へ飛んでいく。

 ウサギにしては大きすぎる体を軽快に動かし、私目掛けてラパンが突っ込んで来る。



「てぇや!」

 朱莉の放つ矢がラパンに突き刺ささり、崩れ去る。




 朝はみな仲良く寝坊をして、太陽が一番高く輝く頃に狩りに出た。


 荒れ果てた畑から街道を東方向へ。つまりルージュ村とフイッシャの街の街道から少し離れた場所でラパンを狩ることにした。



「うぅ……当たらない」


 今日何度目だろうか。魔法を外し落ち込む。 

 魔法なんだから必中でいいじゃないかと思う気持ちは、間違っているのだろうか。


「こればかりはやったことないわけだし、練習あるのみだからな」

「当たれば一撃だよねぇ」

 陣内くんと朱莉が慰めてくれる。


 ラパンは巨体な姿とは裏腹に古川くんなら一撃で倒せて、前衛と中衛の組み合わせならば3回攻撃が当たると倒せることが判明した。


 そして、私も古川くんと同じで一撃でラパンを倒すことはできる。当たればだけども。


「あと何回撃てそう? それと攻撃は当たらなかった?」

 仁井くんが心配そうに体調を気遣う。


「体調に変化ないしまだ撃てると思う。それとブレスレットも変化ないからダメージは受けてないよ」


 ブレスレットには、光る5つの宝石がついている。その宝石の光の数で、大まかなHPがわかるだけで正確なHPは分からない。

 MPにいたっては個人の感覚でしか分からないシステムだ。


「みんなは戦ってみてどうだった?」

「うちらはいつもとあんまかわらんもんね」

「私はむしろ調子がいいよぉ」


 普段から鍛えている日菜乃は変化はないらしいし、朱莉は体が軽やかに動くようだ。


 普段から運動をしない私は、大幅な強化に感覚がついていけてないところもある。

 そうだ。そのせいで当たらないだけだ、と一人言い訳をしてみる。


「僕たち男性陣は体が重い感じがするよ」

 逆に男性陣は普段と比べて身体能力が下がっているようだ。



「あとさ、職業補正ば受けとう気がないんやけど」

 

 『前衛』は若干身体能力が上がり、『中衛』は弓の命中率がアップするらしいが、弓道経験者の二人には恩恵が感じられないらしい。


「今ので5匹目だね。昨日と同じ量が狩れたわけだし、1度休憩にしようか」


 仁井くんが辺りを見渡しながらお昼休憩を提案する。

 遠くに数組のプレイヤーがモンスターと戦ってはいるが、この辺りにはいないようだ。


「春エリアだから気持ちいいよね」

 朝と夜はかなり冷えるが、昼間は暖かい。春の日差しを全身に浴びて、草むらで横になる。



「今日で3日目かぁ。予定なら明後日には帰らないといけないって寂しいなぁ」

「明後日帰れるのかな?」

「どうやろ? それよりうちはさ、歯磨き、洗顔、着替え、お風呂! 不満しかないとよ! 早く帰りたか」


「ははは……。今日はお風呂屋に行こうね」

 仁井くんが力なく笑い、お風呂の約束をする。


「本当と!? 帰りに絶対に温泉いくけん!」

「ラパンの毛皮がいくらで売れるか分からないから、あと5匹狩ったら今日は終わろうか」


 狩りを終えて村のそばで魔力が切れるまで魔力の塊を飛ばしてみた。


「気分はどうなん?」

「かなりきつい。頭がガンガンするし目眩もするよ。風邪引いた感じで、体が重く節々も痛い。あとかなり疲れたから横になって休みたいよ」

「宿で少し休もうか」

「うん、休む……」


 日菜乃に背負われながら、もう二度と魔力切れは起こさないと強く夕日に誓った。



 私が宿で1時間程横になっている間に、カードの清算をしてくれていた。

 1階の食堂にいるシェフの格好をしたNPCが、肉カードの買い取りをしてくれたようだ。


 そしてベータ時とは違ってラパンの肉は100g10リンに大幅な値上げをしていた。


 今日手に入れた『ラパンの肉500g』48枚と『ラパンの肉1kg』12枚に昨日の分も含めて5100リンの収入になった。



 魔力回復を待って、予算3200リンでお買い物と入浴をすることにした。

 日は既に沈みルージュ村は暗闇に支配されてはいたが、私たちの心は光輝いていた。



「とりあえず今必要なのはトラベルセットと普段着の着替えくらいだよね?」

「そうだねぇ、欲を言えばパジャマも欲しいかなぁ」

「明後日に帰るんやったら、パジャマはいらんくない?」


「どうかな? それまでにログアウトのバグが治れば帰れるけど、体感6倍でも外の時間だとまだ12時間しかたってないからね。僕は2,3日は伸びると考えているよ」

「それもあるよね。結局6倍なのか1日と1年が一緒なのかも報告して欲しいよ」


 ログアウトできないバグはいったい、いつまで続くのだろうか。見たこともない綺麗な星空に向けて、ため息をつく。


 井戸のある中央広場に武器屋と防具屋、それに道具屋が並んでお店を開けていた。


「予想はしてたけど、営業時間はないようでよかったよ」

 仁井くんが安堵の表情を浮かべながら店内を見渡す。


 防具屋の店内はランタンの明かりだけで薄暗い。

 中央に大きなテーブルが2台あり、壁一面に棚が並んでいる。しかし、棚は空っぽで中央のテーブルにも、1台分しか商品が並んでいない。


「商品少ないね」

「買い物したら物が増えるとかじゃないか? それより、サイズはこれしかないのか? 俺だと入らないぜ」

 陣内くんが手に持っている服は朱莉なら入りそうだが、二番目に小柄な私でも入らないだろう。


「サイズは買うときに調整してくれるらしいよ」

「それも攻略サイトの情報?」

「そうだよ」


 仁井くんと少し話していると、朱莉に袖を引っ張られて日菜乃が待つ店内の隅に移動する。


「下着あったぁ?」

「ここにはないみたい」

「しかもここの商品さ、装備品しかなかけんインナーも高かよ」

 一番安い初期装備と同じ服で250リンもする。


「試着だけでもしてみるぅ?」

「さすがにそこまで元気ないよ私……」

「あぁ、ゆきちゃんは魔力不足でしたなぁ」

 よしよしと朱莉が頭を撫でる。


「雑貨屋がないか探すか?」


 フィッシャの街で買ったリュックは雑貨屋にあった。そこに世界観崩壊のカラージャージが売ってたのを思い出した陣内くんが、雑貨屋を提案する。


 しかし、目につくお店に片っ端から入りたい私たちと目的の雑貨屋以外に行きたくない男性陣でイニシアチブを奪い合いながら雑貨屋にたどり着いた。


「疲れたぜ。お嬢さんたちはふらふらしすぎだって」

「二軒しか寄り道してなかやん」

「一軒一軒が長すぎだよ……」

 二軒しか見て回ってないのに、陣内くんは疲れきっていた。


 私たちは道具屋と手芸屋に立ち寄った。道具屋は瓶に入ったHPやMPを回復するアイテムに、ロープや麻袋があった。期待した手芸屋は、布や糸に針はあったが完成品はなかった。



「あ、下着発見」


 雑貨屋の暗い店内で、朱莉が小声で話しかけてくる。

 雑貨屋は木造三階建てになっていて、1階はカウンターにNPCがいるだけで、商品は何もなかった。2階はランタンやスコップにシャベルにロープやツルハシ、麻袋など採取に使えそうな道具が置いてあった。

 そして私たちは3階で待望の衣類を見つけた。


「3階は布製品がメインみただねぇ。ついでにタオル発見」

「ここで買うしかなかよね?」

「そうだね。先に他のものを買って帰りにお金貰ってくるね」


 3階でフェイスタオルとカラージャージ、靴下にインナーと布袋を買った。

「これで残り1120リンかぁ。ジャージ安かったね」

「1着100リンやったもんね」

「あーえーと……そのさ、仁井くん。女性陣だけで買いたいものがあるからお金少し分けてくれない?」


「あぁ、気が利かないでごめんね」

 察してくれて嬉しいやら恥ずかしいやら、仁井くんから貰った500リンを持って下着を買いにいく。

 上下セットで一人50リンとジャージよりも安い下着を3日分買った。

 男性陣も私たちのあとに下着を買ったようだ。


 買い物も一段落して、皆で風呂屋へ行く。

 風呂屋は平屋の石造りの建物だ。受付で6人分の60リンを支払い、脱衣所に向かう。


「相変わらず暗いねぇ」

「やっぱりアレ欲しかね」

「アレね……」

 日菜乃が言うアレとは、雑貨屋の2階で見つけた『魔力ランタン』だ。

 魔力持ちの私が魔力ランタンに触れると、LEDライトくらいの光を発した。燃料はランタンに込められた魔力を消費するらしく、魔力さえあればずっと使っていられる。

「3000リンは高いよね」

「やね……」


 うすぐらいなか私たちは服を脱ぐ。


「やっぱり二人とも変な体なんだね」

 二人の体を見渡す。小さい頃によく遊んだお人形の様な体つきをしている。


「きちんと再現される方が嫌ややん」

「触った感じは変わらないよねぇ」

 タオルを持って湯船の扉を開ける。


 むっわと浴場特有の湿気が歓迎してくれる。


 浴室にもランタンが吊られていたが、ほとんど真っ暗でなにも見えない。手探りで洗い場を探すが、浴室の真ん中に木で作られた大きな桶があるだけで見つからない。

 どうやって足しているのか分からないが、中央の桶からは常にお湯が溢れている。


「もしかしてこれが浴槽ないのかな?」

「洗い場なかね」

「石鹸もシャンプーもないよぉ」

 体をお湯だけで洗い流し桶の中に入ると、ざっぷんとお湯が溢れる。



「…………」

「…………」 



「いいたいことわかるよ二人とも……」



 浴槽と思って入った大きな桶は底が非常に浅かった。

 お腹までがお湯に浸かるくらいで、肩までは浸かれそうにない。


「もしかしてさぁ……。体を洗うだけの場所なのぉここってぇ!」

「浴槽どことよ? 何でお風呂なかとよ! お風呂屋じゃなかやん!」


 浴室ないを探し回ったが、結局浴槽を見つけることはできなかった。


 お風呂の造りに不満があるが、体も髪も洗うことができたし、新しい服にも着替えることができてやや満足だ。


 お風呂屋の外には、すでに男性陣が待っていた。真っ暗な通りを湯冷めしないように急いで帰る。


「ドライヤーがないから髪が濡れたままで寒いよぉ」

「すっきりしたからよかったけど、寒いね」

「そうやね、うちも寒かもん」

「お姉さんが、暖めてあげましょう」

「誰がお姉さんとね」

 少しでも寒さをやわらかげる為に、日菜乃に抱きつく。反対側には朱莉が「私も私も」と言いながら抱きついている。


「明日はお昼に1度村に戻ろうと思うけどいいかな?」

 仁井くんがこちらを振り返り明日の予定を話す。どうやらお風呂の中で男性陣で、ある程度話し合ったようだ。


「毛皮売る場所探すのぉ?」

「それもあるけど、いい加減ゲームシステムを確認したいからね。僕たちは宿がなかったからなし崩し的にここまで来ちゃったけどさ、本来ならもっとレベルが上がってくる場所だった可能性もあるからさ」


 確かにその通りだと思う。

 パーティーを組むことでスロットが1つ貰える。

 そして、2つの職業を鍛えてから村に到着で3つ目のスロットが貰えると考えると、私たちはかなりの数のイベントを飛ばしていることになる。


「だからもっと情報収集含めて他のプレイヤーとも交流を持ちたいと思っているんだよ」




 ゲーム開始から3日目が終了しました。

 今回は村の雰囲気を楽しんで頂けたら幸いです。


 お話のカットが難しかったので、明日はお昼と夕方の2回投稿します。

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