罪悪感
遅れて大変申し訳ございませんm(_ _)m
これからも不定期更新が続くと思いますが
それでも良ければどうか見てやって下さいm(_ _)m
「しっかし広いなぁ〜宇宙船ってもっと狭いイメージだったけどなぁ」
[この船は中型艦に属していますので、それほど広いわけでは無いですよ、まぁ宇宙開拓期は地上から船を飛ばしていたのですから仕方ないことです。]
そういって翔は、戦闘ドローンがあった場所から、ブリッジに上がる為の通路を進んでいた。
「いや、それにしても広すぎるだろ、トラックでも通れるぜ、これ。」
そうやって、2車線分の幅はありそうな通路を見回してつぶやく。
[小型艦でも充分すぎるくらいの量の設備しか積んでませんからね、ただこの船の機関部である反物質生成炉だけ、極端にサイズが大きいため、中型艦になった訳です。そのため、ただでさえ小型艦のサイズでも余っていたスペースが、中型艦なったお陰で10倍程そのスペースが膨れ上がり、こうやって無駄に大きい空間になっているという訳です。]
「中型艦って言うけどさ…こんな船と呼べるかも怪しいテッシュ箱が未来では飛んでたのか?もっとこう…船!みたいなのはなかったの?」
[ティシュ箱?・・・・あぁ確かにそう見えますね、まぁ偽装を目的に作られたので仕方ないかと、費用面のこともあったようですし。]
自分の手元にティシュ箱を出現させて納得しているフブキに脳内だと何でもありだな、と感じていた。
[勿論、こんなものは偽装目的でも無ければ作られることは無かったでしょうね、一応特注品ですよ?この船。]
「コレが?てゆうか結構大掛かりな計画だったのか?俺をもう一回冷凍睡眠するってやつ。」
[はい、研究の樹の創始者からの遺言でしたので、組織全体を挙げてのプロジェクトでしたよ、まぁ面白がっていた節もありましたがね、自分の最高傑作を未来に残す!と。]
「すでに物扱いかい…そういや、フブキを埋め込んだやつもそんな感じで張り切ってたの?」
翔が尋ねると、フブキは今まで持っていたテッシュ箱を消して答えた。
[ええ…博士が1番張り切っていましたね、なにせ3桁を越える失̆敗̆作̆を生み出しながら私を埋め込んだのですから。]
それまでのんびりと歩いていた翔の足が止まる。
淡々と話すフブキに翔はさっき話していた事を思い出した。先ほどまで明るく振る舞っていた翔だが、それはあまりにも突飛な事の連続で理解が追いついていないだけであった。だがそれも徐々に理解していく、そして理解してしまえば分かってしまう、自分が何百、何千という生命の上に立っていることに。
「あーくそ、やめだ、やめ。考えがどんどん暗い方に行っちまう。もうその話はやめてくんねぇか?気にしたってしょうがねぇよ…………」
いつも道理の明るい口調ではあるが、その声にはまるで明るさが感じられなかった。こめかみに手を当て、またゆっくりと歩き始めたが、その足取りは重い。そんな彼に彼女は気づいていないのか、限界ギリギリの精神を追い詰める。
[そうですか?あくまであの数字は私を埋め込んだ時に犠牲になった被験者の人数ですので、総合的に見ればそれの何倍も「その話はもういい!!!」……失礼しました。]
考えないようにしてもどんどん思考が暗い方へと進んでいく、手に力が入り、彼自身でも気付かぬうちにどんどん早歩きになっていく、まるで何かから逃げるように。
(くっそ、違う!俺は何も悪くない!悪くないんだ!ただ…ただ巻き込まれただけなんだ!)
通路にしてはあまりにも広い空間をコツコツコツコツと小さな足音だけが響き渡る。それが余計に彼が1人であることをいやでも認識させる。
自分自身を追い込んでいる翔だが、彼もただ狂った科学者に目をつけられ拉致された他と変わらぬ被験者の1人に過ぎなかった。そんな中、彼の生命を繋いだのは皮肉にもその科学者の遺言だったのだ。そして、その事を幸運だと思うだけで済ますことが出来るほど強いメンタルを持っている訳では無い、目覚めた当初こそ状況確認が追いつかず、彼の明るい性格で気丈に振る舞うことが出来たが次第に心が追い付いてくる。
(悪くない悪くない悪くない!悪くない!!悪くない!!!悪くない!!!!)
[落ち着いてください!!そのままでは自分で自分を追い込むだけです!!]
突如頭に響いた大音量の声に思わず、いままで動いていた足が止まる。その声は今までの無機質な声とは違う感̆情̆の入った声だった。
彼が落ち着いてきたのを見計らい、フブキは優しい口調で語りかけた。
[その通りです、翔さんあなたは何も悪くない。悪いのはあなたを拉致した創設者であり、その他大勢の人間を実験で殺した我̆々です。…私が言える立場ではないのかも知れませんが、自分をあまり追い込まないでください。私達はまだ生きています、過去の事より、今を見ましょう?]
「でっ……も…… あぁ…… そうだな…うじうじしててもしょうがねぇよな、どうせ前向くしかねぇんだしなっっと!」
気合いを入れるように頬を叩いて、また歩き出す。その顔には先ほどとは違い、前を向こうとする意思が宿っていた。それを感じたフブキも、彼が吹っ切れたことに安堵していた。