フブキ
「・・あーなるほどね、オーケイ分かったよ。」
[おや?以外ですね。また狼狽するかと思っていたのですが。]
「ははっ、もう予想外なことが起きすぎて、耐性がついちまったよ...さてっと・・どうやって抜け出せんの...あっ開いた。」
ガコンという音がなり、目の前を覆っていた材質不明の板が横にスライドした。上体を起こした翔が目にした光景は、いかにもSF映画に出てきそうな真っ白な壁、明るい空間、そして壁に取り付けられた透明なアクリル板からは真っ黒なキャンパスに明るい点が無数に散りばめられている宇宙が見えた。
「あの野郎の言ってた通りか、それにしても...」
なんか身体おかしいんだよなぁ・・
翔がつぶやくと彼の中のAIが素早く反応する。
[あぁ、それはそうでしょう。貴方の身体は臓器以外の殆どが弄られてしまっているのですから、むしろ違和感程度で済んでいることに驚きです。]
「・・・マジ?」
[ええ、マジです。貴方の時代の言葉の合わせるとサイボーグですね。]
「うぇー・・でもそう考えると恐ろしい程に違和感ねぇなー・・よっと・・こんなに馴染むもんなの?」
その場に立って自分が永く眠っていた場所から抜け出して手首、足首をくるくる回している翔がそう尋ねる。
[私も詳しい事はわかりませんがおそらくコールドスリープの仮死状態が長かった為かと、私との拒否反応もありませんしね。]
「なるほどなー・・拒否反応?」
[身体に異物を定着させようとした時に起こる反応です。人工の皮膚を定着指せるだけでも起こるものですから、人間の中枢である脳神経系に定着させようとするなら、その難易度は跳ね上がります。]
「えっ、でもそこは未来の技術で何とかなったんだろ?俺がここにいる訳だし。」
[私の名称を覚えていますか?No.32です。私の前に31例、実験結果がありますが全て、拒否反応により失敗しています。また、これは実用段階に入ったあとの数字ですので、この実験で犠牲になった方々は2桁では収まらないと思います]
真顔で淡々と恐ろしい事実を述べる白髪の美女を他所に翔は自分がいかに危ない橋を渡っていたかを実感していた。
「・・・つまり俺はものすっごい運が良かったわけか。悪運かもしんないけどな。はぁ〜受け入れるしかないよなーその人達の為にも。」
[私もお手伝いさせていただきますよ、これからよろしくお願いしますね翔さん。]
「うん、よろしくAIちゃ・・んんっやっぱ言いづらいな・・何か名前決めようか?どんな名前がいい?」
[名前?それは人間だけが使うものでしょう我々のような物̆がそんなことを・・]
「俺が呼びたいからいいの。・・んーーよし!決めた。」
「君の名前はフブキだ。真っ白な髪からそう名付けたんだけど・・どうかな?」
[フブキ、フブキですか、フフッ、素敵な名前をありがとうございます、翔さん。]
そうして笑ったフブキの顔は今までのどの表情よりも魅力的に見えた。