自立型AI A-HMN No.32
翔が目覚めたのは、酸素カプセルような物の中だった、
「うっ、キッツ...ダルい...ここどこだ?」
拉致された時にいた鉄の棺桶の様な場所ではなくカプセルホテルの一室のような所で身をよじらせ、呻いた。
[ようやくお目覚めですか、 荒川 翔さん。]
頭の中から単調な女性の声が聞こえてきた。
「うわっ!ど、どこから!」
[ここですよ。]
すると、翔の視界の右下に四角い真っ暗なディスプレイが現れた、そこに写っていたのは、とても美しい白髪の美女だった。
「え?な、なんで俺の視界に...それに、声も...テレパシー?」
[仮にも女性にその反応はないと思いますが、まぁ仕方ないことなのかもしれませんね、]
やれやれとゆう、しぐさをみせる女性
そのしぐさだけでも、男性の目を引きつける魅力があるのがわかるが、ひたすら単調な声が人間味を薄れさせていた。
[初めまして、荒川翔さん、私は自立型AI A-HMN型 No.32です。よろしくお願いしますね。]
ディスプレイの中でAIなるものがお辞儀する。
「•••よし、落ち着こう、あの野郎が見せた幻覚か?それとも俺はもう、死んじまったのか?」
「心拍数が全く変わっていませんよ荒川翔さん。あと、ここは間違いなく現実ですし、仮死状態ではありましたが、死んだという事も有りません。]
「•••ふぅー、夢じゃあないよな、それで自立型AIちゃんはどうしてテレパシーみたいなことが出来るのかな?」
[簡単なことですよ、貴方の脳内に私が移植されたのですから、あなたの視覚情報を使う事も、聴覚情報を使って声を届ける事も、神経に直接送っているだけです。]
[左のコメカミ辺りを触ってみて下さい、硬いでしょう?それが私ですよ。]
美女はニコニコしながらそう言った。
「えっ?は?ウソだろ、ど、どうやって?」
コメカミを触るその手に伝わる感覚は人肌を触っている感覚とはかけ離れていた。
[むきだしになっているわけではありませんよ、ちゃんとコーティングしてある筈なので、人に会ってもそう問題にはならないかと。もっとも人類が存在しているかどうかは不明ですがね。]
「う、ウソだろ?こんな小さいのに君が?」
[ええ、その厚さ1センチ縦横約3センチの機械が私の根幹です。]
「俺らの時代で、そんなこと・・あぁコールドスリープか、未来の技術はやべーな。」
[私たちはいるのはその未来よりさらに進んだ未来ですがね。あなたが言う未来の技術は恐らく、今では骨董品レベルかと。]
えっ?それって?と翔が呟くと彼の視界の右上に移動した彼女はこう続けた。
[あなたは私を移植させられ、肉体改造を施され後、貴方の言う未来の技術によるコールドスリープを再び受けたのです。いつまで眠っていたかは分かりませんが、博士が言うには、2万年まではなんとか持つらしいですよ。]
彼の視界の中で、またニコニコしながら彼女はそう言った。