Prerequisites [iv]
※なろう投稿システムの練習中です。内容や話順は予告なしに変更される場合があります。
さてそろそろ説明することも減ってきたかなー(笑)
“戦闘システム担当・K氏:ええ、(新作には)どうしても純正のQS2が必要になりますね、アップデートキットをお使いの方には誠に申し訳ありませんが……”
――QualiaStation情報専門誌「QSマガジン」 恒例の開発中タイトル紹介記事、
「開発はいよいよ佳境に?開発スタッフが語る『(仮称)第三法則世界物語』の魅力とは」対談パートより
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『で、次のコードネームどうすんべ?五人組ネタも今回でお終いやろ』[催促]
うへ、早速聞いて欲しくないツッコミが入ったよ。つーかご丁寧にエモ(ーション)乗せやがってうぜえ。エモ体感オフにすっか。
「うっせ、ただ今鋭意検討中」[前向きに検討]
『ちっエモ切りやがったしw』[舌打ち](非体感)
『拒絶の意www』[草生える](非体感)
ああ、これはどうも申し遅れまして。ここはVEゲームの世界・キャラクターとまだクオリア接続をしていないプレイヤーが屯する場所、所謂ロビーってやつですな。例によって何時もの面子とつるんでテンペスツに接続してきた帰りに分隊、というかパーティ内でのプレイヤー間チャットでデブリーフィングという名の雑談に興じているってところ。
『まあ、ログ晒しでも散々ネタにされてっから今更止めるってのもなあ……』[溜め息](非体感)
ここテンペに限らず、VEコンテンツ上でのチャットでは大抵投稿する短文や音声にエモーション、ああ、エモーティコンじゃなくて――定型化かつかなり抑制されてはいるものの――クオリアを伴う、文字通り本物の感情を添付することができるのだが、絵文字やエモーティコン同様――あるいはそれ以上――に過度な、あるいはTPOを弁えない使用が忌避されるのは言うまでもない。つーかコネクト明けで疲れた頭にはマジうざいです。
『てゆーか全員キャラ外人なんだしさ、もうアーノルドとかエマニエルとかで別によくね?』[投げ遣り](非体感)
『あに言ってんだよてめー?』[顔だけの冗談](非体感)
まあそりゃそうなんだがそうあからさまに思考停止されてもな……ん、おお、何かきた来たキター、閃いたぞー!
「よーしわかった、じゃあ次はお前エマニエルな、で俺チャタレイにするわ、異論は認めんw」[ドヤ顔]
『ちょwwwそっちかよwwwエロスwww』[草不可避](非体感)
『あんたマジ頭おかしいwwwさすがウチらのリーダーwww』[褒め言葉](非体感)
『エロ系夫人かよ……くそ、思い付かねえwww』[絶望](非体感)
『ダロウェイとかワトソンとかいるだろ、全然エロくないけどなwww』[指摘](非体感)
「つー訳で君ら残り三名は次まで各自ネタを考えてくるようにw」[命令]
ふう、何とかリーダーとしての威厳(笑)を保つことができたようだ。こうやって何時ものように気の合う――しかし居場所も本名もまるで定かではない――仲間たちとの和気藹々とした一時が変わらず過ぎていく――はずだった、その時までは。
『なんかまた近いうちにCBT始める新作出てくるっしょ、応募しようぜ』[ネタ振り](非体感)
『俺は純正QS2専用コンテンツを選ぶぜ!』[折角だから](非体感)
『なら第三法則なんとかってのがよくね?ここと開発・運営同じらしいし、無駄に垢増やさずにすむしな』[提案](非体感)
おい、なんか今聞き捨てならない言葉が出たぞ……
「ふぁっ、QS2専用とかどういうこと?」[詰問]
『ついこないだ解禁したみたいっすよ、QSマガ(ジン)特集組んでたし……もしかして見てない?』[今更](非体感)
「……何、だと……」
『エモ忘れてら、いや驚き過ぎっしょwww』[ツッコミ](非体感)
『ああ、そいやあリーダーはアプデキット組なんでしたっけ?』[すっとぼけ](非体感)
ああ、いやさ、俺だって「(仮称)第三法則世界物語」だっけかの新作が開発中だってのは知ってたさ。ただそれが純正QS2専用、つまりQS+アップデートキットに非対応だってのを知らなかっただけだし。くっそ、持ってないからとQSマガジン速報版の配信対象記事から純正QS2を外していたのが裏目に出たよ、道理でそれの続報・詳報がさっぱり届かない訳だ……
『んんwwwWeb版はもう要約されているようですなwww紙を見る以外ありえないwww』[役割論理的](非体感)
『ねぇねぇ、開発元からハブられちゃってるけど今どんな気持ち?』[NDK?](非体感)
「おwまwえwらwwwクソが、ちょっと本屋逝ってくるっしゅw」[遁走]
『乙、逝ってらーwww』[生暖かい目](非体感)
《SYSTEM:(個人情報保護のため検閲済)さんがログアウトしました》
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諸行無常なのは別に花の色に限ったことではなく、よろず民生品は上市されたその瞬間から身内や競合製品との競争に晒されれば、多かれ少なかれ進歩改良も齎される。画期的な、あるいは最先端のと盛んに称揚された新製品も何れは陳腐化の憂き目を見ることは避けられず、それは主人公の所有するQSも例の外ではありえない。
(QSマガジン雑誌版・最新号……くっ、「総力特集:ついに解禁!純正QS2専用コンテンツ!」だと……)
VS技術の大衆化と市場の開拓を目論み、普及初期のVEコンテンツを実現するに必要十分な機能と個人所有・利用を前提とした大胆な低価格化を実現した業界初の製品としてソークァル・メンターテインメント株式会社 (SoQual Mentertainment, Inc.、SQMI社) がQSを世に問うてからそれなりの時間が過ぎた現在、追随する同業他社を突き放すべく次世代機QualiaStation2を市場に投入したのが今から凡そ二年ほど前。
(「解き放て、QS2のポテンシャル!再確認せよ、旧世代機とはここまで違う!」……)
将来を見据え大幅に処理能力に余裕を持たせた改良版「リコール・エンジン」──QS並びにQS2の主要機能を司る中枢部の愛称であり、精神と娯楽の鞄語を社名に掲げる同社の矜持から、古典的な某有名SF映画に登場し同様のサービスを主人公に提供する娯楽企業の名前に肖ったそれ……縁起でもないとの意見もあるが大規模な無償修理交換は今のところ無し──を標準で二系統搭載し、加えてQSではコスト削減のため大幅に簡素化されていた環境副情報──クオリアの補助やユーザーインターフェースとして利用者の耳目へ直接送られる視聴覚情報──提示機能を今時のAV専用機器並みに引き上げた点がQS2の大きな特徴であり、そしてそれに合わせるようにVEコンテンツ市場にはQS2対応を謳うものがそれなりの数揃いつつある。
(「一番乗りはやはりビリーフィア!『(仮称)第三法則世界物語』思わせぶりなそのタイトルにライターFも興奮を隠せず」……)
しかし、今まではとある理由で「純正QS2専用」と銘打ったVEコンテンツは皆目出てこなかったのだ。そう、今までは……QSユーザーへの救済策としてQS2搭載品と同一の改良版リコール・エンジン──ただし一系統のみ──とQS2に「準ずる性能の」環境副情報提示機能をQSに追加するアップデートキットを併売することがQS2の発表と同時にアナウンスされるや、その発表の席でSQMI社の偉い人が「純正QS2専用コンテンツを『当面の間』は認めない」と発言したのがその理由であるとされ、さてその真意は奈辺にあるのか──改良版リコール・エンジンの歩留まりが芳しくないだの、既存のQSユーザーへ一定の配慮を示した結果だの──が当時様々な憶測を呼んだのは未だ記憶に新しい。
(「開発スタッフが語る衝撃の真実!『テンペスツ』は『(仮称)第三法則世界物語』のプロトタイプに過ぎない!?」……おい、そりゃねーだろ……)
そしてQS2とQSアップデートキットが恙無く併売され、QS2対応コンテンツと旧コンテンツとが市場で平和裏に共存するに至って、主人公を含む大多数のQSユーザーは「当面の間」とは何時までのことを指すのか誰も深く追求しなかったのであった。要するに、詰まる所SQMI社の上層部にとって「当面の間」とは約二年間だということらしい。
(「VEMMOの中核たる個人・パーティー戦闘行動エンジンとして『テンペスツ』を拡張して採用、一戦闘区画内で最大PC64名・NPC256体が同時戦闘可能!『これが純正QS2専用となる最大の理由(戦闘システム担当・談)』」か……ふっ、すっかり「井の中の蛙」気取りだったわけだ、俺は……クソっ……)
そう、これは夢ではありません。これが現実、これがっ、現実っ……
(はっ、ははっ……コネクトとか、してもねーのに、世界がっ、ゆがんでっ、見えるっ……くっ、クソっ……クソがっ!……)
* SoQual®, SoQual logo, QualiaStation®, QualiaStation 2®, QS and QS2 logos are registered trademarks of SoQual Mentertainment, Inc. Recall Engine™ is a trademark of SoQual Mentertainment, Inc.
** ToTTLW®, "Tales of The-Third-Law's World®", and "Reality Has No Logout Menu®" are registered trademarks of Beliefia Productions, LLC. "Tempests Episode I: The Obvious Menace™" is a trademark of Beliefia Productions, LLC.