夢の行方(50行小説)
夢は記憶。過去。願望。無意識の思い。
人は生きながらに何かを思い、思った先でもし、たら、ればと考える。
あぁすれば良かったのに、こうすればあんなことには。
ボクは両手でかき集めた夢を一緒くたに混ぜる。ヘラを使って料理をするみたいに。
混ぜて、混ぜて、ひたすら混ぜて。
最初に何が入っていたのか分からなくなるくらい混ぜ込む。
数多の願いが、色の違う砂粒達が混ざり合う。
混ぜていると色が赤、青、緑と変わって、最後には必ず夜色になる。
澄んだ黒い液体にたくさんの光が瞬く。
光っては消えてを繰り返し。新たに生まれた光は生命の輝き。
輝いているのは誰かに気づいてもらうため?それとも誰かを導くため?
こっちにおいで。あっちはダメだ。そっちに行ってはいけないよ。
夢であった”それ”は混ざり切って、いつしか一つの【箱】に変わる。
【箱】の中身は外からじゃ何も見えない。見通すことができない本当の黒。
その【箱】をボクは持ち上げて、頭上に投げる。
パァァァン!!
ガラスが割れたような、鈴が鳴ったような不思議な音色。
投げて、そして落ちてこない【箱】。
きっと中身が飛び出して、行きたい場所へ向かったのだ。
もしくは空気に溶けて散ったのかもしれない。
どうなったのかは知らない。ボクの役目は混ぜて、投げて、祈るだけ。
「思えば叶うよ。諦めないで」