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吸血鬼の贄姫  作者: 黄原凛斗
即興Ver
4/34

執着される

お題:裏切りの爆発 制限時間:15分  お題とかもう、なんのことかわかり……ごめんなさい

 久しぶりに、彼の――リヒャルトの顔をこんなに近くで見た。

「ティニア……? 君は僕を捨てる気だったの?」

 捨てるも何も所有者だった記憶はない。むしろ彼が私の所有者なのに。

 この押し倒された状況で願うことはこのまま血を吸ってくれればいいのにと、毎度願うけれど叶わないこと。

 いっそ、彼を徹底的に怒らせたら殺してくれるかもしれない。

「捨てるというか……貴方に飽きたので」

 全く本心にないことだがそれを聞いた瞬間の彼の表情はぞくりとするほどに恐ろしいものになった。久しぶりに彼が吸血鬼でも力を持つ伯爵であることを思い出す。

「へぇ……ティニアは僕を裏切るの? 裏切って他の男のところでも行く気? 日の下にろくに出れない、僕がいないと死んじゃうような眷属もどきなのに?」

「……いいですね。それも私は生きたかったけど長く生きていたかったわけじゃない」

 貴方に生かされて、老いない身体になって、早く死にたいと願ってしまった。あんなにも生きたいと願っていたはずなのに。

「貴方は私を餌として見てくれない。いる意味もないのですから――」


「じゃあ、人間駆除しないとね」


 いつもと同じ穏やかな表情で彼はそんなことを言ってのける。冗談じゃない、これは本気の目だ。

「君を誑かす人間がいるなら殺す。可能性があるから男は全部殺す。そうしたら君は僕のところにいるしかなくなるよね? 君は結構寂しがり屋だから」

 彼にとって人間はただの餌で私を取る害虫程度の存在。それなのに彼は元人間の私を愛してくれてる。この矛盾はいつまでも解かれない。

「ねえ、ティニア。君が僕を裏切るなら屋敷のやつらも全員殺しちゃうよ? 嫌だよね、ティニアは優しいから」

「……貴方がさすがに屋敷の人間まで殺せるほど冷酷な方だと思えませんが」

「殺せるよ、君を手放さないためなら」

 私の存在は一体、彼にとってどれほどのものなのか。

 私の望みと彼の望み。お互いに叶えられないと知っていてもお互いに縋るしかない。そんな歪な関係はいつまで続くのだろうか。


「愛してるよティニア。裏切らないでね。愛してくれなくてもいいから」


 彼の心が爆発するには私の行動次第。それは恐ろしいと思うと同時に心地よいとすら感じるのだ。

 彼の束縛を受けられて、執着される。けれど、一番の望みは叶えてくれない彼。


「裏切りませんから、どうか早く私を吸い殺してください」


 どうか、どうか早く――。

 あなたの牙で、私の血を吸い尽くして……殺してください。


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