表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼の贄姫  作者: 黄原凛斗
3章:従妹姫の怒り
27/34

4話:叫び





 目の前に広がる光景は焼けた痕の残る家たちと、自分以外に誰もいないであろう寂れた記憶にある村。

 贄にされた後のことを知らない。だから、もしかしてとは思った。


「……これは、あの人のやったことなの?」


 死体はない。代わりに墓とでも言うように墓標が建てられている。それはいったいどれだけの死体なのか――。






 時間は少しだけ遡る。

 目を覚ましたのはどこか見覚えのある森。しかしすぐ近くに村のようなものが見えるため森で迷うことはないだろう。しかしそれよりも自分がなぜここにいるのかが問題だ。

「風……」

 風に攫われたと偽り無いことだが風が自然現象とは思えない。とすれば誰かの陰謀か。

 ようやく森を抜けて村へとたどり着いた。

 そう思っていたのに――


「……これ、は」


 この景色を私は知っていた。小さい、本当に小さな村で毎日が平凡に過ぎていく貧しい村。けれど、家が焼けたまま放置されることはない。

 ましてや誰も住んでいないことなんてあるはずない。


 かつて自分の住んでいた村は完全に崩壊していたのだった。


 ふと、視界の端にまるで墓のようなものが映った。近づいてみるとそれは墓標なのか粗末なものでここに眠る、とだけ書かれていた。その字を私は見たことがある。

「リヒャルト、様……」

 もし、村人たちが何者かの襲撃によって全滅したのだとしたら? それが人外である吸血鬼だったとしたら? 無力な彼らに抗う術はないだろう。

「……これは、あの人のやったことなの?」

 その呟きに応える声が背後から飛んできた。

「そうよ。貴方の主であるリヒャルトがやったことよ」

 見覚えのない姿だった。

 明るく長い金髪で癖がある。青い目はまっすぐと自分を見ていて可憐さな顔はまるで嘲笑うようなそんな表情。装飾華美なドレスは貴族のようで真っ先に思いついたのが吸血鬼関係だった。

「……貴方は?」

「私はリヒャルトの血縁、とだけ言っておくわ。それよりも、これを見てどう思う? 無実の人間が殺戮された様を」

 両手を広げて村の参上を見せつけるように彼女は言う。

 何もかもが壊れたこの村を見て言えること。それは――


「……いい気味、ですね」


 自分でも気づかないうちに笑みを浮かべていることに気づく。とても楽しそうな自分の声音と笑顔に彼女は驚愕していた。


「どういう意図でここに連れてきたかは知りませんが私が言えることはひとつだけです。なんていい気味なんでしょう! あいつら全員死んだのかと思うと嬉しくて仕方ない! どうせ誰も私のことを好きな人なんていなかったもの。罪のない人? 贄の犠牲者見殺しにしてる時点で誰も無罪なわけないんだよ!! はっ、ふざけんな偽善者どもめ! いい気味だよ本当! いったいどれだけ苦しんで死んだんでしょうね? きっとリヒャルト様のことだもの。じっくり嬲るように殺したんでしょうね! 死に間際の村長はなんて言ったのかしら。命乞いでもしてくれたかしら。ああ……贄なんてくだらない習慣を続けてる低脳どもが消えてくれたのかと思うと本当に嬉しい!」


 久しぶりに心の底から喜びの思いを発散する。どうしようかこの思い。溢れ出る喜びを。

「な、なんで……? 普通人間なら恐れ慄きリヒャルトのそばから離れたくなるでしょう!? よ、喜ぶって――」

 何を言っているんだろう彼女は。


 私は元々陰気で最悪な女だっていうのに。





時間が空いたにもかかわらず対して話進んでいなくてごめんなさい!そして恋愛小説なのに恋愛にならないのはいつものことですごめんなさい。

ちゃ、ちゃんと恋愛になる、予定……ですよ……?(震え声)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ