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吸血鬼の贄姫  作者: 黄原凛斗
3章:従妹姫の怒り
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1話:吸血鬼の焦りと従妹姫

 愛する僕の眷属。愛する僕だけの贄姫。

 お願いだからどうか愛を恐れないで、受け止めてくれないか。


 君が愛を怖がるのも、僕を受け入れてくれないのも、あの男のせいだってことはわかっている。

 だって君は悪くないのに。

 あの男のせいで君はとても臆病になってしまった。それを悪いこととは言わないけれど、僕はとっても寂しいんだ。だからどうか僕の気持ちは真実だって気づいて。

 君を捨てたりしないから。君が拒んでも手放してやるもんか。

 もちろん、君がずっとそばにいてくれるなら結婚なんて必要ないし君が望むならなんだって叶えてあげるから。


 だからどうか、愛を恐れないで。

 僕を見て。








「クズ二匹はどこにいる……?」

 リヒャルトは水晶に手をかざしながら念じるが水晶は何も映さない。

 彼が探しているのはある二人の人間。

 死んでいるのかとも思ったが死んでいるならば【死亡済】との表示が出るはずなので生存はしているのは間違いない。

「今日も収穫なしか……」

 そう呟くとリヒャルトは水晶を置いて机にある書類を手にとった。

 それに一通り目を通すと深いため息をついて顔を歪ませた。


 時間がない。


 どちらのこともティニアに関することでどちらもあまり時間は残されていない。

 ティニアは確かに眷属になった。それは間違いないが正しく眷属化できていないマガイモノだ。

 そのため老化は止まったかもしれないが寿命が人間並みかもしれない。オリバに頼んでおいたティニアの体の調査をまとめた書類には次のようなことが書かれている。


『人間並みの寿命であることは可能性としては十分あり得る。そして、眷属としての役割を果たしていないのならば寿命は早まる可能性も考えられる。なお、睡眠が長時間に及んだり食欲が異常だとすればそれは間違いなく寿命が縮まっているとみて間違いない』


 最後の一文に心当たりがあるせいでいらだちばかりが募る。どうにかしてマガイモノではなく正しい眷属にさせられるのか。そして寿命をのばす方法はあるのか、そればかり頭に浮かんでくる。


「君だけがいればいいのに……君は僕の前からいなくなるんだね」


 たった一人の部屋でリヒャルトは呟く。

 そんなことあってたまるか。何が何でも絶対に手放さない。


 そんなことを考えているリヒャルトの思考を吹き飛ばしたのは彼にとっては聞き覚えのある女性の怒声だった。


「リヒャルトおおおおおお!! 説明しなさい!!」


 突如として静かだった室内に入ってきたのはいかにも高そうな布を贅沢に使ったリボンやフリルのドレスを身にまとった女性。髪は明るい金髪を肩より下まで伸ばしており、髪質なのか癖があるようだ。青い目はリヒャルトに忌々しげに向けられていてせっかくの可憐さが台無しになている。

「……え」

 リヒャルトはその姿を見てダラダラと変な汗が流れ落ち間の抜けた顔で女性に言った。

「な、なんでいるんだよ……」

「聞いたんだから! 婚約破棄ならともかく魔王候補辞退するってどういうことよ説明して!!」

 胸ぐらをつかみあげ揺さぶるその様子はとても服装に合っていない不良のソレだった。

「と、とりあえず落ちつ――」

「落ち着けるわけないでしょこの馬鹿従兄!!」


 彼女、 ネグル・アストルロダはリヒャルトの幼馴染であり従妹(いとこ)でもあった。

 そして、リヒャルト魔王推薦一派の一族の娘でもある。



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