寒空の退屈
会話が…つまらない…
「それでさぁ、その山本の幼稚園時代がものすごく荒れててさぁ…」
鈴木の幼稚園時代の武勇伝なんてどうでもいいのだ…俺は早く家に帰りたい
この「淡碕」という奴は、どうやら話のタネが「山本」しかないらしい
自分の話をすればいいのに……いや、他人の武勇伝だってこれほど面白くないのだ
彼自身のこれまでの人生が面白いわけがない…だから他人の話をするのであって…でもそれすらも面白く無い、、
一体どうしたものだろう
そろそろマフラーをする人も増えてきた寒い季節
落ち葉を巻き上げる枯れた風が肌に刺さる
「んで、そのとき山本がジャングルジムの上から齋藤に向かって飛び蹴りしてさぁ…」
困ったことにこの男、同じ話を繰り返す
ライダーキックの話を聞くのは2回目
3ヶ月前にも今と同じテンションで得意げに語っていた。
まるで山本が自分自身を語るかのように…淡碕が話しているのだ
・・・あぁ寒い
このように、中学校に入学してからはほぼ毎日、この話題のリサイクルを繰り返している
たまには僕だって話題を出すんだ!
…正直反応が薄い。全く興味のないような素振りをわざと見せてくる
彼が言うには…自分は聞き上手ではなく話し上手…らしい
話し上手…らしい
だって本人が言ったんだ!!
だから…話上手なのだろう…
「もう飽きた」
そう言えば済むのかもしれないが…彼の話している姿を見るとそんなことを言う気にもまずならないだろう
いや、性格上言えなかった
それに、もうこんな関係が3年間も続いているのだ
今更言うこともない…受験まであと……今は11月だから…3ヶ月ちょっとか…
そうすればもう彼と会うことも少なくなる…それで済んでほしい
しかし、あれは本当のことなのだろうか、それともただの嘘なのか…結局考えてもわからなかった
ふぅ……
でも、取り敢えず今日はこれまで通り変わらない流れだったから安心したよ
少なくとも今日ではなさそうだ
…そろそろさよなら、この角を左に曲がれば僕の家、ベッドはもうすぐそこだ
「んじゃまた明日~!じゃあなー!」
「おう!」
淡碕の話を聞くというこの時間も、残り少ない、と彼は言った
僕は未だにそれがよく出来た冗談だとしか思えない、いや…しかし、不謹慎だが信じたいのかもしれない、すべてが嘘だという可能性もやはりあるが…。
もう、だいぶ寒い季節
今日は…早めに寝ようか
部屋の灯りを消した
そろそろ雪も降り出しそうな………そんな淋しいような、悲しいような…彼女でも欲しくなるような……そんな季節だった