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機械は常に最善を――

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/07/11

 

 今から随分先の話である。

 ロボットが当たり前のように闊歩する時代だ。


 そんな時代だからこそ、今よりもずっと技術が先に進んでいる。

 こんな時代だからこそ、今よりもずっと絶望を理解しやすい。

 つまり、よーするに。


「この星には未来がない」


 人々はそう理解していた。

 厄介なことに今より圧倒的に先の時代だから、これが真実であり反論などしようもないことがよく分かっているのだ。

 大地にも深海にも資源はなく、この星はもう滅びるのを待つばかり。

 だからこそ、人々は決心をした。


「あの星に移住しよう。この星によく似た環境の星に」

「そのために宇宙船を作ろう。我々のような優れた人間が乗るために」


 さて。

 こんなロボットが当然のように闊歩する時代にありながら、奇妙なことに働き続ける人間は意外なほどに多い。


 細かな作業はロボットには出来ないから?

 そんなことはない。

 もうそんな段階なんてとっくに通り過ぎているくらいに技術が進んでいるのだ。


 では理由は何か。

 実に単純だ。

 よーするにこれだけ、技術が進んだ時代においても結局人間が捨てられなかった『優越感』のためだ。


 特権階級の人々はロボットと共に必死に宇宙船を作る『働かなければならない人々』を見つめながら優雅に過ごしていた。

 宇宙船が出来るまでにこの星の資源はぎりぎり保たれる。

 これもまた完璧な計算の故、一切の狂いはなかった。

 ――故に、宇宙船の収容人数が星に住む人類を全て乗せられないなんてことは誰もが知っていた。



 *



 さて。

 宇宙船が完成し人々がこの星を去るときがやってきた。

 優雅な人々は今まで働いてきた人々に挨拶と感謝を述べた。


「ありがとう。君たちのおかげで間に合ったよ」

「あぁ。ロボットだけではきっと間に合わなかった」

「君たちが汗を流した分だけ我々は楽が出来た。感謝するよ」

「人類のことは安心したまえ。私達が新たな星で平和に暮らすのだから――」


 これだけ時代がすすんだのに何故、こうも前時代的なことが出来るのか。

 奇妙なものだ。


「では、我々は宇宙船に乗るよ。さらばだ。二度と会うことはないだろう」


 その後。

 些細な諍いがあった後、宇宙船は発射した。

 人々にとっては想定外だったが、ロボットにとっては想定内であったためか実にあっさりと事は済んだ。


 宇宙船の中で困惑しながら人々は問う。


「何故、私たちが宇宙船に?」


 そう。

 宇宙船に乗っているのはロボット達と共に働いていた人々だ。

 ロボット達は何もしなかった者達を引きずり下ろし、実に完璧な誘導で働いていた人々を宇宙船に載せてくれたのだ。


『分かりませんか』


 ロボットはそう言って困惑するばかりの人々に告げた。


『ロボットに管理されているばかりの人間では万が一ロボットが動かなくなった時、滅びるのを待つだけになってしまいますから。総合的に判断し、人類の存続にはあなた達の方が優れていると判断したのです』


 ロボットの完璧な答えに人類は納得をするばかりだった。

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