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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第4章

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85.ロチルド商会での日々

今日から第4章スタートです!


よろしくお願いします!


 卒業パーティーから3ヶ月ほど経過した。


 レティシアはロチルド商会で、休養している。


 ジョゼフの家で過ごした時と、また違う日々にレティシアの心は少しずつ癒されている。


 まだ本格的に働いているわけではないが、書類の整理など細々としたことを手伝っている。


 初めはレティシアが働くことに、特にセシルがいい顔をしなかった。けれど、1ヶ月ほど経ったところで、レティシアが暇だと訴えたのだ。


 何もせずに、周りの人達が働いているのを眺めるのは、変に焦燥感も生まれてしまった。


 何かしないといけない。今までずっと、教育やら亡命準備やら動いていたのに、何もしない日々はレティシアにとってあまり合わなかったらしい。


 そのことを訴えたのは、レティシアだけではない。ロチルド商会の従業員達も、一緒に訴えてくれたのだ。


 レティシアが公爵家にいた時は、クロードとセシルはよく商会にいたけれど、やはり商会長と副会長という立場だ。多忙であるため、常にロチルド商会にいるわけでは無かった。


 だから今レティシアが密に接するのは、今まであまり接してこなかった、ロチルド商会の従業員たちだ。


 皆、レティシアの事情はある程度把握している。今回亡命を一旦取りやめ、しばらく厄介になると言ったときも、暖かくレティシアを迎え入れてくれた。


 勝手に計画を変更したことで、否定的な意見もあるかと思っていたけれど、そんなことは全く無かった。

 

 元々亡命したら、従業員の人達とはもっと親密になりたいと思っていた。レティシアとしては、本当に恵まれているとしか言いようがない。


 そんな従業員の後押しもあり、まずは負担の少ないことからやらせてもらえるようになったのだ。


「皆さん、本当にありがとうございます」

「いいえ! レティシア様が書類整理されると、とても見やすいんです! 感謝するのはこっちですよ」

「そう言っていただけると、とても嬉しいですわ」


 ロチルド商会にいる従業員は、背景が訳ありな人達が多い。だからこそ、レティシアの境遇を知ったら手を差し伸べずにはいられないのだろう。


 これもクロードとセシルの人徳のお陰だろう。


「レティシア様、体調は大丈夫ですか?」


 そんなことを考えながら、従業員の人達とコミュニケーションをとっていると、後ろから声がかかる。


 声をかけたのは、クロードだった。隣にはセシルもいる。


「クロードさん、セシルさん、お疲れ様です。わたくしの体調は問題ありませんわ」

「良かった。ところで明日、殿下がこちらに来るそうですよ」

「まあ。分かりましたわ。おもてなしの準備をしなくては」


 あれからジルベールも時間を捻出しては、レティシアに会いにくる。


 それも平均して週に2〜3回も。その代わり、滞在時間はそう長くない。けれど移動時間もあるから中々大変だろう。


「まさかここまでとは。少し予想外でしたわ」

「それは殿下が来ないと思っていたのですか?」

「少し違いますわ。わたくしも、妃教育を少し齧った身。王族は本当に多忙を極めていますから、特に卒業したばかりの殿下にとって慣れないことばかりだと思います。自分の時間を作るのも大変なので、もう少し会う期間が開くと思ったのです」

「レティシア様が事情を知っているとはいえ、甘いですよ。もっと厳しく見ませんと」


 クロードの言葉に訂正していると、セシルが憮然とした表情で横槍を入れる。


 レティシアはその表情に、思わず笑ってしまう。相変わらずセシルはジルベールに厳しい。


「もう、事情がどうであれ、評価できることはしないといけませんよね? それこそセシルさん達がやっていることを真似ているのですよ」

「おお、さすがはレティシア様。周りをよく見て、吸収しようとする姿勢はとても素晴らしいです」

「クロードさん……面白がっていませんか?」

「そんなことありません。もうレティシア様を、我が子のようになんて思っていませんとも」

「それは大体、そう思っている人が言うことですよ」


 こんな軽口を叩けるようになったのも、分け隔てなく関わってくれる従業員達のおかげだ。


「ふふっ。そうだ、お疲れになっていませんか? わたくし、皆さんに教えてもらってお茶の淹れ方の練習をしているのです」

「レティシア様のお茶を飲めるなんて、とても素晴らしいですね。ぜひいただきます」


 お茶の淹れ方は公爵家と違って簡略化されてはいるが、味の確認が出来ないレティシアにとっては難しいことだ。香りである程度判断しているけれど、不安になってしまうことは仕方ないことである。


 従業員達にも飲んでもらったりしているが、若干贔屓されている気がしなくもない。だから色んな人から味見してもらって、参考にしたかった。


 お茶の用意を始めるレティシア。練習を始めたばかりで、動きにはぎこちなさがある。


 けれど元々飲み込みがいいレティシア。もう少し練習すれば、そのぎこちなさも無くなっていくだろう。


「どうぞ」

「いただきます」


 お茶の香りはどこか清涼感を感じる香り。スッキリした飲み心地らしいものを選んだ。


「上手ですね」

「本当ですか? 何か気になることがあったら言ってください。直したいですわ」

「美味しいですよ。レティシア様は公爵家でお茶を飲んでいたので気にするとは思いますが、大衆向けのお茶なのでそこまで気にすることは多くないですよ。それに結局は好みですから、このくらいの腕でお客様に出すことも出来るでしょう」


 クロードとセシルの評価に、ホッと胸を撫で下ろす。


「良かったですわ」

「レティシア様は過小評価のきらいがありますね。それこそ本格的なお茶の淹れ方ならジョゼフさんやルネさんの方が、その道のプロだと思いますよ」

「そうなんですが、少しの自由時間にしか会えないので中々お茶の話ができないのですよね」


 ジョゼフとルネも今はロチルド商会にいる。けれど以前のようにレティシアとずっと一緒にいるわけではない。


 ロチルド商会の仕事をしているからというのもあるが、他の人達との関わりも大事にしようという話になり、あえて一緒にいる時間を減らしているのだ。


 とはいえ、1日の終わりに一緒に過ごす時間を作っている。その時はその日あったことを話していると、すぐに時間が過ぎてしまうのだ。


 少しもどかしさもあるが、人との関わりが増えたことで、レティシアの世界は広がりを見せてとても充実した日々を過ごしている。

いつも読んでくださりありがとうございます


作者は豆腐メンタルなので、過度な批判や中傷は御遠慮いただけると幸いです。

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4章の章立てと、今回の3章→4章の訂正お願いしますー。
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