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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第3章

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【幕間】その裏で……

今回で第3章は章末になります!


これからレティシアはどう決断していくのか、お付き合いいただけたら幸いです!


よろしくお願いします


 レティシア達の話が終わり、陛下と王妃は一足先に退出していた。


 若人達の話に水を差すことになるだろうし、これからやらなければならないことも多い。


 それに――


 陛下と王妃はレティシア達がいる部屋から離れた、別の部屋の扉の前に立つ。


 ノックをして入室すると、そこにはバンジャマンとジュスタンがいた。


 陛下が入ってくるのを確認して、2人とも臣下の礼をとる。


「楽にしていい」

「はい」


 バンジャマンとジュスタンの表情は硬い。


 それも当然のことだろう。


「では早速本題に入らせてもらおう。レティシア嬢はリュシリュー公爵家に籍を残したまま、しばらく別のところで生活することになった」

「承知しました」

「だが、これはお前達のためではない。今後、ジルベールと再構築を選んだ時に、スムーズにことが進むようにするためだ」

「はい。……殿下と完全に和解したわけではないのですか?」

「ああ。お互い蟠りがあるからな。レティシア嬢には時間も必要だろう。ゆっくりして自分の気持ちと向き合って欲しい」

「……そうですか」


 2人とも、レティシアがどこで生活するかなどは聞かない。いや、聞いてはいけないのだ。


 そこに踏み込んでは、またレティシアの負担となってしまう。


「それまではリュシリュー公爵家は存続させねばならん。正直、数ヶ月で答えが出るとも思っておらん。それまでは公爵としての責務を果たせ」

「御意」


 レティシアが答えを見つけ、その後の道を決めたのならリュシリュー公爵家は爵位返上する。


 それまでにやらなければならないことは、たくさんある。


「……レティシア嬢に会いたいか」


 その言葉に、バンジャマンとジュスタンは一瞬固まるが、バンジャマンがすぐに答えた。


「レティシアは望んでいないでしょう? そうであったのなら、ここに来た時点で移動を始めていたはずですから。レティシアが望んでいないのに行くわけにはいきません」

「そうか」

「ジョゼフ達はどうでしたか?」

「ええ。彼女、ジョゼフ達のことは許したわよ。貴方達にはそんなこと思わなかったって言ってたわ」


 バンジャマンの質問に答えたのは、王妃だった。


 言葉に明確に棘を含ませている。


 今回のことは、バンジャマン達にも知らせている。だからこの場にいるのだ。


 卒業式も、卒業パーティーにも別室で待機していた。


 それはレティシアに姿を見られないようにしたためだ。だったら屋敷にいた方が良いという意見もあったが、万が一、家の関係でレティシアが危険に晒された時に駆けつけられるようにという配慮だった。


 今はすぐにレティシアの判断を聞けるようにするため。そしてレティシアが亡命するにせよ、もし、それこそ億万一レティシアが希望した時に、すぐ会えるようにするためだった。


 けれどバンジャマンもジュスタンも、レティシアが自分達に会うなんて言わないだろうと分かっていた。


 あれ以来、ジョゼフに近況を聞いていたが、自分達の名前すら会話にほとんど出ないそうだ。


 だからそんな希望を持つことすら烏滸がましいと分かっていた。


「……レティシアが、俺たちを赦さないのは、そもそも赦すほどの関係値が築けなかったからですね」


 ポツリとジュスタンが言う。


 ジョゼフ達にあって、自分達に無かったもの。信頼度、親密さ、挙げればキリがない。


 もし、とジュスタンは変えられない過去を思う。


 もし、バンジャマンの言葉を真に受けないで、レティシア自身を見れていたら。


 もし、自分の劣等感を、ジルベールと同じように高め合えるようにしていたら。


 それはあり得ない未来。妄想に過ぎない。


 けれどきっとどこかで気がついて、方向転換出来たのなら。


 今ほど関係が拗れていなかったかもしれないのに。


 そう思うと、ジュスタンは胸が締め付けられる。全ては自分が蒔いた種。


 時折、様々なレティシアを夢で見る。レティシアは冷たい表情で、もしくは怒りの表情でジュスタンを詰る。


 毎回汗びっしょりで飛び起きるのだ。それはきっと天から与えられた罰なのだ。


 そして必ずレティシアの言葉を思い出す。


 “もっと苦しめ”と言っていたことを。


 だからジュスタンは、これがレティシアが望んだ罰なのだと思っている。


 これを甘んじて受けることで赦されると思っていないが、レティシアが幸せに生きるために必要なことなのだろうと。


 バンジャマンも同じだ。


 これからやることがとても多い。


 ジルベールとの再構築がどうなるにせよ、宰相を務めた家が爵位返上となるのだ。混乱は免れないだろう。


 その混乱を最小限にするのが、バンジャマンの使命だ。


 もし国の情勢が悪くなれば、レティシアが責任を感じるのは必至。


 レティシアにかかる火の粉を少しでも多く、バンジャマンが振り払うのだ。


「これからも、必要な情報はお前に渡す。が、レティシア嬢がジルベールとの関係の終着点を決めたら、もうお前達の出番はない」

「はい」


 レティシアが決断した後は、リュシリュー公爵家としてやれることはほとんどない。


 あとはただのバンジャマン、ジュスタンとして生きていくことになる。


 陛下との話が終われば、レティシアに鉢合わせないように屋敷に帰らなければならない。


 まだレティシアは時間がかかりそうなので、バンジャマン達は今のうちにと屋敷に帰ることにする。


 最後にレティシアがいるであろう部屋を見上げた。


 当然のように王城は広く、明るいのでどこにいるかはわからなかった。

いつも読んでくださりありがとうございます


作者は豆腐メンタルなので、過度な批判や中傷は御遠慮いただけると幸いです。

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