表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/94

72.ルネはお姉様です


 前祝いが終わると、就寝の準備だ。


 湯浴みの準備が出来たとルネが呼んで、レティシアはゆっくり湯船に浸かる。


 ご飯もいつも以上に食べる事が出来た。きっと自分が大好きな人達と一緒だからだろう。


 ふと自分の体を見る。倒れる直前は本当にガリガリだったけれど、少しずつ肉が付いてきた。

 とは言えお世辞にも健康そうな体ではない。


 食欲が一度失せるとしばらく戻らないのがもどかしい。胃の許容量も少ないままなので、思うように食べられないのだ。


 味覚が無くとも、周りの人達が気を遣って食べやすいように工夫してくれている。そのおかげで少しずつ食べられている。


「明日、遂に亡命かぁ……」


 なんだか複雑な心境だ。前までだったらドキドキして、これから第2の人生を歩むのだとワクワクしていただろう。


 引っかかるのは、クロードとの会話だ。


「殿下……」


 ジルベールは何を考えているのだろう。


 そしてレティシア自身、ジルベールに対してどうしたいのだろう。


 答えの出ないことがグルグルと頭の中を回っている。


 そして誰も言わないし、レティシアも聞こうとは思っていないのだが、気になることがあった。


 バンジャマンとジュスタンだ。


 倒れてから一度も顔を合わせていないし、手紙も無い。

 それを不満に思っている訳ではなく、情報が無いのが気になるというか。


 かと言ってジョゼフに聞こうにも、どのような内容でもダメージを受けると思う。


 結局知らないままでいるのが、レティシアの精神が安定するのだ。

 ジョゼフ達も分かっているから、何も言わないのだろう。


 何となく、ナーバスな気分になっているのを自覚する。


 手慰みにちゃぷちゃぷと湯を遊ばせていると、浴室の外から声がかかる。


「お嬢様、大丈夫ですか?」

「ルネ? 大丈夫よ。どうかした?」

「いえ、いつもよりゆっくりしているので、念の為声を掛けさせてもらいました」


 どうやら物思いに耽っていたら、時間が過ぎていたらしい。


「ごめんなさい。今出るわ」


 そう言うと、浴室から出た。



 ◇◇◇



 湯浴みが済んでゆっくりしていると、ルネがよく寝付けるようにハーブティーを淹れてくれた。


 それを飲んでいると、ルネが聞いてくる。


「何を考えていますか?」

「……ルネには何でもお見通しね」


 お風呂で考え込んでいたのを、見抜かれたのだろう。


 この心の揺らぎも、話せば落ち着くだろうか。

 レティシアは言葉を探しながら、ゆっくり話した。


「クロードさんとの話が頭から離れなくて。わたくしは殿下のことをどう思っているのかしらって」

「お嬢様の話を聞いている限りですと、好き嫌いだけで語れるものではないようですね」

「そうね。そんな簡単に答えを出せないわ」


 憎んでいる訳では無いけれど、良い感情ばかりではない。けれど、ちゃんと敬意や人としての好意も持っている。


「……お嬢様」

「何かしら?」

「私はお嬢様の味方です。殿下が何を考えていようと、それは揺るぎない事実です。だから、自分の思いに素直になりましょう。きっと、明日になれば、お嬢様がどうしたいか明確になると思います」

「ルネ……そうね。ルネがいれば、大丈夫だわ」


 ルネの言葉に、揺れ動いていた心が落ち着いてくる。


「ありがとう。ルネ」

「いつでも私を頼って下さいね。何と言っても、私はお嬢様の姉ですから」

「ふふっ! そうね。頼りにしているわ、お姉様」


 以前話していたことを持ち出され、笑みが浮かぶ。


 ふと、レティシアはあることを思いつく。


「ねぇ、ルネ。今日は一緒に寝て欲しいわ」

「ほぇっ⁉︎」


 レティシアの提案に、素っ頓狂な声を上げるルネ。

 

「ルネのお陰で前向きになれたけれど、また1人になったら考えてしまいそうなの。お願い」

「わ、分かりました。お嬢様の願いなら」

「嬉しいわ。ありがとう」


 茶器を片付けると、さすがに緊張しているルネと一緒にベットに潜り込む。


 言い出したレティシアも、段々と緊張してきている。


 ベットの中に自分以外の存在がいるというのが、思ったより違和感を感じる。


「……何だか緊張するわ」

「これ、やっぱり私は……」

「ルネ。背中を向けられたら、余計に緊張するわ」

「うっ」


 レティシアの言葉に、気まずげな声を上げる。


 少しして、レティシアの方に向いてくれた。


「……向かい合うのも緊張するわね?」

「天井見ます?」

「いえ……少し良いかしら?」

「はい?」


 レティシアは、ルネの手を取る。


 暖かいその手を握ると、ルネは驚いていた。


「お、お嬢様?」

「ルネの手ってすごく温かいわね」

「ベットの中ですし……。お嬢様は少し冷えてますね」


 レティシアは痩せ型なのもあり、慢性的な冷え性だ。


 冷えた手を温めるように、ルネはマッサージする。


「ルネの手が冷えない?」

「大丈夫ですよ。むしろ冷たくて気持ち良いくらいですね」


 お互いの手をにぎにぎする。


 次第にお互いの体温が移り合い、丁度よくなってきた。

 それと共に、レティシアの瞼も重くなってくる。


「眠くなりましたか?」


 囁くようなルネの声に、レティシアは答える。


「ええ。……何だか、凄くよく眠れそうだわ……。ルネの手は、魔法の手ね」

「良かったです。ゆっくり寝てください」

「ルネ、わたくしが……寝たからって……でていかないで……ね」


 そこまで言うと、レティシアは夢の世界へ旅立った。

 ルネはそっと頭を撫でる。


「おやすみなさい、お嬢様。良い夢を」


 そう言うと、レティシアの顔が緩んだように見えた。

「面白かった!」「続きが読みたい!」と思ってくだされば広告下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎をポチッとお願いします!

いいね、ブクマもとても嬉しいです。


ランキングにも参加してみています!

良かったらポチッとしていってくれるととても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あ~この先どうなるんだろ 個人的にはジルベール嫌いだから喰らわして欲しくはあるけど 気になる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ