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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第2章

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70.【幕間】バンジャマンの決断①

[日間]異世界転生/転移〔恋愛〕 - 連載中 にて2位になりました!

皆様良いね、ブクマ本当にありがとうございます!


 バンジャマンは一通り仕事を片付け、アマンディーヌの墓参りに向かう。


 時刻は日付を跨ぐ少し前になってしまった。


 灯りは手元にある魔道具しかなく、足元も見え辛い。


 夜の墓場はどうしても薄気味悪さが漂う。


 それでもそこに実体はなくとも、愛する人がいれば輝き出すのだから不思議だ。


 前回と同じように、ふわふわと重力を感じさせない様子でアマンディーヌは浮いていた。


「アマンディーヌ……」

『そろそろ来ると思っていました』

「……さすがだな」

『褒め言葉では無いですよ? 貴方は虚勢を張っているもの。自分が弱いのを認められない軟弱者ということです』

「アマンディーヌの言う通りだ」


 容赦ない言葉も、今のバンジャマンはその通りだと受け取ることが出来た。


 その虚栄心が、レティシアをそして幼いジュスタンを歪めたのだろう。


「ああ……そうだな。私は弱い。アマンディーヌの死を受け入れられず、自分の事しか考えられなかった。……どう考えても、親を失ったジュスタンとレティシアが1番辛いのにな」

『そうですね。そして気づくのが遅すぎたのです』


 貴族に家族の情は必要ないという者も一定数いる。


 けれど、今のリュシリュー公爵家はもうそう言う次元から超越している。


 誰がどう見ても、気が狂った一族となっているのだ。


 そしてその原因は公爵家当主のバンジャマンだ。


『ジョゼフが言った通り、レティシアとは離れた方が良いでしょう。あの子にとって、あなた達が近くにいること自体が毒でしかないのは、もう分かっているのでしょう?』

「……ああ」


 陛下にも報告して、養子の話も進めた方が良いだろう。もうこのリュシリュー公爵家は、バンジャマンの代で終わりだ。


 ジュスタンにはせめて、公爵家の重荷を背負わせない様に。

 そしてレティシアの視界に入らない様に。


 バンジャマンが全ての罪を背負って生きていかねばならない。レティシアが倒れた事で、漸く理解したのだ。


『貴方が出来ることはもう殆ど無いです。けれど、貴方はレティシアが知らない所で償い続けなさい』

「ああ」

『レティシアの幸せを祈り続けなさい』

「誓う」


 アマンディーヌの言葉に、決意を込めて頷く。


 その様子を見て、アマンディーヌは表情を変える。少し寂しそうに。


『レティシアとジュスタン。私が生きていたら、貴方の暴走も止められて今と違う人生があったでしょうね』

「いや、アマンディーヌは何も悪くない。全て私が悪いのだ。私が間違えたのだ」


 アマンディーヌが流行病に罹らなければ。

 バンジャマンが少しでも子供達に向き合えていれば。

 ジョゼフの忠告に耳を傾けていれば。


 たらればを語っても、過去が変わることは無い。

 

『ジュスタンは私に会うことを躊躇していますね。伝えておいて下さい。死者である私に会いに来る必要はないと。レティシアも私の記憶なんてないから、無理して来なくていいと』

「伝えておこう。ただ、墓参りをしたいと言ったら連れてくる」

『ありがとうございます。でも貴方も、あまり此処に来たらダメですよ。生きている人を大切にして下さいね』

「ああ、分かった」



 ◇◇◇



 それから1週間後、レティシアが目醒めた。バンジャマン達と顔を合わすことなく、レティシアはジョゼフの家に行った。


 レティシアを乗せた馬車が遠ざかって行くのを、自室の窓から見送った。


 その日に陛下にはレティシアの養子縁組の申請と、将来的な公爵位の返上を告げた。


 元々養子縁組は考えられていたこと。陛下の温情で、長引かせていたに過ぎない。当主が希望すれば、渋る理由もない。粛々とその申請は受け入れられた。


 爵位の返上に関しては、直ぐに答えは出せない。どうしてもその後に起きる問題も大きいからだ。念入りな準備が必要になる。


 その場には王妃とジルベールもいた。2人ともバンジャマンの話を聞いて思うところがあったのか、ある程度話がまとまると2人で話し合っていた。


 それも終わると、王妃はバンジャマンに言う。


「良いわ。体調が良くなったら、レティシアに会って一度話を聞きます。レティシアの気持ちによっては、また考えなければいけません」

「お願いします。私は今後、レティシアの希望がない限り会うつもりはありません」

「……そう」

「けれど何か必要なことがあれば、レティシアが気づかないように協力したいと思います」

「分かりました。頭にいれておきます」


 その場で書類の準備をして、バンジャマンは公爵邸へ帰る。

 公爵邸に到着すれば、出迎えにジュスタンがいることに気がつき、声をかける。


「ジュスタン。どうした」

「父上、王城ではどんな話を?」


 ここは玄関ホール。使用人も数人いて、場所が場所なので一旦執務室へ移動する。


 今はジョゼフもレティシアの看病をする為に家に帰っているので、執務室には2人しかいない。


 ソファに座り、王城でのことをジュスタンに全て話した。


 話を聞き終わったジュスタンは、バンジャマンに質問する。


「爵位を返上した後は、どうするつもりですか?」

「まだ具体的な計画は立てていない。が、レティシアの為になることを考えている。この国から出ていくつもりもないし、王都にはいるつもりだ。その方が、レティシアの噂だけでも聞けるからな。それに王都から離れることは、レティシアから逃げることと一緒だ」

「……」

「お前が公爵を継いだところで、今回の事が原因で社交界でも生きていけないだろう。だから――」

「では俺も、父上と同じようにします」


 その言葉に驚くバンジャマン。ジュスタンの青い瞳が決意を湛えていた。


「俺もレティシアから逃げない。レティシアの知らない所で、償いに生きます」

「……そうか」


 ジュスタンの決断を、バンジャマンは止めない。ジュスタンの気持ちはバンジャマンも同じだからだ。


 あれほど自分達を憎んでいるレティシアに、姿を見せるつもりはない。もうレティシアは何もこちらに望んでいないのだから。


 レティシアには、バンジャマン達を忘れて幸せに生きてほしい。それでも自分たちが償いに生きることが、唯一自分達に出来ることだと思った。


 レティシアが望まない限り、自分達はレティシアに直接関わらない。


 自己満足に過ぎないが、それでもこれからの人生で幸せになることを、自分達に許さないで生きることを決意した。

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― 新着の感想 ―
レティシアには無事に亡命を成功させて欲しい。 亡命先で一緒に亡命した皆と毎日楽しく幸せに過ごして欲しい。 父と兄にはレティシアの噂すら入らないで良い。 ジルベールもな〜、今のレティシアがおもしれー女枠…
世の中には償えない事ってあるからなぁ。 主人公PTSD発症してんじゃん。 1週間目が覚めないって普通じゃない。無理だよ 世の中にはそれでも血縁者だから大事にしろだのなんだのかんだの言う人は居るけれど…
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