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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第2章

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65/94

65.殿下の成長ですか?

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ありがとうございます!


 それでもレティシアは、往生際悪くジョゼフに言う。


「でも、ジョゼフ。殿下だって、今まで一緒にドレスを選ぶなんてして来なかったわ。今更そんな風にされても、何というか困ってしまうもの」

「お嬢様、こう言うと失礼にはなってしまいますが、ジルベール殿下もまだ青年であります。成長されて、ドレスを一緒に選びたくなったと言うこともあると思いますよ」

「ええ……」


 レティシアは不敬にも、ジルベールに対して呆れてしまう。何というか、もうすぐ成人になるのだ。遅くないだろうか。


 けれどレティシアとジルベールの関係を思えば、致し方ない部分もあるだろう。出会った頃はまだしも、お互い溝があるのだから。


 しかし、今の状態も不思議ではある。が、レティシアはすっかり忘れていたことを唐突に思い出した。


「あ、そういえば前に“もっと歩み寄りたい”みたいなことを仰っていたわ」

「そうでしょう? きっと成長されたのですよ」


 そうだ。確かジュスタンの卒業式の日に、突然尋ねてきてそんなことを言っていた。それからジルベールは生徒会で多忙に、レティシアは療養にはいってしまったので機会はなく。すっかり忘れていた。


 それを思い出すと、ジョゼフの同意の言葉に納得は出来る。


 しかしだ。


「けれど、その卒業パーティーでわたくしは亡命予定……待って、今わたくしの中で嫌な考えが出てきたのだけれど」

「どうされたのですか?」

「……ねぇ。今のわたくしと殿下の関係性ってどう見えるのかしら?」


 そう、以前は不仲である、冷え切っていると公然の秘密であったが、ジルベールのその行動は果たしてどう取られるのだろうか。


 急速に不安が膨れ上がっていくレティシアに、ジョゼフは宥めるように言った。


「はたから見たら、あまり変わらないと思いますよ。何せジルベール殿下がお嬢様に言ったのは、2人きりの時でしょう? 人目のあるところではないので、大丈夫かと思いますよ」

「け、けれど殿下自身が心変わりしていたら、申し訳ないわ! そもそもこの計画の根底だって、殿下に余計な心労をかけないようにするためなのに!」


 レティシアの言葉に、ジョゼフは考え込むように顎に手を当てて言った。


「……お嬢様、確認ですが、ジルベール殿下には幸せになっていただきたいと言っていましたよね?」

「ええ。あの方は国のトップに相応しいお方。わたくしという足枷から解放されて、この国を導いて頂きたいのです」


 レティシアはそれに関しては、迷いなく言い切れる。自分自身が関わると、それだけの感情で済まないのだが。


「お嬢様が足枷とは到底思えないですが、今はそこではありませんね。ならば、余計にドレスの件は受けるべきかと。卒業パーティーは、伝統が長く重要度も高いです。そこでこれから本格的に公務に関わるジルベール殿下が、婚約者に半端なドレスを準備したと知られれば、それこそ汚点となり得ます」

「それは……」


 ジョゼフの言うことに、レティシアは今度こそぐうの音も出ない。


「ジョゼフの言う通りよね。それに、殿下も別にわたくしのためではなく、婚約者の為ですものね。それは仕方ないわよね」

「ええ」


 行きたくはないが、ジルベールのためにもいくしかない。


 次から次へと問題が降りかかる事に、レティシアはため息を吐いてしまう。


 しかし晴れて亡命出来れば、こんなしがらみから抜け出せるのである。


 後ちょっとの辛抱だ、と言い聞かせて頑張るしかない。



 ◇◇◇



 そして次の休日。レティシアは登城する事になった。


 ジルベールから学園にいる時に、突然に今日ドレスを選ぼうと言われたのである。


 それもジルベールの迎え付きで。珍しいこともあるものである。


 そんな訳でレティシアはルネに準備を手伝ってもらっていた。ドレスは辛うじてあった1着をリュシリュー公爵家から取り寄せて、髪を整え、化粧をする。


 このドレスはジョゼフがクローゼットの奥から、たまたま見つけてくれたのだ。恐らく奥にあったのも相まって、売却していた使用人に売られなかったのだろう。


 ジョゼフの家に居候してから、ストレス源がなくなり、また隈も薄くなってきた。それでも化粧で隠す必要はあるが。


 本当に感謝しかない。


 ルネに髪飾りを付けてもらい、準備が完了した。


「お嬢様、終わりました」

「ありがとう、ルネ」

「いいえ。それにしても、本当に旦那様達は趣味が悪いですね。辛うじてあったドレスもこれなんて」

「あっただけマシだわ。前は時々登城していたのだし、あの使用人達もそこまではしなかったか、もしくは気が付かなかったのね」


 レティシアが着ているドレスは、流行から一昔ほど遅れている。


 それを公爵家の1人娘に着せるなんて、正気の沙汰ではない。公爵家の評判だって落ちるのだ。それを分かっていないのも、公爵家当主として問題では無いだろうか。


「それでも、お嬢様の気品で一級品に見えますけれど!  ええ。決して、旦那様達のおかげではありません!」

「ふふっ。ありがとう」


 ルネと笑い合っていると、クラリスがやってきて、ジルベールが来たことを伝える。


 玄関に向かうと、王家の豪華な馬車でジルベールは迎えに来ていた。


 レティシアは、カーテシーをしてジルベールにお礼を言う。


「殿下。今日はお迎えまでして頂き、ありがとうございます」

「ああ。そのドレスより、もっと素敵なドレスを用意したいんだ。私の方こそ、よろしく頼むよ」


 ジルベールにエスコートされ、レティシアは豪奢な馬車に乗り込んだ。


 静かに動き出し、馬車は王城へ向かう。

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― 新着の感想 ―
うーん、王子に好感が持てない…。 動いてるんだろうけど暗躍で、主人公の気持ちには寄り添えないというか、決定打な行動がない。 現在好感度の低いままでドレス送られようがパーティーでダンスしようが公開プロポ…
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