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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第2章

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63.卒業パーティーのドレスですって?


教室に入るとクラスメイトの視線が集中する。けれどすれ違ってきた生徒達とは違って、ヒソヒソ話し声は聞こえない。


 ジルベールはそのまま、レティシアの席へエスコートする。


「殿下、ありがとうございます」

「いや、このくらいはね」

 

 久しぶりの教室にレティシアは周囲をぐるりと見渡す。


 ほとんど変わりは無い。強いて言えば、オデットの席が無くなっているくらいだ。


 レティシアが久しぶりに登校したとて、クラスメイトとも関わりは少なかったので、近寄ってくるものはいない。


 そのことを単なる事実として確認し、席に座ろうとしたのだが。


「……殿下、まだ何か?」


 そう、ジルベールがレティシアの前に立ったまま動かないのだ。なのに何も話してこないので、居心地が悪い。


「……レティシア。私に何か聞きたいことはないかい?」

「?」


 まただ。抽象的な質問は以前もあった。確かジュスタンの卒業式の時だ。


 何か含みを感じるジルベールの言葉。なにを狙っているのだろう。


(前は何となく言いたいことがわかったので、欲しいであろう言葉と逆のことを言いましたが。今回に関しては全くわかりませんわ。お見舞いに来なかったことなら、弁明をいただきましたしもう十分ですし。期待していたわけでもないので)


「聞きたいことですか……ああ、ブローニュ元伯爵令嬢のことでしょうか?」

「……」


(あ、間違えましたわ。だって表情がスンって無くなったもの。さっきまでの生き生きした表情がなくなってしまいましたわ。何と言うことでしょう)


 聞きたいことと言えばそれぐらいしかなかったけれど、ジルベールの望んだものではなかったらしい。


 さすがに申し訳なさを感じるが、なぜジルベールは“察して”と言わんばかりの行動をしてくるのだろう。


 今まで、お互い察することが出来ていないからこうなっているのに。それすら分からないのなら、ちょっと問題ではないだろうか。


 どうしようかと考え込むレティシアに、チリリとした視線が刺さる。


 俯いていた顔をあげて見渡すと、視線の発生源はドミニクとマルセルだった。


(すっごいこっちを見てるわ……。目だけで語っていますが、生憎何を語っているか分かりませんわね。彼らとも接点があるとは言え、そこまでの関係性ではないので分かりませんわ。イーリスの祝福の彼らでしたらわかるのですが、いかんせん現実の彼らは難解ですわ)


 分からないが、何となく願うような表情をしているのはかろうじて察した。


 そこから先は分からないが。


 考え込んでしまったレティシアに、ジルベールはため息をついた。


「うん、わかっていたよ。レティシア、本当に君は私の斜め上を行く」

「はあ……」

「卒業パーティーのドレス」

「え? ……あ」

「本当に忘れていたのかい? 全く、もう準備に入らないと間に合わないよ」


 別にレティシアは、卒業パーティーを忘れていたわけではない。


 何せそのパーティーが、レティシアが令嬢として参加する最後のパーティーとなるのだ。


 どちらかといえば、どう婚約破棄に持っていかれるか考えていたので、ドレスのことは何も考えていなかった。


(どうしても休んだ期間があるし、今後の展開が読みにくくなってしまったのよね。ずっと学園に通っていたら、まだ殿下の動きとかわかったでしょうがジョゼフ達に遮断されていましたし)


 とにかく今はそれを置いておいて、ジルベールのことを対処せねば。


 正直、ジルベールがドレスを用意する必要はないと考えている。第一王子が婚約者のドレスを用意するとなれば、民から集めた税で作られることになる。


 それは年間の予算に組み込まれているとはいえ、亡命予定の者にそのお金を使うなんて、まさにドブに捨てる行為だ。そんなのレティシアにとって許せることではない。


「今度、王城に来て欲しい。色々話し合おう」

「え」

「それじゃ」


 言うだけ言ってジルベールはドミニク達の方へ行った。


 王城なんてここ暫く行ってないが、正直に言えば行きたくない。


 そんなにドレスについて時間をかける必要はない。登城するための準備だって必要なのだ。面倒臭いというのが本音だ。


(そもそも、今までドレスだってサイズ確認くらいで殿下がオーダーしていましたわ。なのでデザインとかサイズは一級品でしたが、わたくしの好みとは外れていることもあったのはこの際どうでも良いですわ。そうではなく、何故今、ドレスの相談をするかと言うことですわ)


 レティシアの考えでは、ジルベールはもう準備に取り掛かっているものだと思っていた。


 自惚れではなく、ジルベールは誠実な人物なので準備しない、なんてことはしないと思っただけだ。


 仮に万が一用意されなかったところで、平民に用意されるドレスをレティシアも身につけようと思っていた。


 それならそれで、レティシアとジルベールの婚約破棄は約束されたようなものだろうしと思っていたのだ。


(何とか断れないかしら……あまり殿下と一緒にいたくないわ。なにせ美しさで目がやられそうだもの。コレット様でも同じようなことがありましたし、いつか失明しそうで怖いですわ)


 しかもあんな笑顔を見たら、平常心でいられるか不安である。顔が整っているってズルい。


(やはりどうにかして避けたい……。体調不良が今なら理由に出来そうだわ。それで適当に頼んで欲しいって殿下に言ってみましょう)


 それで引き下がってくれるか不安だったが。最近のジルベールは謎のしつこさがあって苦手だと頭を悩ませるのだった。

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