表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/96

62.久しぶりの学園です


 そして久しぶりの登校日。


 レティシアは制服に身を包み、クラリスとルネに見送られながら登校した。


 ジョゼフの家はリュシリュー公爵家より学園に近い位置にあるので、むしろ登校時間が短くなる。


 ジョゼフの家には御者がいない。その代わりに、ジョゼフの息子のマルクが馬車を動かしてくれることになった。


 体力作りの意味も込めて徒歩でも良かったのだが、周りに反対されたので甘えさせてもらう事にした。


 普通に考えれば、まだ公爵令嬢のレティシアを1人で歩かせるわけにはいかない。勝手に抜け出して、ロチルド商会に行っていたのは置いといて。

 

「レティシア様、どうしても揺れが強いと思いますので、辛かったらおっしゃってくださいね」

「はい。よろしくお願いしますわ」


 今乗っている馬車は、確かに揺れる。というより公爵家の馬車が高性能だ。ほとんど揺れなくて、長距離の移動には重宝するだろう。遠出する機会がないけれど。


 それでも今の馬車だって、普通の辻馬車よりも揺れは少ないだろう。


 いつもと違う道を通り、学園に到着する。それだけで新鮮な気分だった。


 マルクの手を借りて馬車から降りれば、想像通り視線が集まるのを感じた。


「気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ありがとうございました。行ってきますわ」


 そんな視線を意に介さず、レティシアはマルクにお礼を言った後、教室に足を進める。


 すれ違うとヒソヒソと内緒話をしているのが聞こえる。


「リュシリュー公爵令嬢、ご病気だって聞きましたわ」

 

「何ヶ月もお休みになられて……。今の馬車も公爵家のものではありませんわ」

 

「何かあったのではないか? だってあの暴行未遂事件から来なくなっただろ?」


「首謀者の令嬢がリュシリュー公爵令嬢が黒幕だと騒いでいたそうだ。無関係とも思えないな」


 ヒソヒソ話しているつもりなのだろうが、ほぼレティシアに聞こえているのは、もはやわざとに感じてしまう。


 けれどここで噂を放置しておけば、レティシアの評価が上がることはない。


 だからレティシアは聞こえないフリをするのだ。


 主治医には、何か少しでも体に異変があれば帰りなさいと言われているが、今の所そんな兆候はない。


 レティシアは周りを気にする事なく、足を進めていた。


 少し歩くと、目の前に見覚えのある男性が立っていた。白銀の髪が朝日に反射してキラキラと幻想的な姿。ジルベールだった。


「おはよう、レティシア。久しぶりだね」

「ごきげんよう、殿下」


 レティシアはなんとなく身構えながら、ジルベールに挨拶を返す。


 身構えてしまう理由はこの数ヶ月間、なんの音沙汰もなかったからだ。


 さすがに婚約者が倒れたとなれば、当主のほうから連絡が行くはず。


 それなのに、手紙の一つ、お見舞いの一つすらなかった。


 レティシアは関係が冷めているとはいえ、婚約者の義務を果たさないジルベールに疑問を持っていた。


 単純にそれほどまでにレティシアを嫌いになったというのなら、諸手をあげて喜ぶところではあるが。


 それならば、このようにレティシアの前に現れないと思う。何か企んでいるのでは、と思うのは当然のことだ。


 そんな警戒心を抱くレティシアに気がついていないのか、ジルベールはレティシアに手を差し伸べる。


「体調はどうだい? 良ければ手を貸そう」


 つまりエスコートすると。ジルベールの行動に矛盾を感じ、さらに警戒する。


 そんなレティシアに、ジルベールは言う。少し眉を下げて申し訳なさそうな表情付きで。


「すまないね。辛い時だと言うのに手紙も出せずに。ブローニュ元伯爵令嬢の件で時間がかかってしまって、気がついたらこんなに時間が経ってしまったんだよ」

「……まあ、殿下自ら動かれたのですか?」

「そうなんだ。何せ学園を中心に起きたことだ。生徒会長として、できる限り協力したかったからね」

「それは大変でしたわね。わたくしのことはお気になさらず」

「いや、本当にすまなかった。……ところでいつまで私はこの体勢でいれば良いかな?」


 ジルベールは話している間も、ずっとレティシアに手を差し伸べていた。これ以上長引かせても、ジルベールは手を引かないと判断したレティシアは、一言詫びをいれてその手を重ねる。


 嬉しそうに微笑んだジルベールに、周りから悲鳴があがる。


 至近距離でその笑顔を受けたレティシアも、その美しさの暴力に目が眩んだ。


(え? 殿下、こんなに生き生きとした表情を浮かべる方でしたっけ? こうもっと、わたくしと同じように作られた表情だったと思うのですが)


 混乱しながらも、思わずその美貌に魅入ってしまう。


(本当、美しいですわ。シミもなく、髭もなく、まるで陶器のようなお肌。けれど鍛えていないわけではないのが、掌の胼胝が物語っています。紫の瞳も気を許したら吸い込まれそうな、神秘的な輝きを――)


「レティシア? やはりまだ本調子ではないのかな?」

「っええ。申し訳ありません」


 見惚れていたのをジルベールに声をかけられ、我に帰る。危ない。


「いや、謝らなくていい。無理せず、保健室に行くかい?」

「大丈夫ですわ。申しわけありません」

「そういうなら分かったよ。けれど、無理はしないように」

「はい」


 レティシアを気遣ってか、早くないスピードで歩くジルベール。


 その間、すれ違う人達の注目を浴びながら、レティシアは考える。


(それにしても、学園の者が首謀者とはいえ、殿下が動かれるなんて。公務もしているのに、いつ休んでいるのかしら。ストレスも相当なものだと思うのだけど。その精神の強さ、尊敬しますわ。むしろ秘訣を知りたいです)


 自分が一度倒れてしまったからか、そのことばかり考えてしまった。

「面白かった!」「続きが読みたい!」と思ってくだされば広告下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎をポチッとお願いします!

いいね、ブクマもとても嬉しいです。


ランキングにも参加してみています!

良かったらポチッとしていってくれるととても励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ