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悪役令嬢としての役割、立派に努めて見せましょう〜目指すは断罪からの亡命の新しいルート開発です〜  作者: 水月華
第一章

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26.殿下達と決別です!


 離れて良いかなとレティシアは思い、声をかけようとしたその時。


「あ、マルセル様。ここにいたんですね」

「コレット嬢。わざわざ探していたのですか? すいません」


 なぜここにコレットが来るのか。レティシアは思わず頭を抱えたくなった。


(イーリスの祝福の主要メンバーが一堂に介している……! 何ですの、この混沌とした状況は……いえ、わたくし以外皆様普通ですわ。わたくしの心情が混沌ですわ)


 コレットが今気がついたというように、レティシアを見て少し驚いた顔をする。


「リュシリュー公爵令嬢、こんにちは」

「…………ごきげんよう」


 出来ればこちらに気が付かないで欲しかった、とレティシアは心から思う。

 なぜコレットは、普通にレティシアに挨拶できるのだ。全く理解できない。


(彼女の素晴らしいところではありますが、今のわたくしには眩しいですわっ。こっち来ないでください、わたくしと関わってはいけません。コレット様が穢れてしまいますわ)

 

 けれど錚々たるメンバーに、萎縮したのだろう。コレットは、小さくなりながら謝罪してきた。


「あ、お話の邪魔でしたね。すいません」

「……いや、君はレティシアの友人か?」

「あ、えっと……」


 ジュスタンはコレットを知らないらしい。

 学年も違うので当然だが、コレットとレティシアの間には色々あった上に、オデットからの話の根本はコレットだ。

 本当に自分の良いようにしか、オデットは話していないのだと分かる。そしてそれの裏も取らず、全面的に信用したジュスタンも問題だ。

 そんなことで、公爵家の当主になれるとは思わない。

 イラっとしたレティシアだが、目の前の光景に疑問を抱く。


(あら? 何だか、この光景に見覚えが……)


「色々助けていただいたんです」

「レティシアが?」

「はい」

「そうか、妹にも友人がいるのだな」


 レティシアに対して、肯定的なコレット。それに対して、ジュスタンが頷く。

 ジュスタンの台詞で、ようやく思い出した。


(これは……ジュスタンルートのイベント⁉︎ でも状況もタイミングも何もかも違いますわ! この頃のイベントではありません! けれど今までの事を考えると、これからジュスタンルートに行く可能性も捨てきれませんわ。そんなっコレット様がジュスタンルートに入れば、不幸まっしぐらですわ! 止めないと!)


 あまりの胸糞の悪さに、プレイしたのは一度のみ。

 記憶も一番朧げではあるが、このままではまずいというのだけは分かる。

 ジュスタンのコレットへの興味を何とか逸らさせないと、と頭をフル回転させた。


「友人ではありませんわ」

「!」


 全員の視線がレティシアに集まる。

 その視線は、驚きと困惑が大半だった。

 そして唐突に、今が最大のチャンスだと思った。

 ここで一気にコレットやジルベールたちと袂を分つのだ。

 絶対に失敗できない。ここで成功させれば、きっと計画がうまく行くようになる。

 レティシアはしっかりと仮面を被り直し、無表情で続けた。


「いやですわ。いくら特待生だからといって、平民である貴女がわたくしと友人になれるわけないでしょう? 勘違いしないでくださいませ」

「あ、そんなつもりは――」

「おい、レティシア」

「あら、お兄様。あんなに常々平民を見下していましたのに、珍しいですわね。もしかして彼女に惚れたのですか?」

「なぜそうなる!」


 まさかのジュスタンが、コレットを庇おうとする。コレットとジュスタンが初対面であることを考えれば、ジルベール達の誰かが止めそうなものだけれど、レティシアを止める素振りはなかった。

 けれどレティシアにとっては好都合だ。

 ついでにジュスタンが変な気を起こさないように、誘導することも出来る。

 ジュスタンの劣等感を刺激しつつ、コレットを突き放さなければ。


「では何故、その方を庇うのでしょうか?」

「それは」

「ああ、まさか誑かされた後ですか。お兄様は()()()()()()()豊満な方がお好みですものね? もしかして、既にそういう関係ですの?」

「お前っ! 良い加減に」


 あからさまな物言いに、ジュスタンは怒りに顔を歪める。


(アンタがプライドを刺激される言葉なんて、熟知しているわ。精々、わたくしの手の上で踊ってくださいな)

 

 ジュスタンの方に近づくと、悪意をたっぷり込めて、耳元で囁いた。


「わたくしのことですら、体を売っているとお思いですものね? 遊びが激しいようですが、婚外子を作ると後々大変な事になりますわよ?」

「なっ」

「殿下の婚約者である者が、貞操が緩いなんてことはあり得ない……。ちゃあんとお勉強してたら分かるはずですものね? それすら分からないなんて、お兄様、これからの後継者教育は大変ですわよ? 精々、頑張ってくださいませ?」


 丁度いいので、この前気持ち悪いことを言った仕返しもさせてもらう。

 その言葉に、ジュスタンは言葉を失った。

 黙り込んでしまい、レティシアに言い返す気力もなくなったらしい。それなら、もうこの男に用はない。

 あんなにレティシアを見下していたくせに、反抗されると何も言い返せなくなるなんて弱い奴、とレティシアは内心嗤う。

 続いてレティシアはコレットを見る。

 コレットはレティシアに見られると、びくりと体を反応させた。


「貴女、前にも殿方と一緒にいましたわね。今もマルセル様に用事があったようですけれど、随分お転婆ですわね? 今度はお兄様も狙うのかしら? ……ああ! もしかして、リュシリュー公爵家にその名を刻みたいの? けれど残念。殿方を次々に手玉に取るような人、我が公爵家に相応しくありませんわ。身の程を知りなさい」

「……」


 コレットは何も言わない。けれど握った拳に力が入るのが見えた。

 それもその筈。レティシアはコレットの地雷をわざと踏んだのだから。


(これだけは言いたくありませんでしたが、公子にはコレット様に興味を持ってほしくありません。こう言えば、公子はコレット様を警戒する筈。……ごめんなさい)


 胸が痛んだが、今その表情を見せてはいけない。

 ここが踏ん張りどころだ。

 

「空気の読めない者がいると、気分が悪くなりますわ。お先に失礼させてただきます」

「レティシア」


 立ち去ろうとすると、ずっと黙っていたジルベールが呼び止める。


「何でしょうか?」

「……それが君の答えか?」


 レティシアに問うジルベールの瞳は、どこか見極めるようであった。

 ここでボロを出さないように、と考えながらレティシアは返す。

 

「言われている意味が分かりませんわ。わたくしは、わたくしが正しいと思うことをするまでです」

「そうかい。わかったよ」


 その言葉と共に、ジルベールはレティシアに背を向ける。その背中からは冷たい雰囲気が出ていた。


「フォール嬢、大丈夫かい?」

「はい、大丈夫です」

 

 ジルベールがコレットを気遣う姿勢を見せたので、レティシアはこれでいいとそのまま会場から出て行った。



 ◇◇◇



 会場から出ると、外はとても静かだった。人っこひとりいない。

 まだ皆は会場で別れを惜しんだり、最後の話に花を咲かせているのだろう。

 おかげで誰もいないのを確認したレティシアは、スキップをしながら鼻歌まで歌い始めた。


「やったわ……! 頑張って悪役令嬢を演じた甲斐がありましたわ……っ! あの殿下の顔! 絶対わたくしに幻滅しましたわ! これから先、きっと断罪に向けて動き出すのではないのかしら!」


 コレットに酷い言葉を言った罪悪感はあるが、それよりも作戦が上手くいったことの嬉しさ方が勝っている。やっと本当の意味で軌道修正出来たのだ。


「あのクソ野郎も言い負かせたし! 本当、わたくしにすら気持ち悪い視線を投げておいて、コレット様にアプローチするなんて許せませんわ! あんな奴にコレット様が嫁いだら、絶対に不幸になりますもの。ああ言えば、コレット様は近づかなくなるでしょう。そしてクソ野郎も、もう卒業ですからコレット様にアプローチするタイミングがありませんし、万万歳ですわ!」


 クルクル回りながら、喜びを表すレティシア。

 イーリスの祝福では、ジュスタンが卒業するまでにある程度仲を深めておいて、卒業後も会うイベントが多い。

 それを関わらないように釘を刺すことが出来たのだ。

 これでイベントも折ることが出来ただろう。

 そこまで言って、今度こそ罪悪感が大きくなった。

 スキップをやめて、俯いてしまう。


「コレット様が一番嫌いな言い回しも出来ましたわ。性に奔放と思われるのは一番嫌いですもの。これで、これ以上わたくしに良い感情を持つことは出来ないでしょう。傷つけてしまいましたが、こうするしか距離を取れなかったのです……ああごめんなさい、コレット様。貴女を傷つけたくはなかったのに。あんな言い方、したくなかったのに。本当に悪役ですわね。自分で望んだ事ですけれど、胸が痛いですわ」


 本当なら傷つけたくはなかった。しかしどういう訳か、コレットはレティシアにそれほど悪い印象を抱いている雰囲気はない。

 これからの計画を考えるのであれば、コレットにこれ以上好意的に見られるわけにはいかない。

 さすがヒロインらしい性格だと思うが、今のレティシアにとっては苦手である。おかげで先ほども目を合わせられず、喉の辺りを見ていた。

 表情は見ていないが、黙り込んでしまったところを考えるに、レティシアに失望しただろう。


「後はどうでしょうか。クソ野郎と関わることはないので、放っておいて良さそうですが問題は殿下達ですわ。出来れば今後、何もしたくないですわね。きっと悪い噂をオデット様が広めてくれるでしょうし、勝手にわたくしの株が下がることを期待したいですわ」


 ジュスタンはあそこまで、プライドを傷つけてやったのだ。もう関わってこないだろう。


「あ、もしかしたら暗殺なんて考えるかもしれない……いえ、わたくしの殿下の婚約者という肩書きがある限り、さすがに難しいでしょうか。けれど用心しておくに越したことはありませんわ。対策を考えないと」


 念には念をだ。早死にしたくないし、むしろこれから自分のために生きたいのだ。ここで殺される訳にはいかない。

 ジルベール達に関しては、何もしないでいれるならそれが一番だ。コレットを拒絶するのも辛いものがある。


「あと1年ですわ。1年後、わたくしは自由の身になれる……。あんなクソ家とはおさらばよ! ビバ! 亡命ライフ!」


 またスキップをしながら、レティシアは帰っていった。

 興奮しているせいか、感情の乱高下が激しい、

 

 確かにレティシアが出るまで、外には誰もいなかった。

 けれどレティシアが外に出た後、同じように外に出たものたちがいたのだ。

 レティシアは間違いに気が付かなくてはいけなかった。しかし、今までも間違いに気がついていないのに、気づけるはずも無い。

 そう、手のひらで踊らされているのは、レティシアの方だったのだ。

 それを鼻歌を歌うレティシアは、知らない。

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