109.立太子の儀
立太子の儀と、結婚式は同時に行われることになった。通例ならば立太子の儀の後、間を空けて結婚式となる。
しかし今回は立太子までに時間がかかったこともあり、同時に開かれることになった。
ちなみに通例で2回に分けるのは、それを出来るほどの財力や権力があると知らしめるためである。
陛下とジルベールは1回で済ませて良くない? と思っていたらしいので、都合が良かったらしい。
けれど1度で開催するということは、準備もかなり時間がかかるということだ。
国内だけでなく、国外からも賓客を招いて発表するだけでない。内容も今までと変えることになるので、そこもどう進めるか考えなくてはいけない。それでも急ピッチで準備が進められ、半年後に開かれることになった。
期間が短い。けれどジルベールの年齢を考えると、致し方ない部分もある。
その準備期間はあっという間に過ぎていく。招かれる国の勉強だけでなく、本格的に王妃教育も始まったのだ。
王妃との対面での教育は最初こそ緊張していたものの、王妃が優しく気さくな人物であることでそれも緩和していった。
ただやはり王妃教育自体が厳しいものなので、大変なことに変わりはない。
本来であれば、王妃教育は結婚してから始まるものであるが、今回は特例だった。
そんな日々を振り返りつつ、今はドレスアップの最中である。
味覚が戻ってから、以前よりずっと多く食べられるようになった。お陰で健康的な体に近づいている。
いきなりの体重増加は負担になるので、あくまでもゆっくりだ。ルネとセシルを筆頭に栄養管理をしてくれている。
お陰で少しずつ健康的になっているというわけだ。
ドレスのデザインも以前はほぼ露出がなかったけれど、今回は背中の辺りが空いている。
色味もジルベールの髪とウェディングドレスということで、白を基調にしている。所々にアメジストをあしらっている。
このデザインもジルベールと話あってのことだ。
前回はレティシア自身、ジルベールから離れようとしていたからジルベールの色は最低限にしていた。
けれど今回はジルベールの伴侶として、独占欲丸出しにもなるデザインになったのだ。
周囲の目がとても温かいもので、恥ずかしくなったのを覚えている。
そんなことを考えているうちに、着替えは終わった。
今回の主役はレティシアとジルベール。先に立太子の儀を行うので、その間はレティシアはナミュール侯爵家の人達、主にドミニクがレティシアの側にいてくれている。
今は立太子の儀が始まるのを待っている。半年しかなかったのに、国賓も招待した全ての人が出席していてホールは満席だ。
「とても綺麗ですね、レティシア嬢」
「あら、ありがとうございます。ところで、兄妹なので”レティシア嬢“は些か距離が遠いのではないですか?」
「分かってはいるんですが……」
「いやですわ。わたくしのお義兄様は意外と固いのですね」
「……レティシアじょ……レティシアは俺を兄にしてくれるのか?」
その一言に、ドミニクがなぜ遠慮気味だったのか納得した。
レティシアは微笑んで言う。
「ええ。もちろんです。どっかのクズ野郎とは大違いですわ。見てください。お兄様と言っても、触れても鳥肌は立っておりませんわ」
「……つまり前は立っていたんだな……。うん、大丈夫なら安心した」
「ええ。大丈夫です」
ジュスタンのことで、”兄“という存在に嫌悪感がないか、不安だったのだろう。
けれどそれは杞憂に過ぎない。だってドミニクはレティシアに何もしていない。だからこそ、ドミニク本人が悔恨を感じているとしても、レティシアが嫌悪する必要などない。
(いつか、ドミニク様が自分を許せるようになればいいですわ)
ジルベールもドミニクと同じような感じだろうが、あちらはこれからを頑張っている。
ドミニクも頑張っているので、きっと自分自身を許すのに多くの時間はかからないだろう。
その時、ホールの照明が落ちる。立太子の儀が始まったのだ。
「本日、この時をもってジルベール・ラ・ド・アヴリルプランタンを、王太子に任命する」
その言葉に、ホールが揺れるほどの拍手が巻き起こる。
拍手が静まると、ジルベールが一歩進み出て演説する。
「本日はお集まりいただき、感謝します。遅くなりましたが、私、ジルベール・ラ・ド・アヴリルプランタン。ますます精進します――」
演説が終わると、再び拍手が巻き起こる。
ジルベールと目が合い、微笑まれる。幸せな気持ちになりつつ、レティシアも微笑みを返した。
「それではこの後は王太子夫妻の結婚式となる。しばし待たれよ」
陛下がそう言うと、レティシアはドミニクにエスコートされ、退出する。
この後はレティシアも主役となるのだ。
使用人達が慌ただしく準備する中、レティシアはジルベールと合流する。
「レティシア、体は大丈夫かい?」
「もちろんですわ。先ほどの演説、素晴らしかったです」
「ありがとう」
「それじゃあ、俺はこの辺で。殿下、”義妹“をよろしくお願いしますね」
「……もちろんだ」
一瞬、ジルベールが渋い顔をした。
どう考えても、レティシアを妹扱いしたからだろう。
「もう、殿下。義理とは言え、兄妹ですよ?」
「分かっているんだが……なんだろう、ドミニクが兄なのが納得いかない。彼は弟だろう」
「まあ! ふふっ」
まさかのドミニクが兄なのが、違和感がすごいからだなんて。
まだまだレティシアはジルベールを理解しきれていない。けれど、それもこれからだ。
「まあドミニクのことはあとにしよう。……レティシア。これからもよろしく」
「ええ。こちらこそよろしくお願いします」
いつも読んでくださりありがとうございます
作者は豆腐メンタルなので、過度な批判や中傷は御遠慮いただけると幸いです。




