100.殿下からの提案は……
記念すべき100話目です!
時々休みながらもここまで来れたのは皆様のおかげです!
ありがとうございます!
ドミニクから宣言を聞いてから、レティシアは皆がどんどん変わっていくのに、焦りを感じ始めていた。
皆が急かしているわけではない。ただ、レティシアは自分が全く進んでいないように感じてしまうのだ。
そんな時、必ず励ましてくれるのはジルベールだった。
どんなに忙しくても、相変わらず週に2~3回は来てくれる。
毎回体力作りにも付き合ってくれる。レティシアの気持ちが焦っていると、決まってやって来て落ち着かせてくれるのだ。
てっきりセシル達から話を聞いて来ているのかと思ったが、何となくレティシアが焦っていそうだなと感じるらしい。
そのタイミングで会っているわけではないのに、勘が鋭いなと素直に感心した。
ジルベールは恥ずかしげもなく、レティシアをよく見るようになったからかな、なんて言うものだからレティシアは頬が赤くなるのを止められなかった。
そして気分転換だと、観劇を観に行ったり買い物に行ったりした。
ジルベールと観る観劇は途中で距離の近さに戸惑い、集中出来なかった。
それでも、レティシアは何故か決断することが出来なかった。
自分はどうしたいのか、どうしても分からないのだ。
そんな日々を過ごし、さらに1年ほど経過してしまった。
もう20歳になった。いい加減に決めたいところである。
けれど全く進展がないというわけではない。
レティシアの気持ちは固まりつつあるのだが、最後の一歩が出なかった。
今日もジルベールはレティシアの元にやって来た。そしてレティシアの焦りを見抜いているようだった。
「レティシアが慎重になるのも無理はない。それほどまでに、私のことを考えてくれているのだと思うと、嬉しいくらいだよ」
「……確かにずっと殿下のことを考えていますわ」
「嬉しいことだけれど、良いことかというと頷けない。レティシアは私に縛られているようにも見えるんだ」
ジルベールは今までのことから少し踏み込んできた。
思考に集中して、視線は下を向く。自身の手を見つめながら、レティシアは言う。
「縛られている……。それはある意味当然かと。わたくしの決断が殿下にも影響を及ぼすことは明らかです」
「そうだね。それは否定できない。けれど、レティシア。私は、別に玉座にしがみつきたいとは思っていないんだ」
ジルベールの言葉に、レティシアは顔を上げる。
その表情は、穏やかだった。
「私が国王にならなくても、弟のどちらかが王位に就く。それに対して何ら心配はしていない。2人とも、素晴らしい王になるだろう。私はそれを支える立場で構わない」
「殿下も、血の滲むような努力をされてました。そんなあっさりと……」
ジルベールが未だに立太子していないのは、婚約者であるレティシアが宙ぶらりんなせいなのは明白だ。
半年を過ぎたあたりから、ジルベールが痺れを切らすかもしれないと思うと寝れない日もあった。
それでもジルベールはこうして欠かさず、時間を作ってくれる。その日々の積み重ねが、もうジルベールがレティシア以外考えていないということを、理解しているのだ。
それなのに。
「実を言うと、そんなにあっさりでもない。悩んだよ。けれど、王になることが目的ではない。このアヴリルプランタン王国をよりよいものにしたいんだ。そう思えば、陰から支えるということも悪くない。それに」
そこまで言って、ジルベールは大きく息を吸う。
「弟たちは、ちゃんと婚約者達と良い関係を築けている。何も問題がなかったわけでもないのに。そう思うと私には至らない部分があるのだとまざまざと見せつけられたようだった。そんな者が、上に立てるとは思わないよ」
「そんな……」
「レティシアはどうして、そこで悲しそうな顔をするんだい?」
ジルベールはレティシアに問う。それにレティシアは、迷うことなく答えることが出来る。なぜならレティシアにとって不変の思いがあるからだ。
「わたくしは殿下が王になるに相応しい方だと思っているからです」
「そこまで信じてくれているのに、レティシアが自分の立ち位置を決められない理由は?」
「それは……」
ジルベールにさらに問われ、レティシアは考える。
そう、ジルベールの言う通り、ここまで信じているのなら、ジルベールの手を取っていいはずだ。
なのにレティシアがそれをできない理由は。
「……自分に自信がないのです。わたくしが再び殿下の婚約者に戻ったとして、きっと今まで以上に期待されるでしょう。意識、無意識にかかわらず。わたくしはあの日から変わっておりません。その状態で、殿下の隣に並び立てる自信がないのです」
それこそレティシアが焦燥感を覚えた根源。
今までは、何も考えていなかった。決められたことに従うだけで、自分で決めたことではない。敷かれたレールを歩いていただけ。
確かに見合うような努力はしていた。けれど、それは決まっていたから頑張るしかなかっただけ。
それが今はレティシアの意志に委ねられている。
それが怖いのだ。
果たしてこんな状態で、やっていけるのかと考えてしまう。
ジルベールと話すうちに、自分の奥底の思いが出てきた。
レティシアの言葉に、ジルベールは思うところがあった。
「レティシアは自身を過少評価していると思う。それはクロード殿たちから言われているだろうけれど。私はこれに関しては何か言うことはできない。私が言ったその瞬間、強制することになってしまうから」
「そう、ですね」
「だからレティシア」
そこまで言って、ジルベールはレティシアの手を取る。その紫の瞳は、揺れているけれど決意に満ちていた。
「私はしばらく、レティシアに会うのを止めよう。その中で答えを見つけてほしい。私たちは数年前と比べものにならないくらいに、歩み寄れていると思う。だからこそ、私のことを考えてしまうと思うんだ」
その言葉に、レティシアは今まで以上の焦燥感を覚えた。
いつも読んでくださりありがとうございます
作者は豆腐メンタルなので、過度な批判や中傷は御遠慮いただけると幸いです。




