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第49話 新たな面倒事

 カイゼルアカデミー一学年特別課外授業が終わり、帝都・カイゼルへと戻って来たヴィーは、早速我が家へと帰って来た。


「……本当に出来てる」


 眼前には自分が幼い頃から育って来た木造平家の家屋。


 そして、その両隣には、シュウトの言ってた通り新たな家屋が建っていた。


「おー、ここが新たな我が家かー。 でも、ちょっと小さくねえか?」


 ヴィーと共にやって来たガイルが、新しい家屋を見て文句を言い出した。

 そもそも、魔族の頂点である七騎将として、魔界ではそれなりに豪華な屋敷に住んでいたのだから無理はない。


「私は別に、ヴィー様の隣なんだから、住めるだけで全然オーケーよ。 勿論、ゆったりしたバスルームと綺麗なトイレと大きな鏡の化粧室があればね」


 三つともヴィーの家と同じ造りなので、内装としてはキッチン付きリビング、寝室、バスルーム、トイレとなっており、残念ながらシャリアの想像とは異なっているのだが。



「さてと、今日はもう遅いし、早めに休もう」


「えー? ヴィー様〜、今日は引っ越し祝いとして、二人でディナーでもどうですか?」


「おい、俺は除け者かよ?」


 朝にハマーンを出発し、帝都・カイゼルに到着したのは夕方。

 今回の遠征では色々あって疲れていたヴィーとしては、今日は早めに休みたかったのだが……。


「引っ越して来たばかりなんだから、今日は家の整理とかあるだろ? 引っ越し祝いならまた改めてしてやるから、今日は勘弁してくれよ」


 と言っても、必要最低限の家具は既に配置済みなのだが。


「ぶー! ヴィー様のいけず!」


「ちょっと待て、じゃあ晩飯はどーすんだ? 買い物に行くにしても、来たばっかでなんにも分かんねーぞ?」


 確かに、引っ越して来たばかりな上に魔族である二人に、自分で買い物をして飯を食えというのはハードルが高いだろう。


「……分かったよ。 食材ならウチにストックがあるから、なんか適当に作ってやるからそれで我慢しろ」


 流石に一週間留守にしたので干し肉や根菜など日持ちのする食材しかないが、一応一人暮らしのヴィーは最低限の調理は出来るのだ。


「あ! それなら私が料理を作りますわ! この間も言いましたが、私って家事ならなんでもこなせますので」


 ここでシャリアが調理に手を挙げた。


(……正直、料理してくれるのはありがたいが、シャリアと家事が結び付かないんだよなぁ)


 シャリアの外見は、肌の露出が多いドレス状の軽装鎧。 まさに、魔族の女王といった見た目なので、家事には縁遠い印象だった。


(それに、三人で食事となると……結局ウチで食事の流れになるよな?)


 ヴィーとしては、今日は晩飯を抜いて、シャワーを浴びてとっとと寝ようと考えていたのだが、シャリアとガイルが家に来てしまうと、いつ休めるか分からなくなってしまう不安があったが……仕方ないので一緒に晩御飯を食べることになった。



 ……結果、ヴィーは、シャリアが家事は得意だと言っていたのを信じていなかったのだが……シャリアの作った料理は驚く程に美味しかった。

 材料は干し肉と根菜と硬めのパンだけだったのだが、シャリアの手に掛かればレストランで出てくる料理に大変身したのだ。



 だが……結局二人は中々帰ってくれず、最終的にヴィーがちょいギレして二人を追い出し、引っ越し祝いは終了した。




 __翌日、カイゼルハンターズギルド第三支部。



 ガイルとシャリアは今回の亡命の件で、ミゲールと謁見する必要があるのだが、残念ながらミゲールが他国を訪問していたため、それまでは家で待機となった。


 ヴィーも今日くらいは休もうかとも考えていたのだが、トラフトから連絡があり、ハンターズギルド第三支部にやって来た。



「おう! おかえり、ヴィー! おみやげは~?」


 ヴィーの帰りを待ちに待っていたトラフトからの連絡を受け、早速ハンターズギルド第三支部で、トラフト、ダイス、カインと再会していた。


「お土産なら、ほら」


 ヴィーから三人に、スシのキーホルダーが手渡される。


「なんや、キーホルダーかいな!?」


「ハハハ、スシか。 面白いな」


「スシか……最近食べてないな。 久しぶりに母さんや弟と妹に食べさせてあげたいな」


 スシを食べさせる場所は帝都でも限られており、しかも富裕層向けの高級レストランだけなのだ。


 ちなみにキーホルダーの種類は、トラフトがタコ、ダイスがイカ、カインがエビ。

 マルクは実家に帰っているのでまだ渡せないがタマゴを、そして一応自分の分としてマグロを購入している。



「さてとー! 今日はヴィーも復帰した事やし、ギルマスのヤーマンさんにお願いして、ちょっと難しい依頼受けられへんかな?」


「そうだな。 あの盗賊団の件以来、素材探しじゃ物足りなくなってしまったからな」


「おいおい、いくらヴィーがいるからって、俺達はまだEランクなんだから、身の丈に合った依頼をこなすべきじゃないか?」


 それぞれが意見を交わす中、ヴィーとしてはみんなで依頼をこなすのが目的なので、難易度はどうでも良いと思っていた。



 そこへ、受付のミアがやって来た。


「失礼します。 お忙しい所申し訳ないのですが、ギルドマスターが呼んでおりますので、二階のマスターまでお越しいただけませんか?」


「噂をすればや!」


 トラフトとダイスにとってはまさに渡りに船。 早速ヤーマンからの呼び出しに、難易度の高い依頼を期待して、ギルドマスター室へ向かうのだった。



「よう、期待のルーキーども! 久しぶりじゃねえか!」


 相変わらず豪快な雰囲気のヤーマンに促され、四人はソファーに腰を下ろす。


「さて、今回は、おまえさんらにも利のある提案があるんだ」


「提案? ……まあ、その代わりに無理難題を吹っ掛けるつもりなんですね」


 シュウトとの付き合いに慣れてしまったヴィーは、ヤーマンの思惑をアッサリと看破した。


「まあ、そうだがよぅ。 でも悪い話じゃねえぜ? 今回の依頼を無事にこなせたら、おまえらを特例で昇級試験を免除して今すぐDランクにしてやる」


 本来、学生はEランクまでしか昇級出来ず、卒業時までに実績を積んでいれば試験免除でDランクに昇級出来るのが決まりとなっている。

 それを、まだ卒業まで半年を残した状況で昇級させるというのは、確かに異例ではあった。


「ほ、ほんまですか!?」


「俺達がDランク……マジかよ」


「あんなに欲していたDランクがこんなにアッサリ……」


 三人はヤーマンの申し出を無条件で喜んでいたが、ヴィーは上手い話には裏があるのを危惧していた。



「で、条件となる依頼とは?」


 それでもヴィーは、自分がいれば大抵の依頼は問題なくクリア出来るだろうと考えつつも、どうしても嫌な予感がしていた。


「これは本来、第一支部への依頼だったんだが、依頼主のたっての希望でな、同年代のハンターを四名ご所望なんだ。 で、当然第一支部にも、そして第二支部にも、依頼主と同年代で、この依頼を遂行出来る人材はいなかった。 だから、こうして第三支部にお鉢が回って来たって訳だ」


 同年代で、第一・第二支部に人材がいないとなれば、依頼主は学生の年齢という事になる。


 ヴィーの嫌な予感は更に膨らんでくる。 最初に第一支部に依頼されるような難易度の依頼で、学生以下の年齢からの依頼……。


「聞いて驚くなとは言わないが、心して聞け。 この依頼は、絶対に失敗が許されない……」


 ヤーマンは散々勿体ぶって、四人を見つめる。


「今回の依頼は、帝王・ミゲール様のご子息、『トーレス・フェルナンド・ドールマン』様と、ご令嬢、『サーシャ・ダイアナ・ドールマン』様の護衛だ」


 ヴィーは悪い予感が的中してしまった事に頭を抱える。

 護衛対象が、ミゲールの子ども……“双子の兄妹”、トーレスとサーシャだったのだから。



 この双子とは直接面識があった訳では無いが、最終決戦後に数日間、王城の別館に滞在していた時に、帝王の隠し子ではと城内で噂になった事があった。

 その際、恐らくはヴィーの存在を確認しに来たであろう双子の存在を、遠目で確認していた。


 その時の双子の表情は……微妙。 怒ってるのか戸惑っているのか、少なくとも喜んでる表情ではなかったとヴィーは認識している。

 ヴィーが王城の別館から現在の家屋に移動したのは、この出来事も理由の一つだった。


 ミゲールの子どもは五人いるのだが、王位継承権においてトーレスは第一位、サーシャは四位。 次男と三男が二位と三位で、次女が五位となっているのだが、トーレスとサーシャは現在一五歳、もし、ミゲールがヴィーを養子に取ったとしたら……ヴィーがトーレスに取って代わる可能性はゼロではないのだ。


 勿論、ヴィーには一切そのつもりはないのだが、トーレスがどう思っているかは本人しか分からない。



(やっぱり、また面倒な事になってきたな……)

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