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死神のリグレット~魔王軍最強の死神、学生になる~  作者: Tonkye
第一章 死神、学生になる
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第11話 ハンター登録

 ……ハンターズギルド・シルマーリ帝国ガルビック第三支部。



 帝都ガルビックの街には計三つのハンターズギルドが存在する。


 主にB以上のハイランクハンターが多く所属し、依頼の難易度も高めな第一支部。


 様々な分野で第一支部に次ぐ、主にCとDランクのハンターが所属する第二支部。


 そして、Eランク以下の、最も多くのハンターが所属し、比較的簡単な任務だけを扱っている第三支部。


 今回ヴィーはトラフトとダイスに誘われて、マルクも交えてハンター部の部活動の一環でハンターズギルド第三支部にやって来た。



「まず、ハンター登録を行ってもらうで。 勿論、最初はFランクからやけど」


 特例を除き、ハンターの誰もがFランクからスタートする。 当然、部活動の一環である学園の生徒であれば、まずはFランクとして登録される。


(ハンターか……。 アンノウンだった頃に何度か見かけたが、皆中々の強者だったな)


 ヴィーの中でハンターという人種の評価は、騎士団と比べても決して低くはなく、むしろ高く評価していた。

 過去に魔王軍の一員として数人のハンターの戦闘を見学した経験があったのだが、そのハンター達は武力に長けており、戦闘能力だけならば勇者であるシュウトに肉薄する実力者もいたからだ。


 ……ただ、そのハンターは世界でも数人しかいないSランクハンター及びAランクハンターだったのだが、ヴィーの中ではそんな人材が評価基準になってしまっていた。



 ギルドの受付には三名の受付嬢がおり、それぞれハンター達が任務を受ける為に並んでいる。


 大人しく列に並んでいると、ヴィーとマルクの番がやって来た。


「新規の方ですか? 初めまして、私は受付を担当する『ミア』と申します。 それでは早速ですが初めにこちらの書類に記入をお願いします」


 小柄で可愛らしい受付嬢のミアに渡された書類には、名前・性別・年齢の他、自己PRの記入欄がある。


(……自己PRか。 剣術と体術はシュウトより少し上。 魔法に関しては全然使えないけど、俺には複数のコモンスキルがあるからなぁ……ちょっとチートだからその通りに記入したって信じてもらえないだろうし、ここは無難に書いとくか)


 結果、ヴィーは得意分野として、剣術と体術は騎士団見習いレベル、魔法に関しては使えないけどスキルを多数所持と記入した。



 ミアが記入された書類を確認すると、怪訝な視線をヴィーに向ける。


「剣術に自信がおありなのかもしれませんが、見習いとはいえ騎士団レベルは盛り過ぎではありませんか?」


 騎士は入団一年目が新米騎士、二年目から三年目までが新人騎士、その後は見習い騎士を経て中堅騎士と呼ばれる。


 そんな見習い騎士であれば、ヴィーなら武器を持たずに片手一本で、しかも目を瞑っても倒せるレベルである。

 自分としては、精一杯過小に評価したPRだったのだが、それでもミアからすれば、学生が何を自惚れてんだ? という話しだったのだ。


(え〜っと……じゃあどのレベルが適正なんだよ?)


 アンノウンとして目にした騎士や剣士、ハンター達は、皆この世界のトップクラスだった。

 だが、逆に低レベルの者と接した経験が少ないゆえに、Eランクハンターなら新米騎士レベルで、自分を少しだけ売り込む意図で騎士団見習いレベルにしようと思ったのだが、実際は違った。


 ハンターは主に、実力的に騎士団に入れなかった者が過半数を占める。 ましてや学生の身分であれば、見習いどころか新米とはいえ騎士団レベルの剣術を持ち合わせる者など、いるかどうかなのだ。



「スキルも、その歳で多数所持って。 自分を必要以上に強く見せるのは感心しませんよ? 実力に見合わない依頼を受けて、取り返しのつかない事になるのは嫌でしょう?」


 ミアがヴィーを優しく諭す。


 スキルとは、天啓ともいえるコモンスキルを最上位として、ごく稀に先天的に生まれ持った場合と、努力によって身に着ける後天的なものに分けられる。 そして、その多くが剣術なり魔法なり努力で身に付ける事ができる後天的な物が殆どだ。


 なので、基本的にスキルといえば、個人差はあるものの習得するのに長い時間の修練が必要となる。


 そんなスキルを複数所持してるなど、学生の身では年齢的に無理だとミアは判断した。


 ハンターズギルドでは、己の実力を過信した新人ハンターが自分の手に負えない依頼を請け負った結果、再起不能の怪我を負ったり、場合によっては死亡する事件が少なくないので、ミアとしては心を鬼にして、こういった自分を誇張していると思われるハンターに厳しく接するのだ。



「……すみません、剣術と体術が学生上位レベルに変更します」


「そうですね、気持ちは分かりますが、自分の力量をしっかり把握して向き合うのが、ハンターとしての第一歩です。 頑張って下さいね」


 結局、ヴィーは自己評価を更に低く設定し、記入し直したのだった。


 ちなみにマルクは、学園で諜報部の部長を務め、隠密や潜入のスキルを少々と記入し、ミアに貴重な能力ですねと誉められていた。



「おう、記入は終わったか? 一応めぼしい依頼書選んどいたから、一緒に決めよか」


 ヴィーとマルクが登録を行ってる間、トラフトどダイスは依頼書が貼り付けられている掲示板から、今日の依頼を決めるべく何枚かの依頼書を選んで待っていた。


 ロビーのテーブルに集まり、皆で依頼書を確認する。


「最初はやっぱ薬草収集とか、街の害虫駆除やろな。 あんま危険も無いし」


「でも、ヴィーならゴブリン狩りでもイケるんじゃね?」


「いや、ゴブリンは群れに遭遇すると危険だからね。 ここはやっぱり、沼地のスライム退治とかじゃない?」


 トラフト、ダイス、マルクは、それぞれオススメの依頼書を選んで今後の行動を話し合っている。

 ヴィーはというと、その光景を微笑みながら眺めていた。


(なんか、楽しいな。 まるでピクニックに出かけるみたいで……)


 当然、ハンターの仕事は遊びではない。 どんな簡単そうな依頼でも、突発的なトラブルが起こる危険性は決して低くないのだから。 だが……ヴィーは父と母、まだ小さいソフィアと共に、弁当を持ってピクニックに出かけた、遠い昔の淡い記憶を思い出していた……。



「けっ、ガキどもが。 ここは遊び場じゃねーんだぞ!」


 すると、ガラの悪い三人組の男達が、トラフトに文句を言って来た。


「なんや? ここのギルドは学生禁止やないやろが。 つか、いい歳したオッサンがこのギルドに何の用なんや?」


 ヴィーには返り討ちにされたものの、元々トラフトは好戦的な性格である。 絡んで来た男達にも臆する事なく言い返した。


「まさか、その歳でまだロー・ランカーやないやろな? したら笑うで」


 ハンターは大まかに分けて、上位ハンターをハイ・ランカー、中位ハンターをミドル・ハンター、下位ハンターをロー・ランカーと呼ぶ。

 このギルドは難易度の低いレベルの依頼を扱っているギルドである。 つまり、このギルドにいると云う事は、高確率でロー・ランカー……Eランク以下の可能性が高いのだ。


「生意気なガキだなコラ、タココラ。 俺はCランクのハンターだ。 ここには暇つぶしに寄ってみただけだ。 テメーみてえなガキを躾ける為になあ」


 Cランクの戦闘力は、平均的に騎士と比べると中堅と見習いの間レベルに相当すると評価されている。 少なくとも、学生では相手にならないレベルである。


「……チッ、だからどーした? アンタらみたいな自分よりランクの低いハンターに絡む奴なんざ、怖くもなんともないわ」


 内心では相手のランクに怯みつつも、トラフトは引かずに強がった。 そして、ダイスもまた、トラフトと同じく内心の動揺を押し殺して、男達を睨み付けていた。


「ふん、いい度胸だなぁ、クソガキども。 だが俺は学生気分の、身の程を知らない生意気なガキが大嫌いなんでなぁ。 文句があるなら、少し痛い目見てもらおうか」


 そう言うとCランクの男は、トラフトの胸倉を掴もうと手を伸ばしたのだが……


「なめんなよ、オッサン!」


 胸倉を掴まれる瞬間、トラフトはCランクの男の顎を蹴り上げる。


 だが……。


「軽い軽い、所詮はガキだな」


 Cランクの男は全く意に介さず、改めてトラフトの胸倉を掴んで持ち上げた。


「は、離せや!」


「テメェから先に手を出したんだろう? ギルド内での喧嘩は御法度なんだが、俺はやられたらやり返さないと気が済まないんでな!」


 そしてそのまま、トラフトを壁に投げ付けた。



 トラフトは、壁にぶつかる衝撃を覚悟した……のだが。


「? ……ヴィー!?」


 壁に激突する寸前、いつの間にか移動していたヴィーがトラフトを抱き止めた。


「トラフト、ムカつくのは分かるが、あまり無謀な行為は避けた方がいい」


 突然絡まれ、不満を抱いたのはヴィーも同じだ。 だが、明らかな格上に突っかかるトラフトに、若さ故の危うさを感じたのだ。


「せやかて、あのオッサンが……」


「気持ちは分かるが、状況を考えろ。 喧嘩といえど、まかり間違えれば命に関わる可能性だってあるんだ。 こんな所でムキになって、取り返しのつかない目に遭ったらどうする?」


 時に、全てを投げ捨ててでも戦わなければならない場面があるのを、ヴィーは嫌と云うほど経験して来た。

 それでも、避けられる障害は避ける、それが長く生き延びる為の手段でもあるのだ。


「なんや! ほな、泣き寝入りしろって言うんかい!」


「時と場合によっては、何を置いても戦うという選択もあるだろうが……今回は違うだろ? 俺がいるんだから。 遠慮なく頼れ……それが仲間だろ?」


 返り討ちに遭ったとはいえ、トラフトもダイスも、ヴィーの実力をハッキリと理解してる訳では無い。

 相手はCランクのハンター。 如何にヴィーといえど、倒せるかは分からなかったのだ。



「なんだ、今度はヤサ男か? いいぜ、その綺麗な顔をぶん殴ってやる」


「ぶん殴る? 俺を? ……面白い、だったら、俺は一歩も動かないから、好きなだけ殴ってみろよ」


 ヴィーはCランクの男の目の前に立ち、やれやれと云った表情を浮かべる。


 そんな不適な態度のヴィーに、Cランクの男は舐められたと感じた。


「いい度胸だ……お望み通り、ボコボコにしてやるぜ!」


 Cランクの男の拳がヴィーの顔面を狙う……が、その拳は、まるでヴィーの顔面をすり抜ける様に空振りしてしまった。


「? なんだ? 確かに当たったと……」


「どうした? 俺の顔には傷一つ付いてないぞ?」


「くっ……今度は外さねえぞ!」


 またもCランクの剛腕が振り下ろされる。 トラフトやダイスから見ても、自分達であれば一発でもまともに喰らえば意識が飛ぶであろうその拳は、またも空振りになった。


「なんでだ? なんで俺のパンチが……」


「遠慮するな、どんどん打って来いよ」


「ぐぬっ……舐めるなクソガキがあっ!」


 ストレート、フック、アッパー。 大振りだが豪腕から繰り出されるパンチが、尽くヴィーの顔面をすり抜ける。


「クソ、なんでだ、当たれっ!」


「おまえ、本当にCランクか? 学生を殴る事も出来ないとは、もう一度Eランクからやり直したらどうだ?」


 ヴィーは何も特別な事はしていない。 ただ避けているだけなのだが、あまりにも無駄がなく、最小限の動きだけでパンチを躱している為、まるですり抜けている様に見えてるのだ。



「!! うるせえクソガキがあっ!!」


 怒りで頭に血が昇ったCランクの男は、攻撃を止めて、得物の剣を抜いたのだった。

※主な完結作品紹介


『漆黒のダークヒーロー』

『タイムスリップしたストライカー』


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