雨上がりのデッサン
ーー
いつからだろうか、
暗闇には雨が降っていた、
僕は傘を取り出して、
一人分の覆いを作った、
君の姿は見えなくて、
急がない足音が聞こえた、
雑音のような雨水の、
地面を這ってく姿も見える、
二人は隣で晴れ間をまってた、
しぶきが続く暗闇の道の、
終わりを目指して歩いてた、
光の時を夢見ながら、
互いの笑顔を夢見ながら、
二人は前へ進んでた、
ーー
友よ、
隣にいる力強さよ、
さあ手を握って、
濡れた手が友愛の修辞にもなり、
ああ笑顔になって、
煌めく音色を広げる滴り、
君としぶきをあげてく度に、
僕の傘は大きく揺れる、
君は傘をさしているのかと思ったり、
電気のように優しさが伝わる、
手を取りあった僕らって、
まるで子供の猫たちみたい、
ーー
ぴちゃぴちゃと跳ねる音の雫、
僕の耳にもやさしく滴る水、
でもそのやさしさは、
晴れ間に出れば消えるのだろうか、
僕らの目には見えぬのだろうか、
暗闇が少し暗くなる、
僕らは強く手を握る、
僕の傘は変わらず音を立てている、
まだ雨は続きそうだ、
ーー
長いこと雨に打たれると、
雨足の機嫌も分かってくる、
激しかった雨は通り過ぎると、
生ぬるい雨がやってくる、
絡みつくような湿気がやってくる、
僕らは未だに手を握って、
ベトベトとして少し嫌な感じ、
歩く度の摩擦の調べ、
急に寒気もしてくる感じ、
空間は霧のようにモヤッとしだして、
するりと抜けるのを待つだけの僕らは、
確かに二人で歩いてる、
熱も冷めてしまったけれど、
確かに二人は触れている、
ーー
ああ、気持ち悪い、
君の手を突き放すことだけ考えて、
暗闇に置き去りの君の滑稽、
雨は君を濡らして、
僕らはそれきり会うこともない、
君を背中に感じると笑みがこぼれ、
嘲りの匂いが漂う世界、
僕は考える、
孤独の世界を、
君のいない世界を、
そしてまた苛立ちが捗る、
錆れた鎖に繋がれたみたい、
雨が酸化を進ませて、
汚れが手にも付着する、
ああ、気持ち悪い、
傘を持たない君はきっと、
今も雨に濡れているんだね、
僕はそんな奴と手を繋いでいるんだね、
ーー
よく言うじゃない、
弱々しい花なんか見て、
きれいだと、
僕にもそんな想像が出来てきたよ、
でも傘は余ってない、
僕は涙の雨を降らして、
ごめんねと、
君はやさしく僕を労るはずさ、
ああ、やさしき人、
見えないけれどきれいなんだろう、
暗闇は惜しいことをした、
はにかんだ笑みも遮った、
雨の匂いが染み込んで、
きれいな人の笑顔も輝く、
ーー
晴れ間の光、
目に刺さり、
僕の期待が、
降ってくる、
やっと君の顔が、
見れるのだろうと手を繋ぎ、
さっと闇を駆けてゆく、
何度光を仰ごうと、
消えることなどないのだろうと、
あっという間の雨へ言う、
もうそろそろだよ、
ほら、行くよ、
さあ、
と、光はぱっと僕らを照らしてくれた、
手には雨粒が零れて、
僕は見たよ君の方、
そしたらどうだろう、
雨に汚れた君の笑顔、
傘の中から眺めてた、
きれいな手は滑り落ちた、
僕はもう分からなかった、
ーー