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夏祭りに行けず、一人図書館で過ごした日の話

作者: 南区茜

半エッセイです。

大変つたないですが、

自分が経験した楽しくなかった夏について書きました。

お読みいただけますと幸いです。

日がぎらぎらと照らす夏まっさかりのこと。

翔太は珍しく浮かない顔をしていた。


「つまんないな。今年の夏は何も楽しいことがない。」


彼は今年で15歳。中学三年生で、来年には受験が控えていた。

そのため、これまで通り遊んでいるわけにもいかず、部屋にこもって

勉強つづきの毎日を送っていたのである。


「来週末はうちの地区の夏祭りか…今年はその日も勉強しないとだよな…。」


去年まで、夏と言えば楽しい思い出ばかりだった。

海にプールに花火に夏祭り。友達と毎日遊んで、たまに家族と出かけたりもして、

とにかく夏は大好きな季節だった。


それなのに、今年は勉強ばかりで全然遊べない。


受験勉強ならしょうがないとも思うが、

毎年当然のように楽しい季節だと思っていた夏が、こんなことになるなんて

去年までの自分では考えもしなかった。




夏祭り当日。

彼は図書館にいた。

祭りはとっくに始まっている時間である。


「…はぁ。」


ため息をつきながら、しかたなく勉強をしてみる。


後悔と、今からでも間に合うのではという焦りから、

あまり内容は頭に入ってこない。


こんなことならいっそ行けばよかった。

そう思う心を必死に押さえつける。


気分を変えるため、翔太はあたりを見回した。

そこでは夏祭りのことなんて全く知らないような人たちが、

本を読んだり、勉強したり、それぞれの時間を過ごしていた。


ここにいる人たちは、貴重なこの夏をはたして楽しめているのだろうか。

自分は好きで図書館に来たわけじゃない。良いのであれば、今すぐ

こんなところ飛び出して夏祭りに行きたい。


夏祭りのにぎわいと対比したような静けさは、いっそう彼を焦らせた。

自分の楽しい夏に、こんなところは合わない!今すぐ出てゆきたい。


その気持ちを抑え込むのに精いっぱいで、翔太は勉強などもうすでに

とうに手についていなかった。


こんな気持ちになったのは初めてだ。



あたりではページをめくる音、シャーペンの走る音のみが聞こえてくる。



翔太はなんだか変に大人になった気がした。

落ち着いた人達の仲間入りをした気がして、少しの間だけ悦に入った。

それと同じくして、自分にはまだ大人は早すぎるとも感じた。

楽しいことだけしていたい。それが出来ないのが大人なら、大人には

なりたくないなぁ。

そんなことを考えたりもした。



夏祭りも終わるころ、翔太は図書館を後にした。

喪失感とごく多少の達成感を感じつつ歩く帰路は、夏だというのに妙に肌寒かった。


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