王都にきたけども
遅くてすいません
追手を撃退し何とか王都へ到着した。王都には都市への侵入を防ぐため、一周ぐるりと壁に囲まれており、東西南北にそれぞれの入り口がある。その南門へ到着した。
王都へ入るためには検問があり、その列に並ぶこと10分程。ようやく自分たちの番だ。
「次、乗合馬車か、全員身分証を見せろ。」
衛兵が身分の確認を求めてくるがそんなものは持っていない。
「やばくない?」
「やばいですね。」
「やばいな。」
「身分証ないとどうなるんだろう?」
「入れてもらえないとかですかね?」
「とはいえもうここまで来たらどうしようもないな。」
とりあえず衛兵さんに聞いてみよう。
「すいません。身分証とか今持ってないんですけど・・・。」
「は?持っていないのか?なぜだ?」
「なくしてしまいまして・・・。」
「そうか、全員ないのか?」
「えーっとですね・・・。」
衛兵さんと話していると馬車のおっちゃんは他の衛兵に身分証を見せており、ここまで護衛をしてきた人もゴソゴソと懐から身分証を出そうとしている。
「自分たち3人ですね。」
「そうか、ならそこの詰所で色々聞かせて貰おうか、怪しくなければすぐに終わるからついてきてくれ。」
「わかりました。」
衛兵さんに案内されて、詰所へ向かおうとした時。
「リ、リシテア様!どうしてこちらに!お父様から捜索願いが出ていたんですよ!」
「そう。」
「ご無事で何よりです。急ぎシューイット家に連絡致します。」
「お願いするわ。」
フードは被ったままでこちらからは顔が見れないが俺と岡島は初めて彼女の声を聴いた。
「あの子リシテアって言うんですね。」
「あいつ女だったんだな。まぁ荒殿が助けた時点で女以外ありえないが。」
「そんなことないですよ!」
「あとやっぱり、貴族っぽいね。これで護衛は終わりかな?捜索願い出ててみたいだしあとは衛兵さんに任せればいいでしょ。」
「そうですね。」
「話してるとこ悪いがお前たちリシテア様と同じ馬車でここまで来たよな?」
「はい、そうです。」
「そうか、なら詰所じゃなくて違うところで話を聞こうか。」
「どういうことですか?」
「しっかりと事情を聞くまでお前たちを離すわけにはいかなくなった。逃げるなよ。たった今お前たちには誘拐の容疑をかけることになったからな!」
衛兵が凄みを出してこちらを睨んでくる。
「まじかよ。」
「まだ終わりそうにないね。何事もなく終わればいいけど・・・。」
「詰所じゃない所って牢屋ですかね?」
「お前のせいでそうなるかもしれないな。」
「誘拐なんて事実無根なのでしっかりと話しましょう!寧ろ護衛してきたんですから!」
「話が通じるといいがな。」
衛兵に連れて来れれたのは門の近くにある建物でその中の部屋に一人ずつ案内された。内装はテーブルと椅子にベットがあるだけ。窓というか換気用の窓みたいのが手の届かない位置に3っつ。一つは建物の外側。もう二つは隣の部屋と繋がってるみたいだ。
牢屋よりはましだけど監禁されている感じだ。ほとんどの人がイメージする牢屋よりはプライベートが守られていて安心するが、この部屋の扉は一つしかなく、外側からしか鍵がかけられないので閉じ込められてしまったのだ。
「牢屋と変わんねーじゃねーか!」
隣の部屋から岡島の声が聞こえた。
そんな岡島と話そうと声が聞こえた方の壁に近づく。
キューブ。
足元にキューブで階段を作り、窓から隣の部屋を見ると岡島がいた。
「おーい。岡島。」
「ん?」
岡島は辺りを見渡して不思議そうな顔をしている。
「窓のほうだよ。」
「上か。てかよくそんなとこから顔出せるな。身長爆伸びしたか?」
「違うよ。キューブで階段作っただけ。椅子とか机に乗ればそれでもいけそうだよ。」
「そうか。それよりも、結局捕まってね?」
「捕まったというか、閉じ込められたというかだね。」
「最悪だな。」
「汚い牢屋よりはましじゃない?閉じ込められてるけど、宿屋とそんなに変わらないでしょ。」
「そうだな。武器とかも取り上げられなかったしな。」
「サイドポーチに入ってるから気づかなかったのかな?」
「サイドポーチがどんな価値あるかだよな。門ならんでる時冒険者がちらほらいたけどみんな武器自分で持ってたし。」
「存在しないのかもね。そうなると価値が高くなるね。」
自分たちが装備しているサイドポーチはゲームの時からの初期装備で武器、ポーション、食料、お金をしまっておけるマジックバックだ。腰につけておくのでサイズは小さいが武器や食料などの限定的なものなら大きさ、量関係なくしまっておける冒険の必需品だ。食料入れても腐らないし、さっと武器やポーションを出せるから戦闘にもかかわってくる。初心者向けの講座でサイドポーチから武器やポーションを出し入れする練習があるくらいだ。
「だいたいこういう異世界ものってマジックバックみたいなのってレアで珍しがられるんだよな。」
「輸送技術がないような世界では重宝するでしょ。バカでも簡単に大儲けできるし、サイドポーチ気を付けないとだね。」
「だな。それとこの部屋魔法使えるんだな。」
「使えちゃうね。キューブも出せるし、隣の部屋からエンチャントも出来るよ。」
「ガバガバじゃん。簡単に逃げられるぞ。」
「罠かもしれないし、それか、一応誘拐で疑われてはいるけどそこまでじゃないのかもしれない。本気で疑うなら牢屋に入れた方がいいだろうし。」
「そうだよな。スキルとか封じなきゃ荒殿なんて簡単に扉壊しちゃうだろ。」
「後で注意しとくよ。反対側にいるみたいだし。」
「任せた。とりあえず今日はもう遅いし寝ちゃっていいか?」
「いいんじゃない?暗殺とかされないよね?」
「大丈夫だろ。それに俺の危機察知が寝てても教えてくれるから。」
「便利じゃん。でもそれで起きれる?」
「俺アラーム付ける時、5分おきで早めにたくさんセットするタイプなんだよね。」
「それ起きないやつじゃん!起きれない人がやるやつじゃん!」
「だから任せとけよ。」
「なにが!どこが!だからだよ!不安しかないじゃん。寝てる時にナイフとか刺されたら嫌なんですけど。キューブで扉塞ぐか、いっそのことキューブの中で寝れば安心かな。こっちは自営手段あるけこのままじゃ荒殿だけ死ぬな。」
「キューブで守ってやれば?」
「めんどくさいし、今日は絶対にやらん!」
「現在の状況の元凶あいつだからな。」
「そうだよ。暗殺の心配なんてないだろうけど。今日だけは守らない!」
「自業自得ということで。」
「そういうことで。じゃああいつに声かけてこっちも寝るよ。おやすみ。」
「はいよ。おやすみ。」
岡島とのふざけた会話をやめて、反対側にまたキューブの階段を出して覗き込む。そこにはスヤスヤとベットで眠る荒殿がいた。
「あいつまじでいい性格してるな。腹立つわ。」
のんきに寝ている荒殿にムカつくので顔の上にキューブを出して落としてやった。
「ふがっ!」