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覚悟と追手

 とある寂れた酒場。


「まだ娘は捕まらないのか?今がチャンスなんだぞ!」

 がたいがいい男が酒を飲みながら怒鳴り散らす。

「す、すいません。邪魔が入りまして・・・。」

「言い訳してんじゃねーよ。てめえのせいでたんまり儲けられるのがパーになるだろうが!とっとと見つけてこいや!」

 男が酒瓶を手下に投げつける。

「お、お頭!大変です。娘が馬車に乗って王都の方へ向かっています!」

「ちっ!てめえのせいで逃げられるだろうが!おい、馬を用意しろ。すぐに追いかけるぞ!王都まで行かれたらしまいだ!」


 お頭と呼ばれる男は手下を連れて酒場を出る。その顔は笑みを浮かべて。





 馬車に揺られて一時間ほど何事もなく進むことが出来た。今はさっきの街と王都の間にある森の中を進んでおり、森を抜けると王都があるらしい。


「今のとこ何もないね。」

「そうだな。このまま王都につけば楽でいいんだが・・・。」

「それフラグだよ。」

「・・・やっちまったか。」

「まぁ、大丈夫でしょ。それよりさ、襲撃となると人が多分人が襲ってくるわけじゃん?」

「だな。」

「岡島の武器はナイフと弓なわけで、今回の場合弓で戦うことが予想されるんだけどさ。」

「おう。」

「人、撃てる?」

「・・・・・。」


 この世界に来て初めての戦闘が対人戦となるだろう。普通ならモンスター、魔獣と戦って戦い方とかしっかり把握するべきだろうけど、そんな時間はなかった。対人戦となれば人を攻撃しなければならない。

 ゲームの時でもPvPはあったが、攻撃してもされても痛みはなく血がでるようなことはなかった。あるとすれば、攻撃を受けたときに動きづらくなったりするくらいだ。HPがなくなってもリスポーンすることが出来る。しかしここは違う。痛みがあり、血も出る。そして、死ぬことだってある。自分が攻撃すればその逆もある。元の世界と違い、警察がいるわけでもないし、銃刀法があるわけでもない。誰しもが武器を手に取ることが出来る世界で、自分の身は自分で守るような世界なのだ。


 護衛とはいえ人と戦うなら覚悟しなければならない。


「いきなりは難しいよね。」

「分かってはいる。さっきの散策の時に今ここが俺たちの現実であり、元の世界と全く違うことは理解している。だけど・・・。」


 岡島も分かってはいるのだろう。護衛、そして人と戦うことが簡単でないことに。だからこそ言葉を詰まらせてしまった。


「俺もある程度覚悟はしてるけど、実際に出来るかどうかは分からないよ。それも魔法職だからってだけ。荒殿みたいに近接戦闘しないといけないってなると多分無理だと思うし。でも、この世界だとやらなかったら自分がやられる。そうじゃなくても二人がやられるかもしれないからね。そうならないようにしようとは思ってるけど。」

「そうだな。」

「それに今回は追いかけてくるか、待ち伏せだろうし、殺さなくても妨害すれば大丈夫だと思ってる。王都に着けば衛兵とか門番とかいるでしょ。」

「俺もわざわざ人狙わなくても馬とか撃って妨害にてっすればいいか。緊急時以外は。」

「そうそう!覚悟は必要だけど、考えすぎないようにいこうよ。」

「お前から言い出したけどな。」

「念の為だよ。」


 楽観的に言うと岡島も気が晴れたのだろう。自分から言い出したことだが、もしもの時に行動出来なかったら死んでしまうかもしれない。だから頭の片隅にでも入っていればいいと思って話題を振ったが大丈夫だろう。


「でも、馬撃って落馬したら死ぬかもしれないですよ?元の世界でもありましたし。」


 横から空気を読めない発言をする奴がいたから。二人でそいつの横腹を殴ってやった。





 それからほどなくして。


「翠、俺のスキルの危機察知が反応してるぞ。後ろからだ。」

「敵の数のとかわかる?」

「6人だな。」

「待ち伏せとかいなさそう?」

「後ろからしか反応ないから今のところは大丈夫だろ。」

「分かった。一旦足止めの為にキューブで道塞いじゃおうか。」

「頼んだ。」


 馬車の後ろ側に移動し、箱の魔導書に触れる。


「キューブ。」


 道を塞ぐため、一辺5メートルほどの立方体を馬車後方に生み出す。


「これで少しは稼げるといいけどね。」

「反応的に馬に乗って来てると思うが、あのキューブを避けて森に入るとさすがにスピードは落ちるだろ。結構木々が生い茂ってるから駆け抜けるのは無理だと思うぞ。」

「普通に考えたら無理だと思うけどさ、異世界だから断言できないよね。」

「駆け抜ける奴いたら化け物だな。」

「とりあえずは、後ろに注意しつつ様子見だね。」


 そうして緊張感に包まれながら馬車に揺られていく。




 


「お頭、前方に変なものが・・・。」

「止まれ!なんだこれは?こんなところに壁なんかあったか?」

「ないとは思われますが・・・。」

 お頭と呼ばれる男は手に斧を持ち思いっきり振りかぶる。

「ちっ!ビクともしねえ。回るしかないか。ふざけやがって!」

 





「翠。また来たぞ。」

「意外と時間稼げたね。王都まであと少しじゃない?」

「おっちゃんにあとどれくらいか聞いてきますね。」

「任せた。どうする?またキューブで時間稼ぎするか?」

「そうだね。効果的だったし森抜けるまではそれでいいかもね。」


 さっきと同じようにキューブを出し、追手の妨害をして時間を稼ぐ。


「聞いてきました!あと少しで森を抜けて王都が見えてくるそうですよ。」

「となると今はいいけど森を抜けてからだね。森抜けてから王都までどれくらいかによるね。道がひらけてるとただキューブ置くだけじゃ妨害にならないし。」

「その時は馬攻撃するしかないな。」

「そうだね。馬から落とせば追えなくなるでしょ。」

「走るより馬車の方が速いからな。」

「じゃあそれで行こう。」

「落馬したら死ぬかもですよ?」


 無言で荒殿に蹴りを入れた。





 

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