他人のでなく、自分の顔 著者: ジョシ・プラカシュ・ヴィカス 和訳:ボーミク・アルナブ
ビカス脚本の作品
観戦者は息を潜め、ドキドキして見ていた。皆はこの時を待っていた。
九月の日光に浴びて、プネ市のカルキ―・サッカー・スタジアムは「ディス(DIS)行け!」「ロヤル(Royal)がんばれ!」という応援の声で響いていた。プネU-13中学校サッカー大会の決勝戦だった。ダイヤモンド・インターナショナル・スクールのゴールキーパー、プランジャぺ・ロシャンは手袋と緑のジャージを調整して爪を噛んだ。このピーケー(PK)を決められるわけにはいかない事をロシャンは分かっていたからだ。
スコアボードの2対1スコアはディスを報いていた。10年間で初めてロヤル・ナショナル・アカデミーを負かす機会がディスにはあった。この大会でディスは挑戦チームで、ロヤル(ロヤル・ナショナル・アカデミー)は前年の優勝チームだった。ロヤルはオレンジ色のシャツを着用してサッカー場の左側に立っていた。右側にディスチームは濃緑色のカッコいいシャツを着用していた。ロシャンは右側で見ていたディスを応援していた両親と友達のうるさい緑組がいた。彼らは選手に必要である水の瓶、バナナ、ゲータレード、スポーツドリンクを持っていた。
ロシャンは、父さんが緑色のポロシャツとジーンズを着用してiPadで録画している姿を見た。母さんは緑の上半身と白の下半身のパンジャービードレスを着用して隣に座って「ロシャン行け!」「ロシャンがんばって!」と大声で応援していた。友人のパッラヴィーは父さんの隣に座って「この試合でディスは間違いなく最高のチームだ」と書いてあるポスターを振っていた。
ロシャンの視線はサッカー場に戻った。そこに仲間達のハルプリートキャプテン、シデゥちゃん、最高のディフェンダーのオナム・クッティーとディス(DIS)サッカーチームがいた。シェッティー監督は爪を噛んだ。彼らの緊張感は表情に出ていた。ロシャンは深呼吸して祈りを唱えた。
ロヤルのベストストライカー、ケスワニ・リシャブはピーケーシュートの準備をした。この大会でリシャブは誰よりも多くのゴールを決めた。ロヤルのチームメイトは「リシャブ行け!」「リシャブがんばれ!」と叫び始めた。リシャブは汗でごちゃごちゃになった逆毛をくしゃくしゃにしながらボールに走った。
ロシャンはシェッティー監督の言葉を思い浮かべた。「リシャブは左の上下から多くの点を決める。あなたにとってそれは右だ。」
ロシャンは深呼吸して自分の太股に爪を刺してしゃがんだ。観戦者は立ち上がってこの時を見ていた。
ドキドキ!
自分を信じて全力で右に跳んでゴールポストの白い柱の近くドシンと落ちた。時間が立ち止まった。
ロシャンは一刻も早く立ち直ったが、リシャブの表情を見て状況を把握した。
リシャブのキックの強さと地面に落下した事でロシャンの手と身体が痺れてきたが、ハルプリートキャプテンは「のっぽくん、おめでとう!」と燥いで走ってきたので、痺れはどうでも良かった。ハルプリートはロシャンを抱きしめた。
「ロシャン、おめでとう!」
「ゴールキーパーになるのなら、ロシャンみたいになれ!」
この標語はロシャンの耳元に音楽として響いた。10年振りにディス(DIS)は優勝した。シェッティー監督はロシャンを肩に乗せてチーム全員と一緒にヴィクトリーランをした。
チーム全員はメダルを首から吊るして、デカい黄金の優勝杯を真ん中に置いて撮影に集めた。リシャブは大会の「得点王賞」を貰って、ロシャンは「ベストゴールキーパー賞」を獲得した。その後両親達が寄って来て、皆で写真撮影をした。
皆バスに乗って帰った。帰り道で彼らは情熱的に歌った。ロシャンはこの日が最高の日だと思った。
バスから降りて家の近くの駐車場に赤いスコダ・オクタヴィアを見てロシャンはワクワクした。母さんは着替える為、午後7時前に家に帰った。
父さんと母さんは自宅オフィスで座っていた。母さんは、読んでいた赤くてデカい法律の本を置いてロシャンを抱きしめた。
「おめでとう!」父さんはハイファイブしてロシャンの背中を撫でた。夕飯でプリー、アムラ、じゃがいものカレーを食べた。
ロシャンは、ワクワクしながらゲームを振り返った。「リシャブを抑えないといけない事を分かっていたから、厳しくマーキングした。前半でハルプリートキャプテンは2点を決めて、その後リシャブは1点を取った。僕は最後まで緊張していた。ピーケーは凄く楽しかった。」
「ハルプリートは2点を決めたが、お前は数え切れない程セーブした!お前達は優勝コンビだ!」そう、父さんはからかった。
「学校で私はスポーツがうまかったからなぁ!やっぱり、ロシャンは母そっくりだ!」母さんはロシャンの頭を撫でた。
「プランジャぺ・ゴシャル・バスンダラ、あなたは学校で各科目に一番多い点を取得して、スポーツも一番うまかったなぁ!どの学校だったか、教えてくれよ。」父さんは皮肉を言った。
母さんはそれを無視して食事に集中した。だが、父さんの表情から母さんの足と父さんの脚に何か接触があったみたいだった。
ロシャンは父さんと母さんの顔を見た。急に面白い事は念頭に浮かんだ。
「母さん、僕は誰に似ているの?母さん、それとも父さん?」
母さんは前髪を切りそろえて銀色まじりの黒い髪を慎重に触った。新しい髪形だった。母さんは浅黒くて、脂性の肌で、背が低かった。
父さんはクスクス笑って、白肌の細い脚を伸びた。「俺達に似る必要はあるか?今のままでも十分カッコいい」父さんの目にいたずらっぽい輝きがあった。
寝る前ロシャンは鏡を見た。向こうの少年は平静に冷笑した。毎朝見ていた同じ顔だったが、最近よく見ていた。
目立っているほお骨、浅黒い肌、しわくちゃの髪といたずらっぽい目の少年は鏡の向こうからロシャンをじっと見ていた。確かにプランジャぺ・リシケシュ・ロシャンは両親、特に父さんに似ていなかった。何度も、奇異な、怪しい、意地悪い、発言等色んな音調でこの事を聞いた。
「やっぱり似ていない」
ベッドに丸めてロシャンは考えていた。
「父さんにも母さんにも似ていない事は事実だけど、僕には僕だけの顔がある。」
それで十分だった。
その夜ロシャンは、サッカーW杯でブラジルを相手チームにしてゴールキーパーをやっている夢を見た。インドの首相、高官、ボリウッドの有名な俳優達、父さん、母さん、パッリーとも言う友人のパッラヴィーの前ムンバイでその試合は行われていた。パッリーは情熱的にずっとインドの旗を振っていた。観戦者は騒々しくブブゼラを吹いていた。ロシャンを抜けて1点も決められなかったからブラジルチームは負けた。
優勝チームの全員は黄金のメダル、賞杯と小切手を貰った。そして、ロシャンの為に特別な商品が用意されていた。首相様はロシャンに「ベスト・プレイヤー」の商品を手渡した。その後大きい体重計でロシャンを測って、同じ重量のシルキー、フルーツ・ナッツのチョコレートをくれた。車を雇ってチョコレートを家まで持ってきた。凄く美味しい夢だった。