とある惑星人類の場合9
「これで終わりだな」
ソファに背を預けながら、映像を見ていたアダンが呟いた。
映し出されているのは狂人によって不毛の大地へと変貌したほしの様子だ。
「一応、僅かですが生きている者はいますよ?」
「生きていても、こんな状況じゃ時期に滅ぶだろ」
戦争で疲弊していく最中で、国や地域などお構いなしの絶大な爆弾が全てを無に帰したのだ。食える生物の殆どが焼けたり波に呑まれたりしている中ではいずれ食べる物が尽きるのは明白だろう。
「仮に食糧の確保が可能な場所に人間がいたとして、次に繋ぐために子孫を残すという行為が希薄になりつつあったほしだ。番でいたとしても子どもを授かろうとする者達も少ないだろう。まあ危機的状況故に活発になる可能性もあるが……まあ二、精々いって三世代で潰えるさ」
「そうですね……ところで、昼夜関係なく光が遮られている状況は人間以外に生物にも影響が大きいですね。アレに巻き込まれて滅んだ生物も多いですが、これではもっと増えそうです」
爆弾によって休眠状態だった火山が幾つか活動を再開し、既に分厚く空を覆っていた雲は火山灰が加わることでさらに厚さを増し、それにより日の光を浴びることが出来ず、どうにか難を逃れていた植物にも影響が出ていた。
「それはもう、そういうもんだと受け入れるしかないな。けど、たとえ巨大隕石が落ちようとも、地表が氷河に覆われようとも、なんだかんだでしぶとく生き延びて、最終的に何事もなかったかのように生きてるから大丈夫だろ」
「それは自分の経験に基づいてですか?」
「まあな」
どれほど荒廃した土地でも時間が経てば草木が生い茂り、動物が駆け鳥は飛び交うことをアダンは過去に目の当たりにしているからこそ、実感を込めて返事をした。
「そういえば、今回の報告書は貴方が書いてくださいね。前回は私がやったので」
「いや、イブリアが書いた方が良いだろ。めちゃくちゃ見やすかったし、情報の整理の仕方も良かったんだから」
書類仕事が苦手な少年は少女が受け持ってくれるよう褒めて持ち上げる。
「……苦手なら教えますよ?」
嫌味を込めてか満面の笑みを見せながら、イブリアが問うた。
「いや、ダイジョウブです」
薄ら寒いものを感じ、アダンは断るといそいそと作業を始めた。