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とある惑星人類の場合8

 日ごとに各国の緊張感が増していく中、突如とある二国間の国境沿いで戦闘が起きた。

 両国間共に政府内で把握していた行動などではなく、軍高官の独断により起きたものだった。

 しかし軍の暴走により起きたなどと弁解するわけにもいかず、隣国が諸々の元凶の大本であると断定。なし崩し的に戦争状態へと移行していった。


 余りに突発的に起きた事態に混乱が広がっていく中、それと似た事例が様々な国の国境沿いで頻発。

 さらに混乱に乗じて武装勢力が国家の乗っ取りを図り反乱を起こすなど、情勢が一気に不安定になった。


 また、突如一部の国から無差別に弾道ミサイルが射出されたことで戦争に参戦していなかった国も加わり、混迷を極めていった。


「だーいぶ良い感じになってきた」


 寄せられる情報に目を通しながら、アルドシアは笑みを深めた。


「しかし、どれだけ文明を発展させようとも人は人か」


 混乱する世となった今、自分の命を守るためや欲を満たすため、法や道徳倫理を無視する者が多く見られた。

 食料を奪うために暴力を振るう者、混乱に乗じ金品を奪う者、欲に塗れ他者の尊厳を踏みにじる者、そして憎しみに駆られ手を汚す者。


「それに、何か変わったことをする奴がいないかと思っていたが……期待外れだな」


 おおよそ予想した通りに行動する人々に対し、アルドシアはため息をついた。


「つまらん、此れならいっそバイオテロをした方がマシだったかもしれんな」


 アルドシアにとっては全くの門外漢の分野ではあるが、それなりの時間さえあれば完成させることが出来ただろう。


「ふ~む……各国で行き交う情報も錯綜しているしな、先進国家各国の首都には壊滅してもらうか」


 徐々に変わり映えしない状況に陥ると予期したアルドシアは退屈凌ぎにはなるだろうと踏み、信奉者達へと指示を送った。


 数分のうちにアルドシア特製の核反応を用いた爆発物を積んだ飛行機が飛び立ち、各首都上空に到着次第投下されていった。


 地面に着弾することを起点に内部で反応、アルドシアの世界で過去に使われていた中性子爆弾の数百倍のエネルギーが発生。

 それに伴った急激な温度上昇により空気が膨張し、熱せられた空気が衝撃波となって広大に広がり、天災よりも激しい意志なき破壊が街々を蹂躙していった。


「さて、此れを機に新たな動きを見せる国は……」


 先進国家を目の上のたんこぶの様に感じていた国は少なからずいた筈であり、この絶好の機会を逃すとはアルドシアには思えなかった。


「最初の国に対しても支援を名目に入国し、混乱に乗じて根を張った国もいたのだからな。さあ、邪魔な奴らは一度に傾いた。盗るなら今だぞ?」


 数時間程で先進国家と既に戦争状態に至っていた国々がさらに戦力を戦地へ集結させ、戦いはより一層苛烈さが増していった。


 さらには既に廃棄、若しくは禁止されている筈の兵器を使用する国が現れ始め。自国を危険から守るために敵国を落とすという大義の元、少しずつ人々の理性が削ぎ落とされていく。


 しかし、それから一週間が経つ頃には周り巡って理性が戻ったのか、徐々に和平交渉へ至ろうとする動きが出始めた。


「獣へ戻るかと思ったが……人であろうとするか。星の頂点に君臨する生物としてのプライド故か、喪うことへの恐怖か。まあ、もう人間は良いだろう」


 アルドシアは侮蔑を込めて呟くと、端末に触れた。


 星の周回軌道を回る人工衛星から計十六の物体が時間差で星に向けて射出され、地表からは隕石に見えるでそれは大地や海へ着弾すると同時、同質量の隕石であれば考えられない規模の衝撃を齎した。


 衝撃とそれに伴う熱が地表を不毛の地へと変えていく。

 爆発の熱で生み出された分厚い雲が星から光を奪い。

 凄まじい衝撃によって発生した高波が大地を薙ぎ払っていく。

 人や羽虫一匹に至るまで、全ての生物に対して平等に災厄が降り掛かる。


「ああ……此れから先、この星では一体何が最も繁栄する?」


 衛星軌道上から雲に覆われたことで鮮やか碧色が見えなくなった星を見て、アルドシアは期待に胸を膨らませた。

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