とある惑星人類の場合6
「良いよな〜、こういう優位性を確立した状態で悪さをするっていうの」
人間に比べて少々尖った耳を動かしながら、嬉しそうに黒髪を揺らしつつアダンは笑った。
「アルドシア、だっけか? トチ狂った面も含めて中々有能だな。あの時にこういう奴がいてくれればもっと楽になったろうに」
関心しながら、アダンはかつて降り立った惑星に思いを馳せた。
「やはり貴方はそちら側ですね」
イブリアがその金眼を細めながらアダンを見つめた。
「当然だろ。惑星を護るために手段を選ばないような男だぞ?」
からかうようにアダンが口の端を上げた。
「そうですね……」
「まー、あれだ……ところで、この世界はイブリアの世界や俺の世界のように種全体の業でヒトが滅ぶわけではなさそうだな」
良い返答が思いつかなかったアダンはわざとらしく話題を変えた。
しかし無駄だったらしく、イブリアから鋭い指摘が返ってくる。
「貴方の世界の場合は、滅ぼした。でしょう?」
「……そうだな」
「本当に……滅ぼさなければいけなかったの?」
「っ……!」
普段とは違うイブリアの少女然とした素の問い掛けに、アダンは言葉が詰まった。
「……必要だったよ。惑星一つならまだしも、やらなきゃ何も住めない世界になってたからな」
今はそう自信を持って言えるが、当時のアダンは相当の歳月を費やして悩んだ。
種族や住む惑星が違いながらも友好関係を築き、個人によっては夫婦となる者達がいた世界であり、アダン自身にも特別仲の良い存在もいた。
しかし、気づいた時にはアダンの種族も含めてその世界の人類は全て、飽くなき探究心と欲望によって空を、大地を、海を穢す害虫のような存在に成り下がり、その状態にさせた当の人類自身も何の対策もなしには身体に不調を来たす程に酷い有様になっていた。
無論、早い段階から改善を訴える声もあったが意味はなく、一つの方法以外にはどうしようもない状態になっていた。
誰かがそれを行わなければならなかった。
「イカれ野郎一人が原因で滅んでいく方が、人類全てが原因で滅ばさざるを得ないよりも幾分かマシだな」
かつていた世界で人類種の全てを絶滅させた少年は、空中に映し出した映像の中で下卑た笑みを浮かべるアルドシアを見てそう呟いた。