とある惑星人類の場合2
未知の物質。ましてや先進国家の首都一円を壊滅状態に陥らせる物となれば、危険性を考慮したとしても科学者達の関心が向かうのは必然といえた。
とある先進国家の研究機関内でもまた、得られた検体から未知の物質についてのデータを収集していた。
「放射線は確認されなかったんだな?」
「はい。おおよそ人体に直接的な影響をもたらす物質ではない、というのが室長が此方にいらっしゃるまでに出た実証結果です。此方がデータになります」
ステンレス製の眼鏡を押し上げながら、妙齢の女は脇に抱えていた端末を此度上司となった男に渡した。
「我が国が検体を回収出来た点は重畳だな」
手渡された端末に映し出されたデータに目を通し、青白い廊下を歩きながら室長と呼ばれた中年の男は思考を巡らせた。
(施設内にある薬品等に一切の反応は見られず、熱や冷却による反応もなし。特定重力下で反応を示す、という線もあるが薄いだろうな。それにしても、走査型トンネル顕微鏡で見たり検証を行ったりしたわけでもないのに、よくもまあ無人機のオペレーターは未知の物質だとわかったものだ)
「室長?」
「いやなに、色々と関心の寄せられる代物だと思ってな。それとこの未確認物質だが、反応を起こした後の残りカスという線で今は進めているんだな?」
「はい、どういった現象を通してそうなったのかは不明ですが、恐らくそうではないかと」
「ふむ」
(元となった物質は不明だが、核反応を用いたという線で考えるのが筋だろう。しかし、放射線が確認されなかったという点がネックだな)
毛のない頭を掻きながら、室長は思考を纏めていった。
「この物質、UOと仮称するが、これがレーダーをすり抜けるような物質ではないことは君達が調べてくれた通りだろう」
UOを調べる為に急遽用意された一室に入り、デスクに自身の荷物を卸していく。
「此処へ到着する前に齎された情報から、最初の爆撃は既存の現代兵器、我々の知る兵器を用いたものだ。研磨や電波吸収性塗料を塗装した程度のステルス爆撃機で全てのレーダーをすり抜け、最初の爆撃を行ったとは考えにくい」
持ち込んだ魔法瓶からカップにコーヒーを注ぎ、室長は深く椅子に腰掛けた。
「私個人の見解として、UOは核反応を用いた爆発による副産物だと推察する。そして、今回起きた一連の軍事行動を遂行するために使用された航空機に、我々が解析すべき未知の技術、若しくは物質が使用されたのだろう」
(そもそも、日中にも関わらず何かが飛行していたという目撃情報等も無いという点が余りにも異常だがな。それに、最初の爆撃とほぼ同時にサイレンが鳴ったという点も……一体何を見て鳴らしたんだ?)