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とある惑星人類の場合

 とある国の首都がけたたましいサイレンを街中に響き渡らせながら、破砕音と共にオレンジと赤に彩られていったのはほぼ同時だった。


 高層ビル群の窓や電光掲示板が破壊的な風と衝撃により甲高い音と共に割れ、通行人達へ凶器の雨を降らせ、心構えをする余裕など一切なく起きた非日常に対し呆然自失となっていた者も多く、街を彩っていたよりも濃い赤が硬い地面へと吸われていった。


 頑丈な建物や地下にいた市民は絶え間なく続く爆音と地鳴りに怯えながら、最初の攻撃を生き延びた者達はその数だけの多種多様な行動を起こした。


 不安げに身を寄せる我が子を安心させるために腕に抱く親、離れた場所にいる家族の身を案じてどうにか連絡を取ろうと小型端末をひっきりなしに触る者、突然の事態に取り乱す者。


 此処は大丈夫だという根拠のない自信を抱き、それを大切な者たちを安心させるために吐露する者。


 全てが終わったと感情のままに喚き散らし、見ず知らずの他者へより一層の不安感を駆り立てさせる者。


 しかし彼らの行動の善悪や貴賤上下の差などなく、天地をひっくり返したかのような衝撃が首都一円を襲った。


 その日、その惑星(ほし)でも有数の先進国家の首都一円が僅か十分足らずで壊滅、死者行方不明者が四千万人以上という試算が出た。


 突然起きた事態にその惑星(ほし)の国家の長達は背筋に冷たい汗を流しながら、自国の諜報機関を最大限に使い情報収集に勤しんだ。


 一国で起きた悲劇の中で、特に各国の長達が注力して情報収集しなければいけなかったのはどの国が引き起こしたのかという一点だけではない。


 あらゆる電波機器の探知をすり抜けて首都が攻撃を受けたという、事実であれば目を覆いたくなるような情報の真偽の確認。


 そして、爆心地から半径五十キロ内の建造物のほぼ全てが完全なる破壊に陥るという人類史上でも類を見ない爆撃の調査だ。


 ある程度の情報を得た段階で各国の諜報機関はこの事態の原因が人為的なものではなく、隕石等による偶然起きた悲劇ではないかという考察が首都壊滅後の数時間は出たが、とある大国の無人機によって採取された爆心地の破片等から隕石に多く含まれる成分が検出されず、代わりに発見例の無い物質が検出されたことによって一蹴された。




 これらの一連の流れを異なる次元から観察する二人組がいた。


 一人は観察対象である惑星人類、人間と良く似た姿形を持ち、機能性のみを追求し無駄な装飾が一切施されていない、白を基調とした衣装に身を包む白髪金眼の少女イブリア。


 もう一人はイブリアに比べて少々尖った耳と額から小指程の二本の角を生やし、やたらとポケットの付いた黒の上着を羽織りながら、手に入れてから未だに一度も揃ったことがない立方パズルをガチャガチャと鳴らす黒髪赤眼の少年アダン。


「ちゃんと仕事をしてください」


「つってもイブリア、こっから先は前の惑星(ほし)と似たような展開になりそうじゃないか?」


 前回観察した惑星(ほし)で座る際に良さそうだと持ち込んだソファに寝転びながら、アダンは観察を始めてから抱いていた疑念を言葉にした。


「同じならば、観察するようにとアノ方が指示を出すとは思えません」


「まあ、そうなんだけどさ。どっかの馬鹿がバカなことをするってとこまで一緒だとなあ」


 ソファから身を起こし、背もたれに身を預けながら無機質な白い天井を見つめる。


「私も最初はそう思っていましたが、どうやらこの惑星(ほし)の人間はかなり荒っぽいようですよ」


「へえ、そりゃどう滅ぶのか楽しみだ」


 軽く手を振って空中に映像を映し出し、ソファのベストポジションを探りながら、アダンは笑みを浮かべた。

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