献血
献血の後は、水分補給を怠らず。
食材を買いに生協へ行くと、入口前で献血の案内をしていた。
以前は定期的に献血案内があった気がするが、昨今の事情もあるのだろう、久しぶりに見た気がする。
暇だったので私は献血を受けることにした。
エスカレーターを降り、駐車場を横切って進むと、献血用バスが三台止まっている。案内に従って受付を済まし、用意されたパイプ椅子に座った。学生らしき男が数人、順番待ちをしている。ぼうっと空を眺めながら待っていると、順番が来たのでバスに乗り込んだ。
医師に名前と生年月日を申告した後、献血前の事前検査として、指から血を採った。以前は注射だったが、いまは変わったらしい。医師が小さな器具を私の指に当てると、ぱちりという音と共に痛みが走った。私はガチャガチャで静電気を起こすおもちゃがあったことを思い出した。
指先からは赤黒い液体が滲み出て、すぐに丸く小さな一滴の雫となった。医師は長方形の器具で血を吸い取り、指の手当をした。
素早く淀みのない動きを感嘆しながら眺めていると、いよいよ献血の時となった。
献血用のリクライニングシートに横たわり、看護師のお決まりの質問に答え、針を刺される。
針が皮膚を突き破り、挿入されていく感覚。これにはいまだ慣れない。
この看護師がなにかとんでもないミスをしたら、私は死んでしまうのだろうか? という不安が頭をよぎったり、これから抜かれる血はどこの誰の元に行くのだろう? という疑問が生まれるのだ。
なんだか不思議な感覚である。
わずかに手のしびれを感じながら、推奨された運動(足首をクロスして力を入れる→脱力する、を繰り返す)をしていると、一五分程度で献血の終わりを看護師が告げた。
今回は随分と早かった気がする。
長いときはもっと時間がかかったこともあったが、なにがその差を生んでいるのだろう?
そんなとりとめもない思考をしながら、傷の手当を受け、一時休憩の場で飲み物をもらい、所定時間が来るまでこれまたぼうっとしていた。
すると、案内人が紙を私の前に差し出した。
献血を何回かすると、記念品を貰えるらしい。
タオル、お箸、お皿の中から、私はお皿を選んだ。
すこし得をした気分で、記念品を入れたリュックを背負い、私は献血の場を去った。