夜食
タンパク質は健康の味方。
なにか食べたい。
強烈な空腹を覚えているわけではない。むしろ腹はそれなりに膨れている。
だけど食べたい。無駄にカロリーの高いものや糖度の高いもので胃袋を満たしたい。そしてうめき声をあげながら冷房の効いた部屋で寝っ転がりたい。そのまま泥のように眠りたい。
近所の公園を散歩している最中に、私は夜食を作ることに決めた。月に照らされた道をたどり、帰宅してすぐに冷蔵庫を覗く。今日買ったトンテキともやしが目に止まり、いそいそと取り出した。
フライパンに油をしき、IHのスイッチを入れる。油がぱちぱちと心地よい音を立て始めてから肉を投入すると、じゅわり、と肉が焼ける音が耳を通り抜けた。
焦げ目がついたらひっくり返す。何度か肉を転がした後、もやしを投入した。菜箸でまんべんなく火が通るようにもやしをかき回す。表面がしんなりとしつつも芯残った状態を見計らって、皿にもやしとトンテキ炒めを移した。
まあたまにはこんな行いもいいだろうと思う。
冷房の効いた部屋で、タンブラーにビールを注ぐ。アルコールは弱いので普段はあまり飲まないが、せっかくの夜食なので楽しもうと思ったのだ。泡が溢れそうになったので、一口分だけ口に入れた。泡が弾ける心地よさが苦味と一緒くたになって舌の上で踊り、嚥下すると冷たく爽快な刺激が胃まで届いた。
熱々のトンテキをもやしとともに頬張る。肉を噛みちぎると、肉汁と脂が程よく混ざり、もやしのシャキシャキとした食感とともに旨味が口いっぱいに広がった。やけどしないようにビールを飲む。
アルコールが程よく周り始めた頃、私はもやし炒めを食べ終えた。つづけて冷凍庫からみかんの入ったアイスバーは取り出して、しゃくしゃくと食べた。
確かな満腹感を感じながら、私は皿を流し台に置いた。
洗い物は明日の自分に任せるとしよう。
たまにはこんな日があってもいいと思うのだ。