(5/8)ドキドキのお誘い
中原さんは『やりましたけれどもこれがなんですか?』という顔をしている。
オレはおそるおそる。右手を伸ばした。
「このバレッタ。とってもいい?」
「どうぞ………」
中原さんが頭を傾けてくれた。
バレッタをそっととる。
パッサァァァという音とともに中原さんの肩に、顔の輪郭に、目に、唇に髪の毛がかかった! サラサラと余韻で揺れている。
おおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおーっ
オレの! 長年の夢が!!
あまりにオレが喜んだので「もう一回やる?」と髪をまとめてくれた。バレッタを外す。
パッサァァァ
おおおおおおおおー!
おおおおおおおおー!!!
おおおおおおおおおおおー!
「もう1回! もう1回!!」というオレのリクエストに応えてもう一度巻いてくれた。
パッサァァァ
うわああああっやったぁぁぁ両思い最高ぅぅぅぅぅ!!
中原さんが『急に道端に躍り出てきた異星人』を見る目になった。
「なにが………面白いの?」
面白いんじゃなくて! すっごいムラムラするわ!! ありがとう紗莉菜ちゃん!!!
◇
帰り車を運転しながらオレはいった。さすがに緊張する。
「紗莉菜ちゃんあのさー」
「うん」
「来週なんだけど」
「うん」
「よかったらでいいんだけど、オレの家に来ない?」
言ったぁぁぁぁぁ! 言ってやったぞ!
中原さん無言。下を向いている。指先をもじもじと動かした。
「紗莉菜ちゃんマウンテンズ好きだって言ってたよね? オレライブDVD持ってんだよね。一緒に見ない?」
やおら中原さんは首を縦に振った。何回も振った。
「うんっ。マウンテンズ見る! 家にも遊びに行く! よろしくねっ」
やったぁぁぁぁ!!!!
車の運転さえしてなきゃ、ガッツポーズだよ。心のガッツポーズするわ。やったぁぁぁぁ。
来週はー。
マウンテンズのDVDのー。
2人でイチャイチャのー。
紗莉菜さんのバスタオル姿の髪の毛クルクルのバレッタファッサーだ!!
妄想が止まらないわー。ニヤニヤも止まらないわー。意味も意義もある時間だわー。
早く来週になれっ!
と車を運転しながら思った。
◇
ところがである。
会社で中原さんの様子がおかしくなった。