(4/8)バレッタに触りたい
ちなみにオレたちはこの打ち明け話を公園でしていた。わざわざ車で来るような広さの森林公園。
大きな噴水もあるし、子供用の遊具は3箇所に点在している。
オレはヘナヘナと中原さんが座る場所とは反対方向のベンチに倒れた。
「あー。そんなの。わかるわけないってーー」
もう力でないわ。すれ違ってるにも程があるわ。
「オレはねー。あんとき紗莉菜に嫌われてると思ってベットの上で泣いたんだかんね!!」
中原さんがオロオロする。
「ごめんね。ごめんねみっちゃん。だってアタシ緊張しちゃって。書類もってもらったお礼すら言わなかったよね。ほんとごめん。半年前の自分を謝るよ!」
中原さんは倒れ伏す俺の背中に手を置いた。
「うー。じゃあさあ。紗莉菜ちゃん今日バレッタって持ってる?」
「バレッタって髪の毛まとめるやつ?もってるけど………」
「そのバレッタで髪の毛まとめてくれたら許すわ」
???
『意味もわからないし、意義もわからない』という顔を中原さんはした。
「いいけど……」まあ、なんだかわからないが彼氏の頼みならやってあげよう。
中原さんのサラサラの髪の毛が、ポニーテールに結ばれ、くるくると畳まれて頭のてっぺんに収まる。そこにバレッタを刺す。
これは飲み会で『逆立ちして酒をつぐ』というドエライ宴会芸のために髪をまとめるんである。お酒に髪が入るのを防ぐ意味がある。中原さんにとってはそれ以上でもそれ以下でもない。でもオレは違う。
オレはこのまとめられた髪に欲情している。
会社の宴会で初めて見たとき『このバレッタをとりたい。それで髪の毛が中原さんにファサーッとかかるのが見たい!』と萌え萌えだったのである。
もちろんそんなことできるわけない。髪を触ったりしたら殴られればまだいい方で、最悪人事部にチクられて懲戒免職になる可能性すらある。セクハラ罪ってとこだ。
令和のコンプライアンスは厳しい。
オレたちの上司はみな「髪切ってきたね」など世間話すらできずビクビクと『これはセクハラで、これはセーフ』の間を行ったり来たりしてるのだ。
しかし晴れて今日、彼氏になったオレに中原さんの髪を触る権利が回ってきたんである!!!