愛は余白に宿るもの
好き
と、あらわせばたったふたつの音で済んでしまうことを、わたしは、わたしたちは、ひどく分かりにくくて歪んでいて、美しくてけれど不明瞭な、そんなふうにしてしまう。
水底の見える明るい水には生きていられない生き物のように、明るいばかりではいけないのだと、何故だか皆心得ていて、まっすぐではない心を向ける。
そういえば、綺麗ということは、何もないこととも言うね。なのだから、わたしは、君が、愛おしいということを、綺麗だとは言いたくない。
たとえば、その、なびく髪が、光を帯びていて。
ひるがえる度に君を愛おしく想う。
その頬をやさしく撫でる、擽る、髪靡かせる風になれたらと思うほど。
月が綺麗だと言うように、言葉を探してる。
言いあらわせることの出来ない心を、けれど確かに、見つけるためには、きっと、生まれて死んでゆくまでの、全部が必要なんだろう。
君と私は別の生き物だから、全部をわかることは出来なくていいよ、だからこそ生まれる言葉とか余白とか時間とか一瞬とか、そういうものがたまらなく胸をいっぱいにする。
君と私のあいだにあるものすべて、等しく愛せる私がいるよ。