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夏の間
うだるような暑さと数日間照りつける太陽に、お気楽体質の結香もさすがに辟易としていた。
屋敷のなかに閉じ籠り日陰で風に当たる事によって今までなんとか暑さを乗りきっていた結香だが、今年は勝手が違う。
だっているのだ。紫翠が。
もしかしたら今にも庭から紫翠が来るかもしれないと想像すれば、結香は何となく楽しい気分になれた。
「結香、お前もう待たなくて良いって言っただろ」
「紫翠! 紫翠待ってた。紫翠待ってるとき幸せ。
紫翠今日はなにしよう?」
「お前は……全く狡いな」
ぱたぱたと動かない尻尾を振っているように見えるほど、紫翠が見えた瞬間結香は満面の笑みになった。
子供に慕われるのが嫌いではない紫翠は、ついつい甘やかして笑みを見せてしまう。
冷たいお茶を出して、雨の日は手を繋いでじっと二人で雨を見て。
そんな風に、明るい夏は過ぎ去った。