夢
こちらの身まで重くなるような陰気な曇天が広がっていた。雲が涙を流すかのように降ってきた雨が、体に痛いほど叩きつけられる。
なぜ、ここにいるのだろうか。
僕は雨が降り続く中、寂れた神社の正面で棒立ちになっていた。辺りには、野一面の……
「彼岸花……」
余りにも美しい彼岸花。
あの病の感染者の跡だろうか。
しかし、あんなにも妖力で満たされていた彼岸花からは妖力が感じられない。ただの彼岸花だ。
死んだのだろうと、するりと理解した。
彼岸花に囲まれていた、寂れた神社をのぞきこんだ。境内は壊され、ご神木の枝が折られている。ろくに掃除もされていないのか、雨にとかされてぐちゃぐちゃの、元がなにかよくわからないモノが散乱している。
自然に足を踏み入れていた。まずは数多の塵芥を取り除く。触れたくはないが手にとって、一ヶ所に集めた。クズ寄せ場に持っていこう。
そのためには入れ物が必要だと判断したので、落ちていた枝を沢山拾い集め、一ヶ所に集めた中から縄を取って、形をつくって縛る。
簡易的な屑入れ箱だ。
「ごめんね蜘蛛くん」
蜘蛛の巣を取り払い、壊れた瓦礫を割れ目にぴったりと合わせる。そうして、目を閉じて、己の中にある妖力と意識を呼応させる。叶の持つ力は久々に使うな。
『修復』
目を開ければ、きちんと修復されている。この力は問題なく使えるようだ。妖力が足りないかもしれないが、境内を修復する分にはなんとかなる。
柱を立て修復し、かなり体力が減ったのでご神木の下で休憩。賽銭箱を組み直して、壊れた部分に微調整を加えていく。
「うん、綺麗」
今度は、鳥居近くの狛犬を修復しようとしたが……
「あれ、一つだけ……?」
狛犬の片方がない。一先ず完全にあるあ行だけを修復した。
とにもかくにも、クズ寄せ場に持っていこうと、屑入れ箱を抱え、よたよたと外に出た……瞬間。
『感謝するよ、堅物九尾』
「えっ」
ぱあんっ!と破裂音とともに、社から中心に神社が浄められ、ご神木は立派に葉を付け、季節外れの桜吹雪がぶわりと舞ったと思えば、目を閉じ開いた瞬間には、立派としか言いようがないほど大きく美しい神社になっていた。
沢山の神々が舞い降り、屑入れ箱を持って立ち尽くしている僕に微笑んで神社に入っていく。注連縄や赤の鳥居も太く鮮やかに、寂れたところなど欠片も見えないような大きな神社だった。
これが、本来の姿なのだろうか。寂れた悲しい神社は、大昔あんなにも美しい場所だったのか。




