予感めいた
今日はお世話になっている吉原遊郭の買い出しの日。
食材とかはまだまだ余っているから、買い出しを頼まれたときは疑問に思ったけれど、団子屋のあった隣町に行くと謎が解けた。
がやがやといつもより騒がしい雑踏、お店の前には必ずしめ縄が巻かれていて、提灯、屋台が外に出ている状態だ。
まだ昼頃なので提灯に明かりはともされていないが、一目でお祭りの準備だと解る。
「綺麗……お兄ちゃん、明日はね、おっきなお祭りがあるんだよ!」
一緒に買い出しに来ていたつつじちゃんが問わずとも教えてくれた。
そんなつつじちゃんの目は、お祭りではなく、その上にいる色とりどりの鮮やかな低級神をとらえていた。
……見えるのだろう。
「つつじちゃんは、神様に愛されているんですね」
「え?」
「あの方々が見える子は、中々居ませんよ」
ぽんぽんと軽くつつじちゃんの頭を撫でる。
僕の手が上がったときびくりとしたのが何だか気になったが、撫でたときにほぅと安心したように手にすり寄ってきたので、たとえ"身構えなくてはならないなにか"が彼女の過去にあったとしても、遊郭のお姉様達によく可愛がられているのだろう。
僕は、ずっと一緒にいて、愛してやれる訳じゃないから。
つつじちゃんがふらふらと低級神の方に近づいていくから、ぎゅっと手を握った。
「つつじちゃん……勝手にどこかにいかないでくださいね」
「どうして? ウチこの辺よく来てるよ」
きょとんとするつつじちゃん。僕も何でか解らないけれど、何となく嫌な予感がした。
りりぃん……とあの人が気に入っていた鈴の音がする。
『結香、あまり離れないで、手を握ってなさいね』
『なんで?僕この辺よく来てますよ』
一欠片の、記憶。
今よりももっと古い思い出が甦る。
『駄目よ。こんなに神様がやって来ているときは……』
「つつじちゃん、こんなに神様がたくさんやって来ているときはね」
思い出のあの人に同調するように口から勝手に言葉が出てくる。
『神隠しに……』
「神隠しに、逢いやすいんですよ」
真っ白で柔らかな髪に、深い紺色の、冬の夜みたいな目の女の人が僕の頭を撫でた。
彼女は雪華
雪女で、僕の大好きな姉上だ。
「かみかくし……?」
「ええ。されたら二度と戻ってこれませんよ」
「二度と?」
うなずくと、つつじちゃんは怖がって更にくっついてくる
手をしっかりと握り直し、嫌な予感を払拭するように歩き出した。




