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薬師と仔狐の乱  作者: 蝸牛
第二部 雨の牢獄
17/31

このあと泊めてもらうことになりました

さて、その夜。


城下町にゆらりと現れる二つの暗い人影。

少年のようで、一人は上質な着物を着ていて、もう一人は大きな薬箱を背負っているという珍妙な格好だった。


「ここにくる、って噂だったよな」

「うん、聞いたから間違いないはず……」


まぁ要するに結香達だ。

結香は夜の闇が怖いのかびくびくとして周りを見渡していて、紫翠は闇を警戒し目を光らせている。

二人の道を照らすのは細い月明かりと満点の星だけ。

頼りない光を道標に、結香と紫翠は通り魔を誘きだそうとしているのだ。


暫く無言で歩く。

何十度目かの足音で、結香の足音が止まり、そのまま耳をぴんとたててぴたりと歩みを止めた。

ぼんやりと夢見心地なように「……くる」と呟いて臨戦態勢をとった。


ヒュッ!


結香の苦無が、気配を掠めて地面に突き刺さり、同時に動いた結香が気配にもう一つの苦無を突きつける。


が。


「えっ!?うわぁあなにこれ!?待ってよお兄ちゃん達!? 私なにもしてないよ!」

「……えっ」

「結香……」


その先にいたのは、ただの黒髪の少女だった。

服装もこの辺で見る一般的な物より少し綺麗なだけで、普通の子供だ。

大根やかぶなどを両手で抱えた少女は、恐らくこの先の花魁町のおつかいの子だろう。


「す、すみません……僕達、ここに出る通り魔を待ち伏せしていまして……」

「通り魔? やめた方がいいよお兄ちゃん達!殺されちゃうよ」

「うーん、まぁ嬢ちゃんにはまだ解らんだろうけど、それでも挑戦するのが男ってもんだぜ」

「男は馬鹿な生き物ですから。送っていきますよ、お嬢さんお名前は?」


結香は尻餅をついた少女に手をさしのべ、おしりの砂を気付かれないようにぽんぽんと払ってやる。

紫翠の言うことと言えばほぼ誤魔化しだが、信じてもらえたようだ。

少女は結香の質問に暫く首をかしげ、ぱっと輝くような素敵な笑顔を見せて答えてくれた。


「私はね、つつじっていうんだよ!」

「……つつじ?」

「躑躅か、名付けた人はずいぶんと熱烈だなぁ」


草花の知識がそれほどない結香は首をかしげて辿々しく言って、薬師であり植物に詳しい紫翠は花言葉を思いだしクスクスと笑った。


結香は暫くつつじ……いみ……つつじ??、と四苦八苦していたが、とうとう諦めたらしい。


「うーん、もう暗いし、つつじちゃん行きましょうか」

「そうだな。夜道に一人は危ない。つつじはどこにすんでいるんだ?」

「私は向こうの吉原で下働きをしてるよ。お兄ちゃん達は?」


その問いに、紫翠と結香は揃って顔をみあわせた。

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